表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HERO'S  作者: タロー
2/5

再会

空から降り注ぐ冷たい結晶。

徐々に染まりゆく街。

吐く息もすっかり白く染まる季節で・・・



走る。

狭い路地を全力で走る。

「はぁ、はぁ」

粉雪が目に入ろうと立ち止まる暇はない。

走る。

僕は脱兎の如く走る。

「ゴルァ!止まれクソガキ!!」

クソガキか・・・

少々正義感が昂じて、

カツアゲの現場に割り込んでチンピラに肘打ちを叩き込んだ僕は、

彼等にとってクソガキかもしれない。

大体、ちょっと目をやれば見えそうな路地でカツアゲするなよ。

警察じゃなくて僕に見つかったことを少しはラッキーだと思ってほしい、

と屁理屈染みたことを考えつつひたすらに路地を駆け抜ける。

背後からの怒号は止むことは無い。

「逃げんなよ、○○!!」

「殺すぞぉ、ドちび!!」

・・・なんか増えてない?

カツアゲの現場にいたのは3人だったはずなのに、なぜか7人になっている。

多勢に無勢とかお前らそれでも男かよ。

声高らかに叫びたい。

弱い者イジメ反対。

非暴力・不服従と先人は言ったものだが、

ドMと紙一重なんじゃないだろうかと思ってしまうこの瞬間。

そんなことを思いながら曲がった先にはビルの工事現場。

僕は手近に転がっていた鉄パイプを拾い上げ1本を

チンピラが追いかけて出てくるであろう曲がり角に投げつける。

「当たれっ!」

鉄パイプは風を切りながら勢いよく飛んでいく。

「そこか、ア゛!?」

クリーンヒット。

回転により勢いの増した鉄パイプがみぞおちに直撃した。

飛び出してきた男は腹を抱えてうずくまっている。

あと6人。

近くに転がっている鉄パイプを拾い上げる。

「てめぇ!?こら章太郎さんに何してくれとんのや!!あぁ!?」

あれ?・・・さん付け?

リーダー格だったんですか?

「章太郎さん、大丈夫っすか!?」

「ふざけんなよ!ガキがぁ!!」

どうやら本気で怒らせてしまったようだ。

チンピラ共はそれぞれに汚い言葉を投げかけてくる。

クソガキとか、殺すとか、○○とかそんな言葉ばかりだ。


どうしよう・・・


いや、逡巡しているひまなんてない。

逃げ場が無い以上こっちも応戦するしかない。

相手は6人こっちは1人。

僕の足りない脳味噌で考えた結果は、先手必勝。

近くにいたチンピラに全速力で近づき鉄パイプを振り下ろす。

が、かわされ逆に強烈なボディブローをたたき込まれる。

「っうぅ!?」

痛い、という言葉すら生ぬるい衝撃。

みぞおちに綺麗に入り僕はその場にうずくまる。

コンクリートの地面はとても冷たい。


あぁ、また負けるのか。


「・・・ぁ!!」

「・・・っ!!」

僕に投げかけられる罵詈雑言の数々。

そして6方向から飛んでくる足。

もう意識が飛びかけてしまってほとんど聞こえない。

また、負けるのか。


『おれ、・・・の・・・になる!』


ふと、頭をよぎる幼い日の記憶。

また、無理だったのか・・・

最後の力を振り絞って顔を上げる。

顔をあげた先には8人目の人影。

そう認識した瞬間、顎に強い衝撃が走り視界が真っ黒になった。



『おれ、・・・の・・・になる!』

またこれか、今日は昔の記憶がよくよみがえるな。

『だから、こんどは大丈夫だから!ぜったい・・・・・・いよぉ!!』

随分懐かしい。

あの日はすごく悲しいことがあって、

同時に約束もして、

僕の人生でおそらくもっとも重要な日だ。

『・・ちゃん!ぜったい・・・・・くるから!』

あの子が車の窓から身を乗り出して泣きながら叫んでる。

そういえば僕も涙をぼろぼろ流しながら見送ったんだよな。

結局それから数年後、僕も引っ越してしまったのだけれども。

・・・あのころと同じだ。

僕はまったく変わってない。

無知で、無力で、なにも変えることができなくて、

理想だけは立派に掲げて・・・


『ちくしょう・・・』


昔の僕がつぶやく。

そいつは今の僕のセリフだってのに。



「ちくしょう・・・」


呟きながら目が覚めた。

真っ先に目に映ったのは真っ白い天井。

周囲に目をやれば一面も白い壁、窓からは肌寒い風が入ってくる。

「・・・ん、病院か?」

なんで僕が病院にいるんだ。

全身アザだらけで寒空の下冷たい地面の上で

みっともなく凍えてるものだと思っていたのに。

確かチンピラに叩きのめされて、そのあと・・・

「・・・あいつかな。」

意識を失う直前に見た8つ目の人影。

僕を助けたとすればその人しか考えられない。

「だれだったんだろう。」

結果の出ない思考を一旦区切るためベッドから体を起こし窓まで歩く。

街を見渡せば大型の駅や巨大なビルが何棟も建っていて、

幼いころの記憶とは似ても似つかない風景が広がっている。

「随分と変わったんだなぁ・・・」

久しぶりにこの町、いや街に帰ってきて開発が進んでいたのは驚いたけど、

高いところから見るとより一層痛感してしまう。


「・・・変わったんだなぁ・・・」


気づけばもう一度つぶやいていた。



病院の外、私は彼がいる病室を見上げる。

すっかり赤くなってしまった手を顔まで持っていき吐息を吹きかける。

・・・ぜんぜん温まらない。

ちょっと前まではチンピラを相手にしていたから体が温まっていたけれど・・・

一体どうすればこの行為で手が温まるのか、ぜひとも発案者にご教授願いたい。

手袋を持ってくればよかったとしみじみ思いながらコートのポケットに手を突っ込む。


「・・・ちゃん、帰ってきたんだ。」


嬉しかった。

嬉しかったけど、どうしてあんな風に再会してしまったんだろう。

どうして・・・

どうして・・・


「・・・うそつき。」


私は病院を背にして歩く。

泣き虫の私はもういない。

幼いころの私はこの街にはもういない。



後書き 遅れましたタローです。

部活とか委員会とか忙しかったもので・・・

あとあらすじ変わっちゃいました。

プロットを考えないからこうなるorz


さて、実質第1話ですがいかがだったでしょうか。

まだまだ至らぬところがありますが、

そういったところはご指摘していただけると幸いです。


次回の投稿は年末を予定しています。

ではまた、お会いしましょう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ