荷物の中に長剣があるのを見て、口を開く。
袖に腕を通した宗平が、人懐こい笑みを孝明に見せる。連れだって二人が部屋に戻るころには、汀も目を覚まして身を起し、ぼんやりとしていた。
「汀、顔を洗ってこい」
こく、と首を縦に動かした汀が目を擦りながら立ち上がり、ふらふらと廊下に出ていく。
「大丈夫なのか」
「大丈夫だ」
心配げな顔を廊下に向ける宗平に、さらりと孝明は答えながら少ない荷物を整え始める。それを見ながら宗平は腕を組み、胡坐をかいて壁に背をもたせ掛けた。荷物の中に長剣があるのを見て、口を開く。
「それは、貴殿が使うのか」
「汀では、持つだけでも手一杯だろう」
「貴殿でも、同じように思うがな」
侮蔑するわけでも、揶揄するわけでもなく正直な感想として口に上せる宗平に、ゆっくりと孝明が体を向ける。
「ためして、見せようか」
両手で剣を捧げるように持ち上げると、宗平が鼻で笑った。口を開きかけたところに、失礼いたしますという声がかかり、朝餉を運んできた女と共に汀が戻って来た。
「おはよう」
顔を洗ってすっきりしたらしい汀が、挨拶をする。それに孝明と宗平が答えて、朝食がはじまった。そして、その途中
「そうだ。汀――宗平が、旅の仲間に加わることになったから、よろしく頼むぞ」
「えっ」
汀と宗平が、質の違う同じ音を発する。喜びを浮かべて汀が宗平を見上げ、宗平は困惑を浮かべて孝明を見た。
「行くあてのない旅ならば、用心棒として雇われてみたら、どうだ」
まるで他人が雇い主であるように言う孝明に、困惑と共に呆れも浮かばせた宗平へ、にやりとしてみせる。
「断る理由は、かけらも無いだろう」
むう、と言葉に詰まった宗平は期待をいっぱいに浮かべている汀の様子に、頬を掻きながら不承不承という態で言った。
「まあ、用心棒として雇われるのも、また面白い旅になるだろうな」
わあっと喜ぶ汀に、宗平が笑みかける。そうしてひとり仲間を増やした一行は、宿の客が全て出立し終えてから、のんびりと渡しの舟に乗って対岸へと移動した。




