「どれ、腰に差してやろう」
「ああ、そうだ――汀と言ったな。こちらに来い」
手招かれ、長親の脇に座った汀に悪戯な笑みを浮かべて懐から細い布の包を取り出し、渡す。受け取った汀に開けてみろと顎で示せば、不思議そうに覆いを取った汀は中から出てきたものに顔を輝かせた。
「刀だ!」
「懐に入るほどの短いものだが、かまわないか」
「ありがとう」
こぼれんばかりに笑みを浮かべた汀が、彼の手に握りよい太さの短刀を抱きしめる。満足そうに頷いた長親が汀の頭を乱暴に撫でた。
「長親様」
咎めるような、たしなめるような孝明の声と、かまわないだろうと返した長親に、宗平は目を丸くした。
「どうした――ああ、孝明が私を長親様と呼んだのが、珍しいか。宗平は、長親と呼んでくれて構わないぞ。むろん、汀もな」
短刀がよほどにうれしいらしい汀は長親の言葉など耳に入っておらず、黒漆の鞘や藤の描かれている小ぶりの鍔と蘇芳色の紐が巻かれた柄を、ためつすがめつ恍惚とした顔で眺めている。
「どれ、腰に差してやろう」
長親が手を伸ばすと、汀は身を捩ってそれを躱し部屋の隅に移動してしまった。
「それほどに気に入られると、贈与したかいがあるというものだな」
満悦の長親の頬に、物問いたげな宗平の視線が注がれる。それに気づかぬはずは無いのに、人目を注がれることに慣れているのか長親は平然としていた。
「長親様、何を考えておられるのですか」
孝明が敬語で話しかけたことに、好奇を募らせた宗平の視線を受け止めた長親が、指先で宗平に近寄るようにと招く。坐したまま腰だけを浮かせ、床に手を着き顔を近づけた宗平の鼻を、招いた指でつついた長親が片目を細めた。




