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鳴き響む  作者: 水戸けい
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飽くことなく周囲を見回している汀の姿に頬を緩めた。

 宗平の失言を、さらりと丸めた孝明の博識にこっそりと耳元に顔を寄せて問う。

「孝明は、桃李紐がどのようなものかを知っていたのか」

「どの里で作られ、どのように他国に運ばれているのかもな」

 驚きに目を見張る宗平に、ふふと笑った孝明が焔の首に手を伸ばし撫でる。どうして知っているのかと問うことをさりげなく拒絶され、少しの不満と何時もの事だと納得する気持ちの両方を浮かべた宗平は、飽くことなく周囲を見回している汀の姿に頬を緩めた。

「そんなに見回して、何か面白いものでもあるのか」

「こんなに、荷物が道を行くんだな!」

 声を弾ませる汀の姿に、又七が目じりを和らげ声をかける。

「ぼうずは、旅は初めてか」

「ひと月前に、孝明と村を出たんだ」

「へぇ? 村」

 こっくりと大きく汀が頷く。

「孝明が、道中でおれに修行をつけながら旅をしているんだ」

「するってぇと、資質があると見込まれたってぇことか。すごいなぁ、ぼうず」

 へへ、と得意げに汀が笑い焔の首に抱き着く。旅芸人は旅の途中で見込みのありそうな子どもを見つければ、親にいくらか支払って身を請けて後継とすることは、珍しくない。

「おっかぁと離れて、寂しくねぇか?」

「村を守るためだからな」

 ふん、と鼻息荒く胸を逸らしてから、すぐに照れくさそうに焔の(たてがみ)をいじりだした汀の姿に、そうかそうかと又七が頷く。

「おれの息子は、ぼうずより小さいんだが大きくなったら跡を継ぐんだって、張り切ってくれていてなぁ」

 とろけそうな顔で息子の話をはじめた又七が、そこから妻の話や里の話と口をついて出てくるままに語るのを聞きながら、空を行く雲のようにのんびりと街道を行く流れに乗って歩き続けた。

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