第二十二話 地雷を踏んだら
着きました、着いちゃいましたよ、コルナ。
眼の前には悠然とそびえ立つ門があった。
「ここがコルナかー」
「おっきいね!」
拓斗と美咲が驚きの声を発した。美咲と啓も、無言ではあるが驚いてはいるようだ。眼を見開いている。
「まあな、コルナはリーディエールでも五指にはいる程の大きな都市だからな」
「要塞としても一流なんだよ!」
ドヤ顔をするレオとカレン。お前ら関係ねえだろ。
「…もう何を言っていいのやら」
まさか、たったの3時間で着いてしまうなんて、誰が予想しただろうか。
とりあえず、何とか収まった内輪もめ(という名の台風)の後、
「なんかめんどくさいな、歩くの。あんなのがあった後だし」
拓斗が、いかにも疲れましたという表情で呟く。
そんな表情で言われると無償に殴りたくなるが、確かに半日も歩くのは、若者といえどもちょっと…と思ってしまう。
「あ、いいこと思いついた!」
美咲は楽しそうな顔をすると、詠唱を始めた。
『風の息吹よ、彼の者を運びたまえ』
何をやらかす気だ、と見ていた先で、美咲は対象をレオに選んだらしい。手をそちらに向けた。
すると驚くべきことに、レオの身体が宙に浮き、そのまま動き出したではないか!
「お、おお!?」
だんだんと上がっていく速度に、レオのテンションも上がっていく。そりゃまあ、空を飛べたら楽しいわな。それが何事も無ければ。
バーン!
あらぬ方向に飛んで行った彼は、そのまま加速し、見事に木に激突した。
「やっぱりうまくいかなかったか~。まあ、最初だから仕方ないか」
えへへ、とはにかむ少女はしかし、むしろ周りの空気を凍らせるだけだった。
この一連の動作は天然なのだろう。いや、そうだと信じたい。
幸い、レオには大した怪我も無く、一度でコツを掴んだらしい美咲によって、まさかの3時間でコルナに着いてしまったという次第である。ちなみに一人、魔法の発動中ずっと震えていた者がいたのを明記しておこう。
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コルナには、さすがと言うべきか、たくさんの人で溢れ返っていた。
「とりあえずは、宿を探すか」
金の心配は必要ない。なんせ、王からたくさんもらってるからな。
それにしても、人が多いというのは困る。こういうところでは、
「ねえ、お譲ちゃんたち。俺たちと一緒に遊ばない?」
こういう、馬鹿な奴らが出てくるからだ。
ボスと思われる奴の後ろからゾロゾロと来、俺たちの周りを囲んだ。総勢十数名といったところか。
「おとなしく来てくれたら、連れは傷つけないであげるよ」
下卑た笑い声が響く。大方、少年4人など大した戦力ではなく、少女3人はそもそも戦えるはずなどない、と高をくくっているのだろう。だが、
「馬鹿かお前ら。こいつらに敵うわけねえだろ」
ここにいるのは規格外な奴らばかり。こんな人数では牽制にもなりはしない。
穏便に済まそうと警告してやる。
「そんなに強がったって無駄だぜ、嬢ちゃん。その人数で勝てるわけねえだろ」
俺の肩が震えた。
「「「あ、言っちゃった」」」
「…終わったな」
珍しく啓が喋ったー、ともはや現実逃避に走り始める異世界組。視線もさっさと逸らしている。
「あれー、こわがっちゃって。かわいいなあ―――ゲフッ」
にやにやとした笑いを浮かべ近づこうとしたボスは、次の瞬間吹き飛んでいた。
「「「ボス!?」」」
「誰が…嬢ちゃんだと?」
ゆっくりと顔を上げた俺の眼を見た瞬間、ひいいい、と悲鳴を上げる下種ら。
「さて、お仕置きが必要だな?」
剣を構えつつ、笑う。
手始めは、逃げようとしている奴らからだ。
「絶対に逃がさない」
その日、コルナの一角は阿鼻叫喚の地と化した。
後に、レオとカレンはこう語った。
「あのときの優也の眼は、絶対零度だった」
「口は笑ってるのに、むしろそれが一層恐ろしさを引き立てているというか…」
その時のことを思い出したのか、二人はブルリと身体を震わせた。
一番の被害者は二人かもしれなかった。




