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鳴き響む  作者: 水戸けい
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「法師は、祓いを求める者がいないかと街中をうろつくものだ」

「銭を、稼がなきゃ足りないのか?」

 目を瞬かせた孝明は、すぐに破顔し汀の背に手を乗せた。

「道中の全てを、これくらいの宿に泊まり続けても余るほどに、銭はある。心配は無い」

「そうか」

「どうして、それほどに銭がある」

 宗平が茶を飲みながら問うてくるのに、孝明は悪戯っぽく微笑んだ。

「法師は儲かると、聞いたことが無いか」

「法師じゃあ、無いんだろう」

「法師じゃないのか?」

「さあ、どうだろうな」

 宗平と汀に含みを持たせる返答をして、孝明は立ち上がった。

「何処へ行く」

「法師は、祓いを求める者がいないかと街中をうろつくものだ」

 言いながら懐に手を入れた孝明が、宗平に小さな巾着を放り投げる。受け取った宗平に、部屋を出ながら

「それで、汀と二人で大きな街に来たことを楽しめばいい」

 言い置いて襖を閉めた。汀が這いながら宗平に近づき、巾着を見る。宗平は小銭でも入っているんだろうと思いながら口を緩めて覗き込み

「なんだ、こりゃあ――」

 入っていたものが銀の粒であったことに、開けた口をしばらくふさぐことが出来なかった。


 遊ぶ小遣いをもらったと、汀は宗平の腕を揺すって外に行こうと強請った。呆然としながらも頷いた宗平は立ち上がり、これほどの銀を小銭を渡すように投げてよこした孝明の、懐を潤わせているものは何なのかと首をひねりながら宿を出た。もしも全てを今日一日で使い果たしてもいいというつもりで渡したのならば、孝明は相当に金を持っているか工面の方法を持っているということになる。共に過ごしていた間で、孝明が一人になり何処かへいくということは今までになく、とすれば銭は全て懐に持っていたという事になる。そして、その中の一部が投げてよこされたものだったとすれば、相当な額を――それこそ、駕篭を雇い安穏とした旅路を進むことも容易なほど持っているという可能性が高いと、宗平は汀に手を引かれながら考えた。

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