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HERO'S  作者: タロー
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ep1.3-lunch time ?-

HRを終えた後、私は荘介に一言言って教室を出た。

「もう10年か・・・」

あの様子からだと荘介は覚えていないだろうな。

確かあの時、今生の別れであるかのようにわんわん泣いて駄々こねたんだけど、

荘介が優しく諭してくれたんだよなぁ。

「大きくなったらいつでも会えるよ・・・か。」

そう言ってくれたのを今でも覚えている。

「あの頃は名前で呼び合ってなかったから、覚えて無くて当然かな。」

荘介のことだから私の下の名前を覚えてるはずが無いだろう。

昔からそうだった。

ピアノの「ド」の位置も覚えられなかったし、

数字の「8」の書き方も覚えられなかったようなおつむが覚えているはずが無い。

私の場合は苗字も変わってしまっているから。

「ま、言い出して変によそよそしくなるのも好きじゃないし。」

だったらいっそのこと、この微妙な距離感のままでも悪くはないだろう。

今日の一限は・・・英語か。

英語ほど私にとってぬるい教科も無いからな・・・

「屋上に行って、適当に本でも読んでサボるかな。」



午前の授業を終えお昼の時間になった。

結局午前中の授業に青山さんは帰ってこなかったが、体調でも崩してたのだろうか。

まぁ、気になると言えば気になるが今は眼前の問題に対処しなければならない。

授業合間にもあったが、僕は転校生にありがちな質問攻めにあっています。

「部活とか入るの?」

「彼女とかいたの?」

「どこまで勉強した?」

「ウェイトリフティングやらないか?」

「この街に住んでたって本当?」

etc・・・

・・・転校するたびに思う。

転校生は聖徳太子じゃないぞ。

部活に入る予定も無いし、彼女いない暦=年齢だし、

偏差値同じくらいだから勉強も大差ないし、ウェイトリフティングなんてガチムチになりたくないし・・・

「10年前に引っ越したんだ。生まれてから引っ越すまではこの街で暮らしていたよ。」

最後の質問だけ返答する。

「多分同じ小学校だった人とかいるんじゃないかな?ただ、友達多くなかったから覚えてないと思うけど。」

当時の僕は口下手で友達と呼べるのは数人しかいなかった。

今となって彼らと会うのは中々難しいだろう。

などと、寂しい過去を思い出していると一人の体つきのいい好青年タイプの男子が正面に回りこんできた。

「お前、東小学校の2年3組だったか?」

・・・覚えている奴がいたようだ。

期待していなかっただけにそこはかとなくうれしい。

肯定の返答をしたところ好青年男子生徒は、

「やっぱりか!俺、ダニエル・譲治・レイヴォーンだけど覚えてる?」

なんだその無駄に好青年っぽい面倒くさい名前!!

僕は必死に脳内検索をかける。

・・・あぁ、うん、確かに覚えている。

「確か・・・小学校で背の順で並んだ時いつも僕の前だった・・・」

「そう!!そうだよ、荘介!身体測定のときいつもミリメートル単位で

お前より小さかったんだよ!!」

そんなこともあった・・・気がする。

しかし、それ以外あまり接点が無い。

名前が特徴的だからかろうじて覚えていたようなものだ。

「まぁ、当時はお互いあまり喋らなかったけど、ここで再会したのも何かの縁だ。

改めてよろしくな。荘介!」

ダニエルことダニーはさっとその大きな手を差し出す。

一日で二回もよろしくの握手をするのは珍しい体験をするものだなぁ。

「よろしく、ダニー。」

僕は彼の手を握り返し、ダニーも力強く握り返し・・・

「・・・ッ」

握りつぶす勢いで本気で握り返してきたので僕も応戦する。

「・・・荘介ッ、そんな顔して意外と強いんだな!」

「・・・伊達に柔道続けてないからなッ!」

一応言っておくが、弱そうな顔をしているが中学から柔道をやっていた。

とは言っても弱小校だったためそんなに強くないが、

ガチムチにならない程度にトレーニングは続けている。

膠着状態が続いたためどちらとなく力を緩めて、手を離した。

そしてさわやかに目線を交わした。

「やるな。」

「お前もな。」

そんな吹き出しが見える・・・気がした。

「ダニー、あんた転校生になにやってんの。」

男の友情を芽生えさせていたところで、ダニーの背後からキツい声が聞こえてきた。

「仲良くするのはいいけど、怪我させないでよね。あんた馬鹿力なんだから。」

「水差すなよぉ、委員長。いま荘介と再会を祝して男の友情を気づきあげてたところだったんだ。」

うへぇ。こいつ、まったく同じこと考えてやがったか。

ダニーからの熱い友情の言葉(?)を頂いたところで委員長と呼ばれた女子生徒がこちらを向いた。

後ろ髪を高いところで結わえていてキリッとした印象だなぁ。

「相原荘介君であってるよね。私、学級委員長やってる天堂奈々。よろしくね。」

・・・てんとう虫を彷彿させる名前だなぁ。

てんどうとか七とか。七つ星てんとう虫とか言うと怒るに違いない。

「よろしく、奈々さん。」

「荘介、こいつてんとう虫っていうと喜ぶからいってやブベラ!!!」

ダニーが耳打ちで僕の脳内で思ってることをそのまま伝えてきたと思ったら、目の前を高速で何かが通過し突然ダニーが奇声をあげて壁まで吹っ飛んだ。

・・・ダニーの顔には六法全書が突き刺さってた。

「荘介君。ダニーが言った事、気にしないでね♪」

「は、はい。」

情けない返事をしつつダニーのほうに目をやる。

すると、体つきのいい男子生徒二人が手馴れた手つきでダニーを担いでいった。

「委員長、保健室にダニーもって行くから午後の授業遅れそうになったら先生にそう言っておいて。」

「いつもお疲れ様~。」

奈々さんが手を振りながら笑顔で彼らを見送る。

心なしか男子生徒が嬉々とした表情だったような・・・

「保健室の先生ってかなり美人で面白い人でね。さっきの二人は保健委員なんだけど、こうやって「不慮の事故」でけが人が出ると元気に運んで行ってくれるのよね。」

あぁ、そういった理由ですか。

僕としてはそれよりも、

「へぇ~、そうなんだ。僕も「不慮の事故」に遭わないように気をつけるよ。」

「ふふっ、お利口さんなのね。荘介君は。」

奈々さんが微笑みながら今にも頭を撫でてきそうな感じのセリフを言う。

あぁ、なんて笑顔が素敵なんだ。

こんなに優しそうで素敵な人が六法全書を投げつけることなんてしないよな。

「荘介君、昼食持ってきてないのなら学食で食べない?」

「あ、はい。学食あるんですか、この学校。」


ドドドド!!



奈々さんと昼ごはんの話しをしていると何かが猛スピードで廊下を駆ける音が聞こえてきた。

「委員長ぉ!!てめぇ人の顔面に辞典投げつけるなんていい度胸じゃねぇか!!」

ダァン!と勢い良く教室のドアを開けダニーが帰ってきた。

鼻の穴にティッシュを突っ込んで顔には四角く六法全書の背の跡が残っている。

そんな顔のダニーを見て奈々さんが一言。

「あら、いい顔になったじゃないダニー。」

訂正しよう。

素敵な人であるのは間違いないだろうが、多分この方は同年齢だけど年上系サディストだ。

逆らっちゃぁいけません。

「ふざけんなよ!ことあるごとに辞書投げてきやがって!!もう我慢ならねえ!!」

そして、ダニーが構えて奈々さんへと突進する。

教室中からはそれを囃し立てる声。

「今日はダニーいけるんじゃねぇの?」

「いや、委員長には勝てないでしょう。」

「ダニーがんばれぇ!!」

「奈々ちゃーん!そんな脳筋やろうぶっ飛ばせー!!」

「俺、委員長に100円。」

「じゃ、俺ダニーに100円。」

・・・賭けまで成立しとりますがな。

でも、放っておいていいのだろうか。

仮にも女子対男子。

ダニーは握力もかなりあったし、あのガタイだ。普通にケンカも強いのだろう。

逆に委員長はそれこそ見た目は華奢な女の子だ。

普通なら勝ち目は無い。

「なぁ、止めなくてもいいのかい?」

心配になった僕は近くにいた男子生徒に声をかける。

「あぁ?あぁ、転校生は知るわけないか。見てればわかるよ。逆に手を出したら危ないぜ。」

そうして男子生徒は視線をダニーたちのほうへ戻した。

僕も男子生徒と同じように視線をやると、

「なっ・・・!」

一瞬目を疑った。

ダニーのあの動きはまさしくボクシングのもの。踵を軽く上げ、ひざを軽く曲げ左半身を相手に向けるように体を斜めにし両手を頭の位置まで上げている。

その状態から左、右とステップを織り交ぜ「本気」のジャブ、ストレートを放っている。

ダニーのスピーディな動きもそうだがそれ以上に奈々さんだ。

「全部、捌いてる・・・?」

その異様な光景に、そして戦いざまに高揚感を覚える。

ダニーの本気の拳を、次の拳を予想しながら避けるなり弾くなりして対処しているのだ。

「ダニー、結構速くなったんじゃないの?」

「ぬかせ!」

奈々さんが防戦一方に見えるとは言えかなり余裕そうだ。

ダニーのほうは口を引きつらせながら次々に拳を繰り出す。

「な?見てればわかるって言ったろ?ダニーと委員長のケンカについては日常茶飯事だから、あまり余計なこと考えないほうがいいぞ。」

隣にいた男子生徒に声をかけられ、ふと現実に戻り率直な疑問を投げかける。

「奈々さんって何者?」

「実家が他の県で、道場の師範の一人娘だそうで。他校の不良グループを一晩で壊滅させたとか、いじめの現場に仲裁に入ったら逆に手を出されそうになったから反撃して、それを止めに入った警官をぶっ飛ばしたとか、リアル空中コンボができるとか、水の上を走れるとか。アングラでは北耀の白狐なんて呼ばれているらしいよ。」

・・・とんでもねぇ女子生徒がいたもんですよ。

なるほど、道場ね。

だったらあの強さにも一応は納得いくが。

「ダニー?避けるの疲れたからそろそろ終わらせていい?」

最初よりもずっと速く動き全弾回避している奈々さん。

「ハッ!!すぐにお嫁に行けねぇようにしてやんよぉ!!」

ダニー、それ悪役のセリフや。死兆星が出てるぞ。

奈々さんが多めに距離を取り、すかさずダニーが距離をつめる。

ダニーの突進力はインファイタータイプのボクサーそのもので、ほぼ一瞬で空いた距離をつめただろう。

しかし、奈々さんは突っ込んでくるダニーから離れるのでなく逆にダニーのほうへと突っ込んだ。

奈々さんはダニーのジャブを掻い潜り懐へと飛び込もうとする。

ダニーはそれを阻止すべく、すかさずボディブローを放つ。

完璧なタイミングで放たれたボディは奈々さんのわき腹へ刺さるはずだったが・・・

「ウッ!!」

・・・吹っ飛んだのはダニーだった。

懐に飛び込んだ奈々さんの手は小さく握られていた。

「すっげぇ。今のは始めて見たなぁ。」

「今殴ったのか?何したんだ一体?」

確かに殴ったようには見えなかったが、確かにダニーが吹っ飛んだ。

ワンインチパンチとかそういった類だろうか。

しかもカウンターで入れるとは。

ということは奈々さんは中国系の武術の使い手のようだ。しかも相当の手だれと見える。

「奈々ちゃんカッコいい!!」

「お前、100円な。」

「今日のダニーはいけると思ったんだけどなぁ。」

とりあえず教室外まで吹っ飛んでしまったダニーが心配なのでダニーのもとへ駆け寄ると、

「・・・」

青山さんがダニーの下敷きになっていた。

教室に入る直前だったんだろう。右手には購買で買ったと見える惣菜パンとコーヒー牛乳が入っていた。

「奈々さーん。青山さんがダニーの下敷きになってダニーといっしょに失神してるよ。」

「あっちゃー。タイミング悪かったわねぇ。保健委員と一緒に2人とも保健室に運びましょ。保健委員手伝ってー!」

「「ウスッ。」」

保健委員という役職に不釣合いな体つきの男二人が駆けつけてきた。

身長190cmあるよな・・・絶対。しかもかなりの筋肉質。

「二人はダニーをお願い。私たちは青山さんを運ぶわ。」

「「ウスッ」」

また二人同時に返事をした。

なんだろう。このクラスは委員長をトップとした階級制度でも敷いているんだろうか。

「さ、荘介君手伝って。」

と、奈々さんが青山さんの右肩を担ぎながらこちらに声をかける。

僕は返事をして青山さんの左肩を担いで保健室へと向かった。


ついに部活も引退。


執筆速度が多分上がります。

まぁ、いつも通りゆるりとお待ちいただければと思います。


武闘派委員長キャラ出してみましたがどうでしょう。

テンプレっぽすぎる?

そこは突っ込まないでくださいお願いします。

今後も個性に溢れたキャラを出して少しずつ話しを盛り上げたいと思ってます。

何かあればツイッターあたりで受け付けますので、要望でも質問でもダメだしでも感想でも送っていただければ幸いです。


次話は12月中にアップする予定です。

それでは、今後ともよろしくお願いします。

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