「歩きづらいし、重いから離せ」
「まぁ、気にならなかったと言えば、嘘になるな」
「そうか、そうか――なんだ。そういうことなら、早く言えばいいだろう」
くすぐったそうにしている宗平が、孝明の肩に乗せていた手で肩を組んできた。
「なんだ――」
ひとりでニヤつく宗平に、意味が分からないと孝明が顔中で示す。それに、嬉しげな顔を寄せた宗平が顔のままの声音で言った。
「さみしかったんだろう」
「はぁ?」
珍しく、頓狂な声を上げた孝明に驚きながらも笑みを崩さぬ宗平は、孝明は寂しがり屋だったんだなぁと言いだした。
「何故、そうなる」
「一人、距離を置かれているようで寂しかったんだろう? 何かのっぴきならない理由があって、身分を隠して旅をしているのかと思って多少なりと礼儀を持って接していたんだが、そうかそうか――そういうことならば、遠慮せずに対等に口をきかせてもらうぞ」
上機嫌な宗平を見ながら、こっそりと息を吐いた孝明は、まぁいいかと思いながら肩に乗った手を払う。そうすれば宗平が照れるなと言って再び肩を組んできた。
「歩きづらいし、重いから離せ」
「いいじゃねぇか、少しぐらいの歩きづらさはよ」
振り向いた汀には二人がとても楽しそうに見えて、仲間外れにされているような気持ちになった。寂しさが湧き上がり、立ち止まって怒ったふうに声を上げる。
「早く、村に入るぞ!」
「おう」
陽気に応えた宗平に顔をそむけ、孝明の横に来た汀は手綱に手を伸ばし掴んだ。そうしてほっとしたように寂しさをごまかすために作っていた怒り顔をゆるめた姿に、孝明も宗平も目元を和らげ、無尽の村へと入って行った。
村の中の適当な家に勝手に上がり込み、簡単に掃除をした一行は、家の裏に焔を繋ぎ、囲炉裏に火を熾して残されていた鍋を使い湯を湧かし、干し肉と米を入れた。そうして、山菜を採ってくるから火の番を頼むと孝明が腰を上げた。
一人で行くよりも二人のほうが良いんじゃないかと宗平も立ち上がり、汀が一人では心もとないだろうと孝明が言えば、宗平は男子たるもの容易に心細がったりするものじゃあないと、汀に笑みを向ける。




