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1話 猫が守る家





 私は少し厄介なモノを持っている。

 いや、持っていたと言った方が正しいのかもしれない。

 最近ではあまり出て来ないのだが、若い頃はそれに悩まされた事もあった。

 

 そう。

 私が持つ厄介なモノとは中途半端な霊感である。

 それは自分でコントロールなど出来ない、本当に厄介極まりないモノで、度々それに悩まされた。

 

 友人Fに言わせれば、


「そんなもんだよ」


 という事だったが、見えないで良いモノが見える事は、本当に迷惑だった。


 しかし、友人Fはその力が私の比ではなく、常に何かが見えると言う。

 私はそんな彼の精神の強さに敬服するしかなかった。

 

 そんな友人Fとの話を書いて行こうと思う。


 


 確か春先だったと思うが、私は友人Fに誘われて、少し交通の便の悪い町の高本と言う友人の家に遊びに行く事になった。

 

 私とFは高校を出たばかりで、まだ車も免許も無く、ある駅からバスに乗り、その町まで時間を掛けて向かった。

 地下鉄の駅のある街だったが、私とFの住む町からでは地下鉄に乗る術がなく、仕方なくバスで行ったと記憶している。


 バスは地下鉄の駅前に到着し、バスを降りて、友人が迎えに来るまで、駅の周囲にあるショッピングセンターで時間を潰した。

 当時はまだ携帯電話なんて無い時代。

 待ち合わせ場所を決めないと会えない不便な時代だった。

 

 私とFは時間を持て余し、バーガーショップに入りお代わりが出来るコーヒーを飲んで高本を待った。

 

 高本は私やFを同い年だが、高校三年の時に留年し、まだ高校生だった。

 たしか、半年後とかに卒業した様な記憶がある。

 

 かなり待って、高本が待ち合わせ場所に制服姿で現れたので、バーガーショップを出た。

 

 数か月振りに会う高本は少し疲れている様な表情で、あまり元気が無かった。

 

 そのまま三人で歩いて高本の家に向かった。

 高本の家は駅から十分程の場所にあり、駅前のマンション街を抜けた一軒家だった。

 

 誰も居ない家に入り、私とFは高本が出してくれた飲み物を飲みながら、部屋で話をする事になった。

 

 留年した事もあり、少し私たちに合わせる顔が無かったのか、元気の無い高本を初めて見た気がした。


「年末に、ばあちゃんが死んでよ」


 と高本は話し始める。

 

 高本のお祖母さんは六十過ぎだったらしいが、突然亡くなったと言ってた。

 

 私は高本の家に入った時に、線香の香りを強く感じ、最近誰かが亡くなった事を感じていた。

 

 高本は更に続ける。


「ばあちゃんが死んでから結構不幸続きでよ。親父は車で事故るし、妹は少し病んで入院してるし、俺はダブるし散々でよ」


 と言って笑っていた。

 

 その話を私の横で聞いているFの表情が険しい。

 

 もしかすると…。

 

 私はFが何かを感じている事に気付いた。

 

 Fは突然立ち上がり、高本の部屋から見える庭を見た。


「どうした」


 突然立ち上がったFに高本は驚いて訊いた。


「あ、いや…」


 とFは座った。

 そして、


「猫居るやろ…。お祖母さんが可愛がってた…」


 高本は不思議そうに、


「あ、ああ。居るよ…」


 と言うと部屋を出て猫を連れて来た。

あまり高本には懐いてないらしく、殆ど無理矢理猫を抱かかえて来て、私たちの前にその猫を放した。猫は私たちに驚いたのか、さっさと高本の部屋を逃げる様に出て行った。


 高本は猫の名前を呼んだが、猫はガリガリと爪の音を立てて走って行く。


「ああ、ええわ」


 と猫を追おうとした高本にFは言って、


「俺が見て来るわ」


 と部屋を出て行った。


「何で、猫が居るのわかったんやろ」


 と高本は私に訊いた。

 私にも全くわからなかった。


「しかもばあちゃんが可愛がってた事も知ってたな」


 と高本は不思議そうに首を傾げていた。


 直ぐにFは猫を抱いて帰って来た。

 猫もFには自分から身体を摺り寄せている。


「コイツもばあちゃんが死んでから飯も食わん様になるし、しばらくはそのまま死ぬんちゃうか言うとってんけどな」


 と高本は言って猫の背中を撫でてた。


「大丈夫。この子はお祖母さんの分まで生きるわ」


 とFは猫の前足を取り、自分の前に立たせていた。


 それを聞いて高本は笑ってた。


 笑ってる高本が以前の彼の様に見えて少し安心した。


 その日は二時間くらい話をして高本の家を出た。

 高本も駅まで送ってくれて、私とFはまたバスで帰った。

 

 そのバスの中で、


「高本の家、あれはまずいな…」


 とFが言う。


 まずいってなんだ…。


 私は眉を寄せてFに訊く。


「まずいって…」


 Fはバスが目的の駅に到着するまで何も言わなかった。

 駅に着くと、


「ちょっと茶しようや」


 と言って喫茶店に入った。


 二人でコーヒーを頼んで、我慢していたタバコを吸った。


「お前、何にも感じんかったか」


 とFは言う。


 私は首を横に振った。


「線香の匂いきつかったやろ」


 それは確かに感じた。

 しかしそれはお祖母さんが亡くなった事もあり、家族が線香をあげているのだろうとFに言う。

 するとFは首を横に振る。


「あの家、祖母さんに線香なんて誰もあげてないで」


「何でわかるの…」


 と私は訊いた。


「仏壇、見て来た。あの猫が仏壇の前に居ったからさ」


 私はFの話を聞く事にした。


「あの猫ちゃん。見える子や。動物には結構居るねんけど、あの子には確実に高本の祖母さんが見えてるわ」


「お前も見えた…」


 と私がFに訊くと、黙って頷いた。


「それだけちゃうねん」


 とFは二本目のタバコを手に取って顔を寄せて来る。


「あの家、霊道になってしまっててな」


 霊道とは霊の通る道の事を言うらしい。


「霊道になると栄える家と廃れる家が有って、高本の家の場合は後者の方やな…」


 このF。

 実は四国の大きなお寺の住職の孫で、父親は長男では無いので家を出たらしいのだが、その祖父に強い霊感があると言う。


「どうしたら良いの」


 と私はFに訊いた。


 Fは微笑むと、


「まあ、直ぐに高本から連絡来るやろ…。そん時、手伝って…」


 と言った。


 私に何が出来るんだろう…。


 私は不安で仕方なかった。


 その日、私はFと飯を食って帰った。





 その数日後、Fから電話が入った。


「今度の土曜、高本の家に行くから。俺んちに集合で」


 と言う。

 私はFの言う通りになった事に驚いたのと、高本を何とかしてあげたい気持ちで、了承した。


 



 土曜日、朝早くにFの家まで行くと、別の友人が車でやって来た。


「何かFに手伝ってくれって言われてよ。パチンコ行く予定やったのに…」


 とその友人は文句を言っていた。

 

Fがスコップを三本持って家から出て来た。


「悪い悪い、行こうか」


 と友人の車のトランクにスコップを放り込むと、助手席に乗り込んだ。

 私も後部座席に乗り、高本の家に向かった。

 

 高本の家の前に車を着けると、高本が家から出て来た。

 当時は土曜日も学校が半日あったので、高本はその日学校を休んでいた。


「すまんな、わざわざ」


 と高本は私たちに言う。


「気にすんな。高本悪いけど、塩と酒あるか」


 と早速Fはそう言って高本の家の庭へと入って行く。


 言われるがままに高本は塩と酒を持って庭にやって来た。

 それを受け取ると、Fは、


「お前らあっちの端に穴掘って、この木植え替えるから」


 と椿の木を指差した。

 そんなに大きくない木だったが、四人でやっても大変そうに思えた。


 スコップを持って私ともう一人の友人が穴を掘ろうとすると、高本も手伝おうとスコップを手に取る。

 それを見て、


「あかんで…。高本は触らんといて」


 とFが言う。

 Fは高本に指示して、仏壇の置いてある亡くなったお祖母さんの部屋の窓を開けて、線香を立てていた。


 Fが言うには、その家の人が霊道を動かすのは良くないらしく、他人に任せるモノだと言う。


 高本は汗をかきながら穴を掘る私ともう一人の友人、そして色んなところに塩と酒を掛けるFを、お祖母さんの部屋からじっと見ていた。


 Fは塩と酒を掛け終えて穴を掘るのを手伝いに来た。

 結構深く掘った記憶がある。


 掘り終えると、今度はお祖母さんの部屋の近くにある椿の木の周囲を掘った。

 一緒に来た友人は家が造園業で、高校を出て造園の仕事をしていた。


「俺が呼ばれた意味はわかったけど、結構しんどいな。帰りに飯くらい奢れよ」


 とその友人は言いながら一番掘っていた。

 

 そして掘り終えて、椿の木を引っ張り出すと、Fは数珠を出して読経を始めた。

 私と友人はその後ろで目を閉じた。

 短い読経だったと思うが、その後、椿の木を三人で掘った穴に移動させ、しっかりと水をやって、土を掛けた。

 そして今度は、椿が植わっていた場所に移動し、Fはその穴の中に入った。


「お前、何すんの…」


 と友人は不思議そうにFを見ていた。


 するとFは顔を上げて、


「悪いけどスコップ取ってくれ」


 と私に言うので、立掛けていたスコップをFに渡した。


「此処に、何か有るねん」


 とFは穴の中を更に掘る。

 一人しか入れない程の穴だったので、私たちは見守るしかなかった。


 しばらくするとFは穴から出て来た。

 何か見付けたのかと思ったが、


「腹減った。飯食おう」


 と言う。

 高本が出前を取り、私たちはそれを庭で食べた。

 するとお祖母さんの部屋に居た猫が庭に出て来た。


「珍しいな。コイツばあちゃん死んでから家から出て来んかったのに」


 と高本が言う。


「怖くて出て来れんかったんやで」


 とFは言った。

 その意味がわかってたのはFと私と猫だけだったのだろう。

 

 Fはその後、高本に酒を買って来いと言う。

 高本は自転車で酒を買いに出た。

 

 Fはまた穴に入り中を掘っていた。

 しかし、しばらくすると中から出て来て、


「あかんわ…。この辺って昔、墓やったところやな…」


 と言う。

 Fに訊くと古い墓石が穴の中から出て来たらしい。

 

 そんな場所は新興住宅地には意外に多いと言う。

 それも霊道と同じで栄える家と廃れる家にわかれるらしい。


「どうするの…」


 と私はFに訊いた。

 Fはしばらく考えて、


「ちょっと爺さんに訊いて来るわ」


 と言って近くの公衆電話まで走って行った。


 私ともう一人の友人は椿が植わっていた穴の中をしばらく見ていた。


「あれ、Fは…」


 と言いながら高本が酒を持って帰って来た。


「ああ、今、電話しに行ってるわ」


 と友人が言うと、丁度Fも帰って来た。

 高本から酒を受け取ると、


「あと、塩と米、それに線香と水を頼む」


 と言う。

 高本は家の中に入り、それらを揃えて持って来た。


「これでええの…」


 と縁側に置いた。

 小さなバケツいっぱいの水を見て、Fは首を傾げた。


「水はあのホースで行こうか」


 と庭の隅にあるホースを指差した。

 それをもう一人の友人が引っ張って来る。


 その時、お祖母さんの部屋の中でお鈴の音がした。


「アイツ…」


 と高本が部屋に入った。

 私も部屋の中を覗くと、仏壇のお鈴が床に転がっていた。


「多分猫やわ」


 と高本は言う。

 私は庭を見た。

 すると猫は庭の隅に居た。


 違う…。猫じゃない…。


 私はそう思ったが、黙っている事にした。


 Fはまた穴の中に入り、中で何かやっていた。

 私はFの傍に行き、


「こんな事で霊道を無くす事なんて出来るの…」


 と小声で訊いた。


 Fは私の顔を見て微笑む。


「そんな事は出来ん。絶対に道はあるねん。俺らはその道を曲げる事くらいしか出来んのよ」


 と言った。

 私は顔を上げて周囲を見た。

 周囲にも家は沢山ある。

 もしかするとそのどれかが霊道になってしまう可能性もあるのではないだろうか…。

 

 Fは私の顔を見て頷く。


「お前の思ってる通りや。曲げた霊道はもしかしたら何処かの家に掛かってしまうかもしれん。それでも、今の状況よりはマシやろう…」


 Fはそう言うと穴から出て来た。

 そして、


「もう一回電話してくるわ」


 と庭を出て行った。


 勿論、友人たちの大半はFの霊感の事も知っている。

 そしてその力がホンモノである事も。


「何かヤバいんかな…。俺んち」


 と高本が言う。


「Fに任せてれば大丈夫よ」


 と私は言うしかなかった。


 Fは戻って来るとカバンを開けて、半紙の様な紙を出し、それに何かを書いていた。

 結構な時間それを続けていたので、かなりな枚数書いていた気がする。

 

 今度は私に線香に火をつける様に言う。

 線香の束に火をつけるとそれを振りながら読経を始めた。

 もう一人の友人はFに言われた通りに、多分、お経の様なモノを書いた紙を穴の中に一枚ずつ入れて行く。


 線香が短くなるとその線香を穴の中に落とし、今度は米と酒、塩を穴の中に入れた。

 長い読経だった気がする。

 そして、私と友人に穴を埋めろと言うので、私たちはスコップでその穴の中に土を入れて行く。

 

 Fは慣れた口調で読経をする。

 私と友人は穴を埋め終え、Fを見ると、Fはその読経を終えた。

 

 私はFが手に持った塩の器を受け取り、高本に返した。


「そこに水を撒いて」


 ともう一人の友人にFが言うと、手際よく埋めた穴の上に水を撒いた。

 水溜まりが出来、水が家の外まで流れ出していた。


「こんなモンか」


「いや、まだまだ…」


 とFは言う。


 後から訊いたのだが、墓参りに行って墓石に水を掛けるのは、亡くなった人は熱いのだそうだ。

 それを冷やしてあげるために墓石に水を掛けるのだと言う。

 それと同じ事を高本の家でしていたのだそうだ。


 水を撒き終えて私たちは縁側に座った。

 高本は飲み物を持って来てくれてそれを飲んだ。

 

 するとFは、


「ちょっと線香あげさせてくれ」


 と言い、お祖母さんの部屋に入った。

 そして部屋から顔を出し私を呼ぶ。

 私もFについて部屋に入り仏壇の前に座った。

 

 線香を立てて、今度は仏壇の前で読経を始める。

 すると庭に居た猫が部屋に入って来てFの横に座り小さな声で鳴いた。


 Fがお鈴を鳴らす度に猫が小さな声で鳴く。


 読経を終えたFは横に居る猫を撫でた。

 そして、


「もう大丈夫やで…。成仏してええよ」


 とFは仏壇に話し掛け手を合わせた。





 外に出ると高本ともう一人の友人が楽しそうに話をしていた。

 そこにFと私が戻り座った。

 

 Fは真剣な表情で高本に言う。


「もう大丈夫。と言いたいところやねんけど、無理やねん」


 高本の表情が曇る。


「どうしたらええの…」


 心配そうに言う高本にFは、


「うちの爺さんの知り合いの寺に頼んどいたから。一回本格的な奴をやってもらおう」


 高本は頷く。


「それと、それが済むまで、お前は毎日、あの椿の跡に水を撒いてくれ」


 高本は不思議そうな表情で「うん」と言った。


「水抜き作っといたるわ」


 と友人が立ち上がって、スコップで溝を作り始めた。


 Fはその友人を見ながら、


「なあ、高本…」


 と言う。


「祖母さん、あの辺で亡くなったんやろ…」


 と椿の木の跡を指す。


 高本は無言で頷いた。


 高本のお祖母さんはどうやら自殺されたらしく、妹が家に帰ったら椿の木の辺りで倒れていたそうだ。

 それを見た妹は不安定になり、病院に入院しているらしい。


「そんなんもわかるんか…」


 高本は頬を緩めて言った。


「ああ、さっき祖母さんに訊いた」


 Fはそう言う。


「やっと成仏出来るって言うてはったで」


 とFは立ち上がった。


 高本が今度は話し始めた。


 お祖母さんが自殺した後、親父さんが車の事故を起こし、妹さんは精神科に入院。

 このところ少しマシになったので一般病棟に移ったそうだ。

 その後、妹さんは病室から飛び降りたという。

 二階の部屋だったので、骨折だけで済んだらしく、その後すぐにFに連絡したみたいだった。

 

 父親も母親も憔悴していて、もうどうしようも無いと思いFに連絡したと言っていた。


「お前、何でもわかるねんな…。びっくりやわ」


 と高本はFに言う。


「わからんよ。ただ教えてくれる人が居るだけや」


 Fの足元に猫が身体を擦り付けていた。





 高本の家は古い墓の上に建っているらしく、不浄の地と言うらしい。

 あの後、Fのお爺さんの寺で修業をしたと言うお寺の住職がやって来て数日掛かり、お祓いの様なモノをやっていたと随分経ってから高本に聞いた。


 妹さんもすっかり良くなり学校に行ってたらしく、陸上で結構いい成績を残したらしい。





 何年か経って、私はFと高本と一緒に飯を食う機会があった。

 その時にそんな話になったのだが。


「最初に行った時、お前の祖母さん、仏壇の前でずっと泣いてはったんや」


 とFが言った。

 Fにはそれが見えていたのだ。


「そりゃ猫も傍を離れんわな」


 高本はその時は半信半疑の表情だった。

 既に何年も経過しているので、それが普通だろう。

 

 私は黙ってFの話を聞いていた。


「あの猫は元気か」


 私は高本に訊いた。

 すると高本は微笑み、


「あの半年くらい後やったかな…。祖母ちゃんが死んでた場所と同じところで死んでた。もう歳やったしな…」


 そう言った。

 

 Fは頷いて、


「あの猫が家を守ってくれてたんやで…。しんどかったやろうな…」


 と言う。


 高本は目に涙を溜めて頷いていた。





 Fは言う。


「言わなくていい事は言わんでええねん。ただ、俺が出来る事はやる。ただ俺は修行した訳じゃないから、無理な事もあるねん」


 それでも私たちからすると考えられない事をやる。

 その当時まだ彼も私も十代だった。


「俺と居ったら、見んでええモン見てしまう事あるやろ…」


 笑いながらFが私にそう言った事もあった。

 確かにそんな事も多々あった。

 しかし、Fが誰かを助けようとする時は必ず私は呼ばれていた。

 そして、


「俺もお前も、人に無いモン持ってるのは事実や。それは困ってる人のために使う。そのためのモンやって爺さんが言うてた。そんな大勢の人を何とかしようなんて思ってないし、出来へんし。そやけど、知り合いくらいは助けたろうや…。」


 これは何度も聞いたFの言葉だった。





 Fとの話は色々とある。


 それをこうやって書く事にしたのは、友人Fの訃報を聞いたからだ。


 彼の若き日の生き様を私が書く。

 それは、彼が生きた証になれば良いと思っての事。

 

 勿論、もっとFと笑った話や苦しんだ話もあるが、それはまたの機会に書く事にしよう。








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