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鳴き響む  作者: 水戸けい
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「人のいない村には、物の怪がいるかもしれないぞ」

「いや――」

「じゃあ、どうしてそういう顔をする」

 ううむ、と言い淀み鼻の頭を掻いた宗平は、あの村は無人だぞと言った。

「行っても、誰も居ない。おそらく、村中で示し合わせて、どこかに逃げてしまったんだろうな。襲われたような形跡も無かったから、な」

「立ち寄ったことが、あるのか」

「三月ほど前だ。その時は、逃げたすぐあとだったのか村も田畑もきれいだったが、人の気配が少しも無くてな。牛なども連れて出たんだろう。家畜小屋には鶏が数羽いたのみで、繋がれていたらしい牛や馬の姿は、影も形も見えなかった」

 ふうむ、と宗平の言葉を受け止めた孝明は焔の背に居る汀を見上げた。

「汀――久しぶりに、屋根のある所で休みたくはないか」

「おれはどっちでもいいが、焔をきちんと休ませてやりたいな」

 ぽんぽんと馬首を叩く汀は、焔は野営の折には寝ずの番をしているものと、どうしてだか思い込んでいるらしい。野営の後には必ず、一番疲れているのは焔なのに、と一言焔に詫びを入れてから孝明に抱き上げられ、乗せられている。

「人のいない村には、物の怪がいるかもしれないぞ」

 声音を震わせ恐ろしげな音にして、にたりと笑う宗平に汀がぷくりと頬を膨らませる。

「おれは、物の怪など怖く無い」

「本当にそうか――? 汀は、物の怪に会ったことがあるのか」

「無い……けど、でも、そのようなもの、恐ろしくなんか無いぞ」

「ふうん? おれは、恐ろしいがな。あの姿を見たときには、総毛だって身動きが出来なくなってしまったぞ」

 おお、と身を大げさに震わせて両手で自分を抱き締めてみせる宗平に、焔の上から汀が身を乗り出した。

「――――宗平は、物の怪と会うたことが、あるのか」

「あるとも。旅をつづけ、山の中に眠ることも多かったからな。山の中で物の怪の宿に泊まったこともある」

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