表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

短編(両方あり)

沼生徒と沼学校と

作者: 裏道昇
掲載日:2025/03/18

もう一本。久しぶりにSFを書きました。

良ければ読んでみてください。


「やばいやばい……!」

「ゆっくり食べなさいよ」


 もそもそとジャムを塗った食パンを食べる。

 お母さんが呆れた顔で牛乳を渡してくれた。


 テレビは朝のニュースを流している。

 俺は左上に映った時間だけを睨みつけていた……もうちょっと待ってくれ。


 未だに意識は覚醒していないのに、あと五分で家を出なければ学校に間に合わない。牛乳を一気に流し込む。


 もう一枚いけるか……?

 食パンに手を伸ばす。

 

「ですから、地球の資源問題は既に危機的状況まで進んでいるのです」

 

 ニュースでは何とか教授が地球の資源について語っていた。

 良く分からないが、あと何年でうんぬんかんぬんらしい。


「では、具体的にどうすれば良いとお考えですか?」

「…………」

 

 意気込んでいた男性が一度黙った。

 そりゃそうだ。答えられるなら今頃は解決しているだろう。


 人類が増え続ける以上、別の惑星でも見つけるか。

 あるいは夢の技術でも生み出すしかない。


 最終的に資源の節約を主張することにしたらしい。

 日本人の無駄遣いについてデータを取り出していた。


 その時、急にテレビから甲高い音が流れる。


「……!?」

「番組の途中ですが、速報をお伝えします」


 速報か。事故でも起こったのか?

 しばらく見ていると、映像が切り替わった。

 

 見覚えのある映像だった。

 俺の学校じゃないか。


『XX高校で地盤沈下!? 地下に大きな空洞の疑いあり』

 テロップが流れていく。


 現地のアナウンサーが高校の門の前に立っていた。

 忙しなく空洞について説明していた。何やら液体が溢れているらしい。


「うわ」


 校庭の様子がテレビに映し出される。

 中心に大きな穴が開いていて、たぷたぷと茶色く濁った水が満ちていた。


 ――液状化ってやつか?

 ――なんだか沼みたいだ。


「……時間は大丈夫なの?」

「あ、やべ」


 お母さんの声に冷や汗をかく。

 時間はとっくに遅刻である。


 直後、同じクラスの奴から今日は学校が休みだとメッセージ。

 俺は思わずガッツポーズをしていた。


「……馬鹿」

 お母さんが俺の頭をぺち、と叩く。




 笑えなくなったのは夕方を過ぎてからだ。

 またニュースが騒ぎ出していた。


『XX高校で死体発見。生徒の関係者か』


 校庭の穴から死体が見つかったのだ。

 しかも、その死体……本人はまだ生きているとのこと。


 意味が分からないと思うが、その死体は俺の先輩らしい。

 つまり現役の在校生。問題は本人が今も家にいることだ。


 つまり死体として発見された人が生きている。

 本人は穴の中に入ったこともないらしい。


 兄弟はいないとのこと。

 そっくりさんで済むとも思えない。


 気持ち悪くなってネットでも調べてみると、妙な話が出てきた。

 ……沼男(スワンプマン)


 元はと言えば思考実験の一種らしい。

 自分が死んで、代わりに自分と全く同じ存在が生まれたら……というものだ。


 その名の通り、沼から生まれるという設定になっている。

 あの校庭の穴が沼に見えたからだろう、ネットでは大騒ぎになっていた。


『どっちが本物なんだ?』

『で、手品の種は?』

『こんなことをする理由は何?』


 本気なのか、それともお祭り気分なのか。

 好き勝手にSNSへと書き込まれていた。


「……寝るか」

 少し怖くなって、さっさと俺はベッドに入った。




「!?」


 ごぽごぽと、水を飲んで目を覚ます。

 いつの間にか、俺は水の中にいた。


 ――一体何が起こって……。


 水は濁っていて、周囲の様子は良く分からない。

 うっすらと見える景色は、俺の部屋に見える。


 俺は苦しくて、あちこちへと必死に腕を振り回す。

 でも周囲には何もなくて、腕は空回る一方だった。


 ――苦しい。

 ――何か、何か。

 

 ! その時、俺の手が何かを掴んだ。

 ぐい、と水の中で引っ張る。


「……っ」


 声にならない悲鳴を上げた。

 目の前に出てきたのは――ぐったりと動かない俺自身だった。




 研究チームは注意深く地球儀を観察していた。

 それは異常なまでに精密な地球儀で、ご丁寧に太陽系の模型まで作ってある。


 拡大してよく見れば、建物や人形があることも分かっただろう。

 ……いや、人形が動いていることも。


「また失敗です。地下の『沼』が溢れてしまいました。

 やはり扱いが難しいですね……」


 彼らは『沼』と呼ばれる物質を研究していた。

 この『沼』は電流を流すことで、触れている物質を複製するという特異な性質を持っていた。


 しかし、最新の研究で電気信号のデータのみで、疑似的に複製を引き起こすことが可能だと判明している。


「……もう一度だ。同じように古い地球のデータから。

 今はミニチュアだが、この時代の地球を複製することが出来れば、資源問題が全て解決するんだから」 


 彼らは新たな地球儀に『沼』を触れさせる。

 そうして、また小さな沼地球を作り直した。


読んで頂きありがとうございます!

ブックマーク、評価など頂けると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

以下のサイトにURL登録しています。

小説家になろう 勝手にランキング



ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ