「詮索はするなと、いう事か」
子ども扱いされたことに頬を膨らませた汀をなだめるように、小さな頭に大きな手のひらを軽く乗せた宗平は、その手を汀の背にすべらせて歩みを促し別の店へと移動した。
ふくれたままの汀を連れて、そろそろ鞘の拵えを新調してみようかと宗平が思いかけた頃に、往来の向こうから孝明が歩いてくるのが見えた。
「おうい」
長身で体躯のいい宗平は、人並みの中でもよく目立つ。すぐに気付いた孝明が、速度を上げることなく真っ直ぐにこちらに向かってくるのを、宗平は汀を肩に乗せて孝明が居るのを見つけたのだと教え見せながら待った。
「どこに行ってたんだ」
「仕事だ」
「仕事――?」
「ああ――この先の旅費を、稼がなければならないだろう」
「おれに寄越した分があれば、十分すぎると思うがな」
探るように片目を眇めた宗平に、さらりとした目を向けて孝明が言う。
「何があるか、わからないだろう」
真っ直ぐに見返してくる孝明の目を射抜くように見つめた宗平は、やがて諦めたように肩で息を吐き出して汀をおろした。
「詮索はするなと、いう事か」
「詮索をする必要も無いだろう」
「隠されれば、気にもなるさ」
「そういう宗平も、自分のことを詳しくは語らないだろう。初めて出会った日の 酒酔いのときに、ほろりとこぼした以外はな」
「聞かねぇじゃねぇか」
「聞いてもいいのか」
そこで、宗平が言葉に詰まる。ふふんと頬を持ち上げた孝明に、手を上げ肩をすくめて見せた宗平は話題を変えた。




