「商売の刀を打たないとは、どういう意味合いで――?」
そんなことを言ってくる武器商人も居たが、それには宗平は首を振った。
「刀身は気に入りの作りなんだ。柄や鞘、鍔ならば考えるがな」
そう言って愛おしそうに腰の刀を叩く姿に、武器商人たちはまぶしそうに目を細め、そこまで愛用されるとは刀鍛冶の誉れだねぇと返す。そうして、どこの刀鍛冶の作だと問うてくる武器商人の目は次の商いを見越して輝き、強く宗平にその名を口にする事を無言で願っていた。
「石和村の、清次郎ってぇ刀鍛冶だ」
「石和村――?」
はて、どこにある村なのかと武器商人らは首をかしげる。それに歯を見せて笑った宗平は、偏屈な刀鍛冶だから商売の為の刀は打たない上に、鍛冶師の村では無いから知らないだろうと答えた。
「商売の刀を打たないとは、どういう意味合いで――?」
「清次郎は、自分の気に入った技を持つ男に自分が思い描いた刀を打つのが趣味の、偏屈な男なんだよ。だから、俺の刀は清次郎が俺の技に合うと思って打った刀身なんだ。どんだけ金を積まれても、アイツは技を見て刀身の形が脳裏に浮かばなけりゃあ作らない。その名を知っているのは、武家ぐれぇのもんだろうぜ」
「成程……では、お侍さまはその方の御目がねに叶った技の持ち主、ということなのですね。――ということは、相当の腕前でいらっしゃる」
「まあな。おれには、これしか無いからよ――他はからっきしなんで、威張れることじゃあ無ぇけどな」
そんなふうに、楽しそうに宗平が武器商人や細工師らと話をしている脇で、汀は自分も刀を持ちたくなったらしく、あれこれと手を伸ばしては持ち上げようとし、その重みに歯を食いしばり重さによろめき、諦めては次の刀に手を伸ばして――を、繰り返していた。
「ぼっちゃんは、刀をお持ちでは無いのですねぇ」
「ああ、そうだな。まだ、危ねぇからな」
「おれだって、扱える」




