060 下半身こんにちわ
その後は、ビーチバレーで遊んだり、砂浜に翔を埋めて遊んだり、夏の海をみんなで満喫した。
「お腹へったね~。そろそろお昼にしようか。」
トミーの言葉に、双子は「はーい!」と元気に返事をして立ち去ろうとした。
「ビーチでお昼と言えば、海の家やなぁ。」
「焼きそばとかき氷はかかせないね。」
「…………おい。」
翔の呼ぶ声に、トミー達は振り返った。
「おや、どうした翔くん?地面に埋まって何してるんだい?」
「いや、記憶喪失かよ。お前らが埋めたんだろう。」
「全くしょうがないな。ほら、これでOKかい?」
トミーは翔の埋まっている胸部らへんに、二つの乳房らしき小山を作った。
「おい、何がOKなんだよ。馬鹿なの?いや、お前が馬鹿なのは知ってるけど。」
「うわっ、翔さん巨乳ですね。」
「ほんまや、うちらよりでかいやん!」
トミーと双子がけらけらと笑う様を、桃花だけ気の毒そうに見ていた。
「あの……大丈夫ですか?」
「あぁ……砂をどけてくれたら助かる。」
「っじゃあ、私たちは先に行って席を確保しておくから、早くおいでね。」
そういうと、トミーと双子は海に家に向かって去っていった。
「……んっ、すごい、カッチカチですね。」
「あいつら思い切りプレスして砂を固めてたからな。わざわざ海水かけて、固めようとまでしてたし。」
翔は砂場で横たわるような姿勢で、身体の上に砂で埋められ、さらにカチカチに固められて動けなくなっていた。
桃花は、埋まっている翔の身体を傷つけないように、慎重に砂を掻き分けていたが、なかなか削り切れそうにない。
「すみません、ちょっときりがなさそうなので……強めにやっていいですか?」
「あぁ。この体勢も疲れちゃったから、思い切りやってくれるかな。」
上半身の砂を思い切り削ってしまうと、翔の顔に砂がかかってしまう。そこで、桃花は所の下半身から先に削ろうと、翔に背中を向けて四つん這いで砂を削っていた。
“あっ、このアングルはよろしくない……。”
砂を削るのに一生懸命で、桃花は翔にお尻を向けていることに気が付かなかった。必死に砂を押しのけようと、桃花の小ぶりなお尻が、目の前で前後に揺れている。
水着というのは、下着とどれほどの差があるというのだろうか。翔にとって、その光景はかなり刺激が強かった。翔は目を瞑って何も見ないように心掛けた。
「あっ、もうちょっとで下の方は出てきそうですよ。」
「そっ、そうか……。がんばって。」
「はいっ!」
桃花は先ほどよりも力を込めて、翔の腹から足に乗っている砂を押しのけようとした。
“ズリッ……”
「……?」
桃花は手に妙な柔らかいものが触れたことに気が付いた。桃花が勢いよく砂を押しのけた結果、翔の水着を思い切りずらしてしまった。
「さっき、“ズリッ”て音しなかった……?」
おそるおそる翔が尋ねると、桃花は「……ひっ。」と声をあげた。
「ひっ!?すっ、すみませーん!!!」
桃花は気が動転し、恥ずかしさのあまりその場を駆けだしてしまった。
「ちょっ!?ちょっと待って桃花ちゃん!?まさか、僕って今水着脱げてる感じなのっ!?下半身こんにちはしてる感じなのっ!?うそっ!ちょっと待って!このまま放置しないでくれっー!!!」
須磨海岸のビーチには、翔の叫びが虚しく響いていた。