冷やかしとは別の小さな高揚が浮かび上がった。
軽く頷いてから、小気味よい音をさせて灰を落とした長親は、くるりと煙管の吸い口を孝明に向けた。
「どうだ」
「これが、ありますので」
湯呑を少し持ち上げて辞退した孝明に、柔らかな息を吐き吸い口を自分に戻すと、葉を詰めて火をつけ、深くゆっくりと味わう。窓の外に目を向ければ、高く青い空に、紫煙のような薄雲がかかっているのが見えた。
「あと、十三の夜の後に、領主屋敷で宴――か」
ぽつりと確認するようにつぶやいた長親に、孝明は答えなかった。
あちらこちらと首をめぐらせ目を輝かせて走る汀に目を細め、人の間を行く宗平もまた往来に目を輝かせていた。旅をしている間に、数度かこの宿場町を訪ねたこともあった宗平だが、いずれも今のように懐に余力のある状態では無かった。
孝明に渡された銀粒を使っていいものかと迷いながら、汀と共に街中を歩いていたが、旨そうな干物を焙る香りに腹の虫が鳴り、汀が食べたいとせがんだことで購入を決め、それぞれに貝の干物を焙ったものに舌つづみを打ちながら歩くうちに、これは今までの用心棒代としてもらったことにしようと、宗平は自分の中で銀粒を自由に使う理由を見つけて納得をした。そうなれば、今までの訪問では買えないものとして眺めていたものが、買えるものとして目に映ってくる。そうすると品々を見る意識も違ってきて、店先を覗くのにも冷やかしとは別の小さな高揚が浮かび上がった。
「お侍さん、どうだねこの鍔は」
ついつい目を止めてしまうのは武具刀剣を扱う店で、宗平の腰に刀があるのを見止めた店のものが、細部の作り変えや新調を促してくる。買えるだけの銭が懐にあるので、宗平はつい足を止めて店先を覗き込み、時には手を伸ばして小柄を見たり鞘の拵えを確認したり鍔を眺めたりしてしまう。
「どうせなら、刀を丸ごと買い替えてはいかがですかねぇ」




