「それすらも、私の指示だと言ったらどうする」
「宗平が孝明に用心棒として雇われているように、私も孝明を雇っている。つまり、私は宗平の間接的な雇い主と言うことになるな」
「孝明が旅に出たのは、汀の村が領主に差し出すものが用意できず、それをなんとかするためだと聞いているぞ。それまでは、汀の村の傍にある荒寺で生活をしていたって汀も言っていたぜ」
鼻をつつかれ座りなおした宗平が首をかしげるのに、面白そうにからかうように笑みを浮かべ続ける長親が首を傾ける。
「それすらも、私の指示だと言ったらどうする」
「それすらもって、荒寺に住むこともかよ」
「孝明の行動は全て、私が与える任務の範疇だということだ」
「それって、どういう――」
そこで、失礼しますと軽やかな女の声がかけられた。遊びに出る前の子どものような顔をして、入れと長親が言えば襖が開き華やかな衣装に化粧を施した若い女が、さまざまな料理と酒を手に部屋の中へと流れ込んできた。男一人に女が二人。左右におしろいの香りも甘やかな女に座られ、長親は楽しげに、汀と宗平は困惑気味に、孝明は渋面になる。
「今宵は、私のおごりだ。娘らも好きに飲み食いをして、楽しめばいい」
「おい、孝明――こりゃあ、いったいどういう状況なんだ」
「どういうもこういうも、長親様はこういうお方なんだ。頃合いを見て隣室に汀を寝かせに行く」
「隣室っても、長親の部屋だろう」
「あの方は夜通し飲むつもりだ。――宗平、酒はいけるのか」
「まあ、そこそこは」
「ならば、ぞんぶんに酌み交わしてくれ」
「何を、こそこそ話をしているんだ。囁き合うのならば、男同士ではなく両隣の娘と語らえ」
宴会場のようになってしまった部屋に並んだ食べ物に、汀が早速箸をつける。




