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序章
少女はその日、飽きること無く林檎の木を見ていた。
意味があるとすれば空腹を満たすチャンスを掴むため。それ以外に意味なんて無い。
他にすることといっても家の手伝いをするか、本を読むことくらいしかない。
周りは少女のことを"根暗な本の虫"と言うが、あながち間違いではないと本人は自覚していた。
少女の祖父は沢山の本を少女に残した。本は貴重だ。新しい本をほいほい買う余裕も、買ってくれる親も少女には無い。
その本達はとうに読み尽くされてしまい、飽きることなく読み続けられた本は、虫に食われたようにボロボロになり、虫に這われたように所々手垢で黒ずんでいる。
あーあ。どこかに自分を掻き立てる何かが無いものか。
そういえば、なにかの本で読んだ。どこかの科学者が言ってたな。なんとかの法則とか言って林檎が木から落ちるのを見て閃いた、とかなんとか。
それはきっとその科学者にとって運命的な出来事だったのではないだろうか。
ボトッと林檎が落ちた。慌てて駆け寄る少女。
豪奢な馬車がこちらに向かってきていることに気が付かないまま、少女は落ちた林檎の元へと駆け出していた。




