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029 零れる涙

突然桃花が泣き出すという状況に、翔はただあたふたとしていた。


「大丈夫?どこか体調悪い?」と声をかけ彼女の背中をさすったが、桃花は泣きながら首を横に振るだけだった。


そのまま少しの間桃花は泣き続け、子どもが一しきり泣いて少し落ち着きを取り戻したように、「ひくっ…ひくっ…」と肩をゆらせながら、桃花はようやく体操座りの姿勢のまま顔をあげた。


「どっ…どうしたの?大丈夫…?」


翔の問いかけに、桃花はもう一度袖で顔をふいてから応えた。


「ごめんなさい…。もうっ…大丈夫です…!ちょっと……、ホームシックになってしまったというか…。でも、本当に大丈夫です…!心配かけてごめんなさい!」


桃花はまた無理やりな笑顔をつくって笑った。女の子が泣きたい気持ちを堪えて、無理やり笑おうとする笑顔は、これほどまでに見ていて辛いものなのだと初めて知った。


翔は泣いている子どもをあやすように、桃花の頭をやさしくなでながら、彼女の気持ちをほんの少しでも和らげられる言葉を探した。


「大丈夫だから…、何も心配することはないよ…。僕にできることなら何でもするから。泣きたいときは泣いたらいいし。とにかく、無理しちゃ駄目だよ…。」


翔の優しく響く声と優しく頭をなでられる感触に、桃花の気持ちは少しずつ落ち着いた。翔の胸にことりと顔をおしつけ、しばらくの間だけ目を瞑って甘えることにした。


「…取り乱してしまってごめんなさい。でも、もう大丈夫です!」


しっかりとした言葉で言いきった桃花を見て、翔も少し安堵の表情になった。


「おーけー。明日は魚の活け造りパーティーだ!新鮮な魚買ってくるからねっ!何がいい?鯛もいいけど、ハマチもいいね!もう片っ端から買っちゃおうかな!?」


翔が無理にテンションを上げて元気づけさせようとしてくれているのを感じ、桃花は自然な笑みがもれた。


「おっ、いいね。その笑顔!素敵だよ!やっぱり今度ちゃんとしたカメラ買おうかな。」


お道化たようにいう翔に、桃花は「写真撮るの好きなんですか?」と質問した。声が震えることなく、いつも通りの声音が出たことに桃花はほっとした。


「そうだね。特に景色を撮りたいとか、そういうわけじゃないんだけど…。なんか、人の素敵な笑顔を見たら、無性にシャッターを切りたくなる時があるというか…。本当に幸せを感じてるときの誰かの笑顔を見ると、その姿を残せる素敵なカメラがあればなって思ってさ。」


桃花は静かに翔の話を聞いていた。


「桃花ちゃんも最初に会った時よりも、たくさん素敵な笑顔になることが増えたし…。もしいいカメラ買ったら、桃花ちゃんの写真ばっかりになっちゃうかもねー。」


翔のその言葉に、本当にそうなればいいなという想いを心に忍ばせながら、「いいですね。私ももっと翔さんが笑顔になるような料理を作れるようにがんばります!」と桃花は元気に答えた。


※読んでいただける人が増えてきたので、今後の恋愛の展開等についてコメントでご意見いただけると嬉しいです。(誰と誰をくっつけろ、どのタイミングでくっつけろなど、お色気は控えろ、いやもっとやれだとか……こんなイベントやれ、こんな料理作れ、とか……)

邪道かもしれませんが、天の声のみなさま(読者様は神様)が喜ぶ展開になるよう、参考にしたいと思います。

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