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3 人的資源

 特に、『人的資源』や『社会工学』という言葉が使えるようになったのは、この作品のおかげです。


 それまで私は、これらの言葉が苦手でした。誰かが誰かを道具のように利用したり、機械のように操作したりする印象を受けたからです。


 しかし、この小説には社会の民度(人々の社会的知識、政治的成熟度)や、人材の育成・確保と活用の大切さが、説得力をもって描かれています。


 恐ろしく残酷な旧帝国は、民主政の衆愚政治化から生まれました。しかし後に新帝国では、英雄達など優秀な人材によって改革に成功しました。一方、それに対抗すべき自由惑星同盟では、帝国からの敗亡貴族・逃亡犯の受入れなどもあり、再び政治が腐敗し、敗北します。しかし、(こころざし)ある人々の努力によって、民主主義への希望は残ります。


 銀河帝国には優生学的な思想がありましたが、自由惑星同盟にも『人的資源委員会』という組織がありました。残念ながら同盟は帝国に、その人材の面でも負けてしまいましたが……。


 技術が自然から富を作って社会を豊かにするものだとすれば、政策は人々の間で富を分けて社会を健全に保つものといえます。しかし、技術が物的資源に具現化されないと社会を豊かにできないように、政策は人的資源を通じて実現されないと社会を健全に保てません。


 どんなに良い政策があっても、みんなが聞いてくれなければそれまでですし、協力しようにも、それに必要な健康や知識がなければ難しい。相手が悪ければ、かえって悪用されてしまう恐れもあります。政策の基礎となる科学的事実さえ、人々の偏見によって歪められてしまうことが、歴史上はありました。そんなことに、気づかされたのです。


 考えてみれば子は宝とか、地域は人材の宝庫などいった言葉もあります。個々人にとって最も大切な資産は自身の健康や学びであるという意味で、属人的な資源とみることもできるでしょう。誰かが誰かの資源というのではなく、社会の全ての人々にとって、あるいはお互いや自分自身にとって、全ての人々の健康や能力が資源なのだという意味でなら、『人的資源』という用語は使ってもよいと思うようになりました。

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