第十九話 これぞ犬と猿
「よし、前回俺から一本取れたんだから、今度は魔法ありの本気で行くぞ」
「ああ!…え?」
ちょっと待て。前回本気だって言わなかったか。
「いやー、お前が魔法を使えないからそれに合わせていたんだが、あまりにお前の成長速度が速いのでな、こうでもしないと訓練にならんだろう」
「いや、あれはたまたま…」
いきなりだったから通じただけであって、もう一回は多分無理だと…。
「じゃあ行くぞ!」
「ちょ、おま、人の話は最後まで、ぐほぉ」
人の話は最後まで聞きましょう。
小一時間後。
「ふう、良い汗かいたぜ!」
「………」
満足そうな顔をする男と、ぼろ雑巾が出来上がった。
いくら軌道が読めても、速すぎて身体が追いつかなければ意味がない。果たして、オルガーさんの本当の本気(超本気)と戦って勝てる日は来るのだろうか。
「こんな奥の手があるなら、あれは本気とは言わないだろう!」
吠える俺に、しれっと一言。
「それは、あの場での本気だ」
「…俺が悪いのか、これは」
何故だか、精神的な方がよっぽど疲れた気がする今日このごろであった。
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部屋に帰ろうとしたところで、謁見の間に来て欲しいと言われたので行くと、もう他の四人は既に揃っており、さらに王と少年・少女がいた。初めて見る顔である。
「この二人と一緒に魔王討伐に行ってもらう」
そして何故か、
「魔王から邪神の加護をはぎ取ったら、さっさと退散してもらって十分だ!」
「そんなこと言って、内心ではびびってるくせに」
「なんだと!」
早速拓斗と少年が喧嘩していた。
「うちはカレン、よろしく。で、あっちがレオね」
「俺は優也だ。よろしく」
少女の方が自己紹介してきたので、名乗り返しておく。ちなみに姓を言わないのは、名乗れば異世界人だとばれ、魔族にもばれやすくなると王に言われたからだ。まあ、此処では別に名乗っても問題は無いのだが。
「ところで、何であの二人はああなってるんだ」
ちらりと見やると、二人の喧嘩はさっきよりもヒートアップしていた。
「なんかよく分からないけど、お互いに、『絶対こいつとは馬が合わない』って言い出して、それからあんな風に」
拓斗にしては珍しいこともあるもんだな。
ぼんやりとそんなことを思っていると、美咲に肩を叩かれた。
「ちょっとあれ止めてきてよ」
「…俺がか?」
「頑張って」
はぁ、とひとつため息をつくと、俺は二人のちょうど真ん中へと割り込んだ。
喧嘩は何故か魔法の打ち合いまで発展しており、さながら戦場だった。恐っ!
俺が割り込んだことに気付いた二人は魔法の発動を中止し、間に合わないものは俺が剣で防いだ。ちなみに、この剣が折れたところを俺は未だかつて見たことが無い。
「そこまで。迷惑だから終わりにしろ」
「ちっ、命拾いしたな」
「それはお前だろ?僕はまだ本気じゃない」
んぎぎぎ、とまた喧嘩しそうな雰囲気の二人を引き離しつつ、内心で冷や汗をかいた。
この二人が本気で撃ち合いをしたら、果たしてどうなるのだろうか、と。
オルガーさんの属性は風です。




