「わからねぇけど、気持ちは伝わるんだよ」
それに、孝明はこう答えた。
「面白い男だな――宗平は」
そこで会話は終了と、瞼を閉じて掛け布を口元まで持ち上げてしまった孝明に、重ねて問う事の出来なかった宗平は、自分なりに考え解釈をして釈然とはしないまでも納得の出来るものを見つけ出したらしい。今朝には質問を繰り返すことなく、いつも通りの――いつもよりもやや親密な笑みを浮かべて、朝の挨拶を寄越してきたのだった。
ぽくぽくと、のどかな足取りで焔が進む。時折、眠る汀が落ちはしないかと目を向ける宗平も心底眠そうで、孝明は幾度目かの提案の言葉を口にした。
「眠いのならば、焔の背に乗せてもらえ」
それに、宗平も同じ回数を繰り返している言葉で返す。
「孝明が歩いてんのに、おれだけが楽をするわけには、いかねぇだろ」
そして、なあと同意を求めるように焔の首を撫で、焔がぶふんと鼻を鳴らした。
「ほら、焔もそう言ってるだろうが」
「馬の言葉が、わかるのか」
「わからねぇけど、気持ちは伝わるんだよ」
なあと再び宗平が語りかければ、そうだと言うように焔がぶふんと再度、鼻を鳴らす。
「ほらな」
得意げな宗平に、軽く肩をすくめてみせた孝明は何も言わずに空を見上げた。高い空に、大きな鳥が飛んでいる。手庇をして同じように見上げた宗平が、見上げる目を街道の向こうに向けて、大きな曲がり角の先を額に当てていた手で指し示す。
「あの角を曲がれば、目の前が宿場町だ。ここは、いろんな街への分岐点になるし、でっかい川も流れていてよその国からの品物も入ってくる。おまけに領主の居る中央に行くには、必ず通らなきゃならねぇ場所だからな。かなり、にぎわってるぜ」
「そうか」
「びっくりすんなよ? 今までの宿場町とは、規模が違うからな」
「安価な宿が、取れればいいんだがな」




