「それだけの期待を、寄せられていると言うことだな。孝明は」
「気を失っても、いかんということか」
「そういうことだ。常に気を張っていなければ、安定をさせられない」
「それは、疲れそうだな」
「けっこう、疲れるな」
ぐるんぐるんとヒョウタンを回す汀に、二人の大人が目を向ける。
「汀。あまりそうしていると、どっと疲れが出るぞ」
「もっと、早く自在に操れるようになりたい」
「そうか」
強いて止めることもせず、楽しげにしている汀から草を食む焔へと目を移した孝明に、宗平が声をかけた。
「あの馬は、いい尻をしているな」
「なんだ。人より馬のほうが好みか」
「馬鹿を言え。某とて武人の端くれ。良い馬を見分ける目は持っているつもりだ。そういうつもりで、言ったんだ」
「わかっているさ、宗平。汀の村で、馬を一頭欲しいと言ったら、焔を用意されたんだ。何処からどうやって手に入れたのかは知らないが、苦労をしただろうな」
「それだけの期待を、寄せられていると言うことだな。孝明は」
からかう声の宗平に、大仰にため息をついて見せた孝明が、うそぶいてみせる。
「これほどの重圧、耐えられそうも無い。いっそ、知らぬふりをして別の国へと逃れてしまおうかとさえ、思うぞ」
ちら、と目を見合わせて似たような悪童の笑みを浮かべあう二人に、汀があくびをしながら「おやすみなさい」と言ってくる。それに答え、いつの間にか汀を挟んで眠ることが常となった二人も身を横たえ、宵闇よりもまだ暗く、森の息吹のように暖かな暗闇へと意識を沈めていった。
街道の途中、ぽつんと見えた農村らしい姿に、あそこに立ち寄ろうかと孝明が声をかけると、宗平は苦い顔をした。
「なんだ――寄りたくない理由でもあるのか」




