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MY song

五ツ星。

作者: caem
掲載日:2018/02/14



 合図を出す。

 目配せをするリーダー。

 ゆっくりと、だが慎重に。


 メンバーは氷上に位置する基点へと誘導するのである。

 激しく研かれ流れる球。

 モップにより導かれ、やがて中心へと辿り着いた。


 感極まる観衆は互いに手を取り合い、大歓声が沸き起こる。


 冬の祭典。

 冬季オリンピック。


 テレビを眺める者達も含め、皆は一様にして自国の勝利を褒め称えていた。

 (うつむ)く多国の嘆き声は無視されようとも、燦然たる輝きが表彰台に登る。


 ことの始まりはチームプレーの競技だった。


 いわゆる、氷上のビリヤードかゲートボールを彷彿させる。

 忙しなく擦り、中心点へと。

 放り出された球を集めて高得点を競う種目。カーリングである。


 普段ならば何となく眺め笑いに委せた番組ーードラマやバラエティ。

 またはアニメなどに費やしているであろう。


 だが思わず捻ったチャンネル(モニター)に釘付けになってしまうのであった。


 何故ならば、そこには「人生」が刻まれていたのだから。


 娯楽とは、斯くも心を奪うモノである。


 手にしたリモコンを操り、他局へと移らせる。

 目の当たりにしたのは鮮烈な光景だった。


「ダブルトリプル!」


「トゥエルブシックス!!  フォーティーン、フォーティ!!」


 …… 4回転。180度。


 華麗に宙を何度も舞い、繰り出されるは激しい回転数。

 それは最早自殺行為に等しい。

 実際、怪我は日常茶飯事なのだ。


 たった一枚の板に信頼を寄せる。

 あまりにも馬鹿馬鹿しい。

 しかしそこに全てを置いているのだ。


 放たれた矢先、ビルの四階にも匹敵すべき高さへと身を委ね。

 だが美しい放物線を描くのであった。


 結果、着地も軽やかに爽やかに歯茎から喜びが漏れる。

 騒々しい観客も息を潜め、デジタルな掲示板へと目を運び祈りを込める。


「結果が出ました!!」


 赤い字が点灯し、それは勝利を確信させていた。


「よっしゃ……!!」


 決して口には出さない。

 今までの苦労は、努力は実り、涙を流しながらのガッツポーズ。 

 若いながらも、それでも苦労に苦労を重ねてきたのだ。

 報われて当然であろう。


 しかし、つぎの相手は更なる絶技を繰り出したのであった。


 華麗なる、洗練された技の数々が宙に舞い、それは遥かに上回っていた。


 絶対なる王者の貫禄。

 かつて恋い焦がれ追い続けた背中。

 あまりにも目映(まばゆ)く、開いた口をそのままにしてしまう。


 突き付けられた現実。

 相変わらずの地位。

 幾年経とうとも変わらずの現状。


 万年二位という悔しさ。


 しかしながら、己を押し殺し相手を褒め称えるべく抱き締める。

 バレていないとは、思う。


 割れんばかりに奥歯を噛み締めていたことをーー。


 四年に一度の大会。

 そこには祭り(・・)などはない。

 全てが闘い(・・)なのである。





「今度こそは…………!!」


 内に秘めた闘志は迸り、メラメラと燃えたぎる。

 己の限界を超えよ、と ───



日本に!

金メダルを!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 冷徹な現実に触れつつも、熱いですね。 とにかく熱い。 欲を言えば金メダル欲しいですが、とにかくメダルとってほしいです。
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