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社畜が別荘買ったら週末が異世界でした  作者: vincent_madder


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2/11

第2話 ハイボールと広すぎる部屋

金曜の夜。


時計を見たら、終電ギリギリ。

もう頭回らないし、肩パンパン。

ディスプレイの明かりが目に刺さる。


受信トレイ? はいはい、見積もり依頼と注文ね。今日の僕はもう見ない。

見た瞬間、月曜の僕にパス。


「……よし、ここまで。」


PC落としたときの、あの「フッ」と消える画面が最高に気持ちいい。


昔の僕なら絶対明日も出社してたな。

たぶん土曜出社が当たり前だと思ってた時期もあった。


でも今は違う。


別荘が僕を待ってる。

そう思った瞬間、体が勝手に片づけ始めてた。


書類まとめて、机片づけて、

コート引っかけて、駅まで小走り。


電車に飛び乗ると、車内は週末モード。

酔っ払って大声で笑う人、寝落ちしてる人、スマホぽちぽちしてる人。


窓に映った自分の顔が、やけに楽しそうで笑った。週末にこんな顔するの、いつ以来だろう。


電車を乗り継いで、真っ暗な道を歩く。

冷たい夜風が気持ちいい。別荘が近づくたびに、足取りが軽くなるのが自分でもわかる。


カギを開けて玄関に入った瞬間、木の匂い。

ほっとする。コートを脱いでソファに沈んだら、もう動けなかった。


ここからが僕の週末。


* * *


翌朝。

外はまだ暗いのに、目が覚めた。

平日なら絶対二度寝する時間なのに、不思議と眠くない。


リビングに行って氷を落とす。

コロンって音が、やけにいい響き。

炭酸水を注いでシュワッ、ウイスキーを入れて軽くステア。


ひと口。


「……効くぅ」


喉を通る冷たさが、体の奥までしみる。

窓を開けると、外の風が一気に入ってくる。

ちょっと冷たいけど、頭がシャキッとする。


湖はまだ静かで、砂が夜の匂いを残してる気がする。都会じゃ絶対に嗅げないやつだ。


ソファに腰かけて、グラスを傾けながら湖を見る。空がゆっくり白んで、鳥の声が少しずつ増えていく。世界が目を覚ます音。


「あ〜、これだよこれ」


思わず独り言。

一週間分の疲れが、じわっと溶けていく。


* * *


酔いがほんのり回ったところで、部屋をぐるっと見回す。


「いやこれ、外観と広さ合ってなくない?」


外から見たら1LDK。でも中は3LDK。

廊下長いし、部屋も多い。何回見ても不思議。


隣の部屋を覗いて、にやっとする。


「ここ、スタジオにするか。」


決めたら即、頭の中でレイアウト開始。

吸音材、マイクスタンド、ミキサー……

考えてるだけで楽しい。


ギター、ベース、キーボード。

実家から持ってきた機材、置いただけでテンション爆上がり。


試しに弦を一本鳴らすと、壁に音が跳ね返った。

「うん、悪くない」

声に出してニヤニヤ。


DIY動画を流しながら、次は何を揃えようか考える。


気づいたら昼まで爆睡してた。

「いや、昼寝ってレベルじゃねぇ」


頭ガンガン。でもそれすら贅沢。

二日酔いすら、週末の味。


* * *


冷蔵庫から炭酸水とウイスキーを出して、また一杯。氷がカランと鳴る音が気持ちいい。


テレビつけたら普通に映った。

アンテナ立ててないのに。


「……まあ、映るならいっか」


バルコニーに出たらスマホ圏外。

一瞬焦るけど、週末だからまあいいやで済ませる。


写真でも撮ろうかとカメラ起動したら、真っ黒。


「おいおい、まだ一年しか使ってないぞ」


再起動しても直らず。

でも湖見てたら、もうどうでもよくなった。


「スマホより今だろ」


ひとりごちて、三杯目を作る。

琥珀色の液体が窓の光でキラッと光る。


* * *


あの日、書類を渡してきたのは店長だった。


ドア開けた瞬間、圧がすごい。

肩幅広い、腕太い、首も太い。

スーツの生地がちょっと張ってたもんな。


つい聞いた。

「すごい体ですね、鍛えてます?」

店長、真顔で一言。


『ドワーフですから。』

……は?


今なら笑えるけど、あのときは完全に固まった。

返事するの忘れて、数秒変な沈黙。

そしたら店長が、にやっと笑った。


「最近は珍しくないでしょ?」


その笑いがなんか悔しくて、

「そうですね」って意味わからん返事をした覚えがある。


耳長のお姉さんの顔も思い出す。

あれ、絶対ただの人間じゃないよな。


でも確かめる気にはならない。

面倒だし、今こうしてここにいるだけで十分だから。


氷がカランと鳴る。

グラスを空けて、またウイスキーを注ぐ。


窓の外はもう夕方。

湖がオレンジ色に染まって、光が揺れてる。


「……ま、いいか」


声に出した瞬間、全部どうでもよくなった。

夕陽が部屋の壁を赤く染めていく。


今日もいい週末だ。


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