第二十話 抑えではなくむしろ
「なんで急に?」
そう聞くと、王は呆れていますと言わんばかりの顔で言った。
「あんなことをまたされたら、たまらんからに決まってるだろ」
そう言われて思い出したのは、部屋爆破事件。そういえば、俺あれで死にそうになったんだよな…。
あの一件で、こいつらは要注意人物だとやっと認識してもらえたようだ。
「俺一人では抑えきれないから助かった。…と言いたいところだが、むしろ面倒になったのは気のせいか?」
レオとか、おもいっきり火種にしかなってねーし。
「お前たちと同年代で力があるから、と思ったんだが、すまない」
王に謝られてしまった。どうやら自覚はあるらしい。それに、俺しか歯止め役がいないということにも気付いているみたいだ。
「まあ、カレンの方はまともみたいだから、なんとかなるだろ」
「そうか、よろしく頼むぞ」
王の眼には、いつぞやのオルガーさんと同じく深い同情の色が浮かんでいた。
「ああ、できる限りのことはする」
…そう思っていた時期もあったさ、ああ、あったんだよ。
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「頑張ってこいよ!」
「変な騒動を起こさないでくださいね」
ついに魔王討伐のため、出発するときが来た。
門出の見送りをしてくれているのは、オルガーさんとフィーサさんだけだ。というのも、魔族にばれる危険性があるかららしい。王は執務が忙しくて不参加だった。
「はい、二人ともお元気で!」
それはどっちに対する返事だ、拓斗。
「私たち頑張るから!」
美咲よ、くれぐれもその頑張りは、魔族と戦うときだけにしてもらいたい。
「大船に乗ったつもりでいなよ!」
だから、その大船が心配だから釘をさしているんだろうが、瑠璃。
「誰に言ってんだよ、この俺様だぞ?」
どちらかというと、フィーアさんの言った言葉の方が大切なんだが、レオ。
「心配しなくても、なんとかするからー」
…あれ、頼みの綱であるカノンの言っている台詞にとてつもなく不安を感じるのは俺だけか?しかもやる気なさげに聞こえるんだが。
「努力はする」
俺はこれしか言えなかった。実際、どうにかできる自信はあまりないし。ちなみに啓は無言だ。
さあ、出発だ。最初の目標は、貿易都市であるコルナだ。
「あれ、どっち行くの?」
…おい。
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コルナは、ここから歩いて半日で着くところにある大きな都市だ。貿易都市という名の通り、物の流通が盛んで、そこで手に入らない物は無いと言われている。
「あ、魔物!」
カレンの指す方向を見ると、確かに三匹の猪に酷似した魔物がいた。
魔物とは、地球で言う動物と同義語である。
ただし、地球と比較すると、魔力というものが存在するからか、はたまた、種の生存本能か、比べ物にならないくらいに強い。
また、魔法を使うことができる魔物をいたりするので、例え相手が鼠(に酷似した魔物)であっても油断してはいけない。
「俺がやってやるぜ!」
「僕の方が早く倒せる!」
風のように俺の横を横切っていったのは拓斗とレオだった。
「あ、おいこら!」
さっそく問題を起こさないよな、と思いつつ見ていると案の定、二人とも魔物を倒すというより相手の妨害に魔法を使っており、周りに甚大な被害を催していた。これじゃ魔物の方が人畜無害と言えるだろう。
「仕方ないなー、二人とも。じゃあ代わりにうちが倒してあげるよ」
カレンはそう言うと、詠唱を始めた。ってちょっと待て、余計なトラブルを増やす気か!
『彼の者に天罰を、サンダー!』
言うも虚しく、魔法は見事に魔物に直撃した。…約二名程、それに巻き込まれた者がいたようだが。
「こらー、何しやがる!?」
「あれは僕が倒すつもりだったのに!」
…立ち直りが妙に速いのは、ライバル心ゆえだろうか、そうだと思いたい。
二人はカレンに怒りだしたが、カレンはむしろ、
「だって二人とも、倒すの遅いんだもん」
火に油を注いだ。
「「お前ぇ!」」
「あ、二対一はひきょーだよ」
「じゃあ私も参戦するー」
拓斗とレオがカレンに攻撃しだしたのを見て、何故か美咲も参戦を始めた。
「全くもう、あんたたちは…」
まるで子供だと言わんばかりの口調で咎めようとした瑠璃は、しかしそこで悲劇に見舞われる。
ボカン
魔法の一つが被弾したのだ。幸い威力はそこまで無かったようだが、
「あんたたち…」
堪忍袋の緒は切れてしまったらしく、
「ぶっ倒す!」
瑠香まで乱入してしまった。
駄目だ、もう俺には止められない。だが幸いなことに、今なら城からそんなに離れてはいないので、今から戻って助けを―――
ガシッ
「…おい、啓。なんだこの手は」
俺は啓に掴まれた首根っこを指差す。しかし、啓は何故か無言。そして、
「いってこい」
「……え、ちょ、うわぁぁぁ」
俺を戦乱のさ中へと投げ込んだのだった。
拝啓、フィーアさん、オルガーさん、並びに、王様へ。
どうやら、何事もなく魔王を倒すのは無理そうです。というか、カレンは抑えというよりもむしろ、
「火種だろおぉぉぉぉぉ!」
という俺の叫びは果たして、城にいるであろう彼らに伝わっただろうか。




