第十七話 天才な四人と努力な俺 能力編
次の日、結局寝不足になってしまった四人のために、一日分暇をもらうことになった。
なので俺は、昨日に引き続き、剣の練習をしていた。が、
「なんだかなー」
ただ空気に対して剣を振るのは、正直あまりいい練習法とは言えない。
「おう、優也か。お前は寝なくていいのか?」
悩んでいると、オルガーさんがやってきた。どうやら暇らしい。
「ああ、俺は二日ぐらいなら寝なくても問題ない。慣れてるからな」
しかも手には大剣を持っていると来た。ここは渡りに船。
「俺に稽古をつけてくれないか?」
こうして、オルガーさんによる稽古が始まった。…これが地獄になると知らずに。
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稽古を始めてかれこれ三時間。ようやくオルガーさんの動きについていけるようになった。と思ったら、
「よし、じゃあ次の段階に進むか」
え?次の段階?と思う間もなく、いきなりオルガーさんの動きが加速する。しかもフェイントを織り交ぜて。あっけなく俺はボコボコにされてしまった。
「フェイントを見切らないと駄目だろ」
そんな簡単に言わないでくれ。普通は無理だから。
「さあ、もう一度来い!」
それ多分、もう二段階はあるよな、と思いつつ、突っ込んでいく俺だった。
一言言おう。甘かった。
まさか、もう三段階あるなんて詐欺だろ。
「お前、すごいな。成長スピードが半端無いぞ。もう俺に本気を出させるなんて」
それでこそ鍛えがいがある、と嬉しそうに言うオルガーさん。戦闘狂だ、絶対。
さすがにここまで来ると一度は勝ちたいと思うが、そうは問屋が卸さない。さすが剣士隊の隊長なだけはある。
「まだまだやるだろ?」
「もちろん!」
上段から剣を振り下ろすが止められ、鍔競り合いになる。こうなると、力の強いオルガーさんには勝てないので、一度後ろへ引く。
やはり強い。でも、せめて一撃ぐらいは与えたい。
そう思い剣を握りしめた瞬間だった。
いきなり、オルガーさんの持つ剣から、俺に向かって赤いラインが現れたのは。
戦闘していくうちに分かったのは、それは攻撃の軌道であるということ。つまり、攻撃の想定ラインということだ。
それはもちろん、俺が動けば位置が変わるし、相手の動きの速さも変わるわけではないので、最初の方はあまりありがたみを実感できなかったが、慣れていくうちに、これがかなり便利なものであることに気付いたのだ。
なぜなら、今現在で俺がいる位置に、何処から攻撃が当たるのか絶対に分かるのだ。よって、フェイントは通じない。それに、俺が動いたことにより変わる位置も、大本の部分は変更されていない。だからあとは速ささえあれば、楽々と攻撃をかわせるというわけだ。
そして、ようやく。
「俺の負けだ。すごいな、優也。もう俺に勝つなんて」
オルガーさんから、初勝利をもぎ取った。とはいえ、完全に自分の力ではないので正直微妙なところだが、「俺に勝ったんだから、誇ってくれないと俺が報われねえだろ」という言葉により、俺はそれを否応なしにでも受け入れないといけなくなったのだった。
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「はあ…」
ここ最近、さらに詳しく言えば、異世界に来てから、自分自身についてよく分からなくなってきた。
戦闘中に発生した赤いライン、予測軌道とでも名付けておくが、どうやらあれは、常時見えるらしいということに気付いたのは部屋に戻ってからだった。
拓斗が、汗をかいていた俺にタオルを放り投げたとき、見えたのだ、予測軌道が。あのとき、魔法具は発動させていなかった。
剣だけが特別なわけではなかったのか。この魔法具は、付けてるだけで効果があるのか。
それとも―――
「分かんねえこと、増えすぎだろ」
あまりの理不尽さに嘆いたのを、誰が咎めようか。
優也は頑張れば頑張るほど、強くなります。
他の四人は元から強いです。




