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4/4

誤タップから始まる極振り

様子見投稿。

未完箱に入れて7ヶ月くらいたった作品だけど、反応次第で新作書くかこっち書くか決める。



 絶えず瞬く光と共にプレイヤーが現れる広場。噴水の綺麗なその場所で、リク……いや、プレイヤーリナはそこにいた。


 「………どうしよう」


 真顔で体育座り、加えて言うなら死んだ目で。


 どうしよう……この言葉って意外と不毛な言葉かもしれない、とか思いながらもおれは立ち上がる気力が湧かなかった。

 いやだって、ただでさえ女子小学生に間違えられる見た目で、しかもでふてふさん補正でそれが極まってる状態なのに……これで名前まで女性名だったら言い逃れができない気がする。


 「…………」


 少し考えてみる。

 もし間違えた人がいたとして、ここで男ですとカミングアウトしたら………。


 「ダメだ……良くて女装好きな子供……悪くてネカマ扱いされる……絶対」


 この2つに事実上の違いはないが、相手に与える心象には多大な違いがある。というか下手にパーティなんか組もうものなら騙された!とか言うやつ出てくるんじゃ?ネットあんまりしないけど、そういうやつが居るというのはどっかで聞いた。

 というかその情報が違ったところで、女装扱いされるのは変わりないし、どっちにしろ嫌だ。

 目が加速度的に死んでいく。誤字一つでここまで絶望できるのか……せかいってふしぎー。


 「いや、身内でやる分には何も問題なんか……いや、ヒビキは笑うだろ、絶対」


 ついでに言うなら妹は目を輝かせるだろう。お兄ちゃんもやっとその気になったんだね!とか言ってくるのが目に浮かぶ。

 やっとってなんだよ。ねぇよ。

 想像上の身内に心をメタメタにされながら立ち上がる。


 「アカウント消去はな……最終手段にしたい」


 このご時世、複数アカウントは持てない仕様になっており、尚且つ個人のアカウントはVR上のあらゆる権限に紐付けられており、ある種第2の戸籍と言ってもいい。

 つまり、アカウント消去するためには現実で面倒くさい手続きを最初からやる必要がある上に、それらをこなしても手に入るのは初期化されたまっさらなアカウントである。

 これでも人生の半分は一緒にいたアカウント、紐付けられているデータは半端ではなく、それをたかが一ゲームの名前変更の為に消すなど正気の沙汰ではない。


 つまりこのままやるしかない。

 腹を括って、ウィンドウを出してアイテムストレージから手鏡を取り出すと、そのまま鏡を覗いた。


 「…………補正すごいな」


 そこには自分自身じゃなかったら告白してたんじゃないかってくらいの美少女が映っていた。

 死んだ目がさらに死んだ。

 感想としては髪の艶やば、前髪一房だけ垂らしてるのなに?とかそんな感想しか浮かばないが、それはおれの語彙が貧相なだけで、他の人ならスラスラと賛辞の言葉が出るんだろう。


 顔の感想がない?……いや、顔はいつも鏡で見てるのとそこまで変わってないし。

 良くも悪くも幼い顔である。ようじょ。


 「というか髪長いな……どこまであるんだよ」


 腰くらいまであるのは確実……とか思いながらも背中越しに見てみると、どうやら踵に届くくらいは長そうだ。いくらなんでも長すぎじゃね?


 「というかデフォルトイメージでは別にこんな特徴的な髪型じゃなかったはず………まぁいいか」


 ……どっちにしろ幼女であることに変わりはないし。言ってて悲しいが。

 手鏡をストレージになおして、今度はステータス画面を開く。

 そこには


 ーーーーーー

 Lv:1

 Name:リナ(ヒューマン)

 Class1:未選択

 Class2:未選択

 indigo:なし


 STR:0

 VIT:0

 SPD:0

 INT:0

 MID:0

 TEC:0


 STP:100


 SKILL

  Active:『ファイア』

  Passive:『剣の使い手』

        『火魔法入門』

   EXTRA:『月の加護』


 Order:

 ーーーーーー


 と書かれていた。


 スキルはおれが選んだやつ。月の加護とかいうエクストラスキルはでふてふさんが言ってた確定でもらえる一枠とかいうやつだろうし。

 ステータスは全てゼロ。下にあるSTPとやらが恐らく振り分け可能なポイントだろう。ステータスポイントだからSTPだと思われる。

 何に振り分けるかは決めてないけどタップすれば詳細が見れるみたいだな。誤タップには気をつけよう。

 えーっと、STRが筋力だろ?

 VITが防御力……SPDが敏捷……INTは……魔法攻撃力か。

 MIDは魔法防御だな。あとは


 「TECって……テクニック、か?……つまり技量?VRには珍しいステータスだな。器用さとかそういう枠なんだろうか」


 まぁ、想像通りなら弓兵とか生産職に必要なステータスなんだろうな。おれはパス、と思い手を離そうとした時。


 「………リク見つけた」

 「うぉおおおおおおお!?!?」


 横合いからニュッと現れた全然知らない金髪の女性に名前を呼ばれたのと肩に手を置かれたのとでパニクった俺は手元も見ずに画面を消す。なんかYESorNOとか書いてあったが今は画面を消すのを優先!イエス!

 なんとかウィンドウが消えたのを横目に確認して突然話しかけてきた不審者に目を向ける。


 (なに?……なんなの??見られて……ないよね?)

 「探した」

 「いや誰……ですか」

 「………わからない?」


 バクバクする心臓を落ち着かせながら問いかけるが、依然不審者は謎の言語でおれを翻弄する。

 この圧縮言語……誰かを思い出す。でも姉貴はこんな綺麗な金髪じゃないし……そもそも身長こんなに低くない。

 このゲームでは身長が弄れないのは身を持って確認済みだ。……ならホントにダレこいつ???


 「おねーちゃんだよ……」

 「うそだ!!!姉貴そんな身長低くないし………何よりそんな巨乳じゃない!!」

 「…………」

 「いたっ、えっ、なに?」


 なんか無言でローキックされる。地味に痛い。

 というか顔怖い。無表情で怖い。

 というかホントに見覚えのある仕草……えっ、まさか……ほんとに?

 困惑から帰ってこれてないが一応確認しておく。


 「マジで姉貴なの……?」

 「ハルカが」

 「クゼさんが?」

 「私は身長変えてほしいって……」

 「……………」

 「……………」

 「「…………………………」」


 沈黙がキツイ。

 …………会いたかったぜ、姉貴!

 なんて都合のいい言葉は胸の中に秘めておく。

 これ今言ったらただの誤魔化しになる。それがわかったから秘めておくのだ。

 日和ったわけではない。


 ……言い訳じゃないがそうして見ると、確かに姉貴だ。照れると首筋の辺りに左手を添える癖とか親父そっくり。


 「なんか技量ステータスの……」

 「ごめん、制作裏話になるなら聞かない」

 「そう……」


 確信が持ててきた当たりでダメ押しに語ろうとした話は遮っておく。いちプレイヤーのおれが聞いていい話じゃないし。


 そういや姉貴、クゼさんの推薦でゲームのデータ作りに協力したとか言ってたな。もしかしてスキル制作にも関わったのかも知れない。

 そうだとしたらある程度自前のプレイヤースキルでアクティブスキルの再現ができるって事だし……身長変えて少しでも他のプレイヤーとの差を小さくしたかったとも取れる。

 いつも使ってる身体と違うなら自前でスキル使用とかできないと考えてもおかしく無いし。できても精度が落ちるのは確実だろうし。

 おれが聞いていい話じゃないとか言っておきながら推測はするというのはズルいが許して。


 胸に関しては……言わないでおこう。

 雉も鳴かずば撃たれまい。


 「だいぶ可愛くなった」

 「うるせぇ……」


 いきなりアバターを褒める姉貴の言葉に適当に返して、確認の続きをしようとステータス画面を開く。どうせ姉貴なら見られても構わんだろう。……照れてないから!!


 さっき確認したのは技量ステまでだったよな…………


 ーーーーーー

 Lv:1

 Name:リナ(ヒューマン)

 Class1:未選択

 Class2:未選択

 indigo:なし


 STR:0

 VIT:0

 SPD:0

 INT:0

 MID:0

 TEC:100


 STP:0


 SKILL

  Active:『ファイア』

  Passive:『剣の使い手』

        『火魔法入門』

   EXTRA:『月の加護』


 Order:

 ーーーーーー


 ………………………あれ、目がおかしくなったかな?なんかステータスが変になってる……バグ?


 「おおー、極振り……わたしもしよっかな」

 「見間違いじゃなかった……!!!」


 あ、あれー!!?なんで?(自問)

 多分、画面を慌てて閉じた時に誤タップしたと思われ。(自答)

 YESorNOってそういう……うぁあああああああ!!(発狂)



 (……姉貴、恨むぞ)

 「おそろい」


 嬉しそうにこちらに極振りした自分のステータス画面を見せてくる姉貴を見ながら、おれは崩れ落ちたのだった。


・第二の戸籍

 完全にリナちゃんの感想であり言い過ぎであるが、アカウントが個人個人でひとつと決められており、これが無ければVR空間に紐付けられた権限等を扱う事ができない為、仮想世界における戸籍と言えなくもない。

 しかし、基本的な使用場面はログイン画面の方が多いので、色々含めると、戸籍というよりパスポートと言ったほうが適しているのでは?と思っている人もいる。

 一応本人確認や、VR内のゲームプレイ方針、不正データの使用履歴などもアカウントで管理されアカウントそのものにアライメントが設定される事もあり、これらの内部データが悪性に偏っている人には閲覧、訪問できないという設定が個人でできる。

 つまり普段から素行の悪い人をアカウントそのものが判断して出会すのを防いだり不正データや不適切な発言などを遮断できる……のだが、そのセーフティ機能は実質開発者周辺以外には案外周知されてなかったりする。

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