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鳴き響む  作者: 水戸けい
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いつしか男は村の中心にいるように、なっていった。

 男は、(がく)をたしなむこともあった。あるとき、子どもらと遊んでいる時に小さな子どもが大きな子どもに着いてゆくことが出来ず、泣きべそをかいてしまったことがあった。困ったように頭を掻いた男は、手近な葉を千切り、唇に押し当てて高く澄んだ音をさせてみせた。半べその子どもは涙をためた目を真ん丸にして、男の唇に――そこに当てられている葉に目を向け、両手を広げて欲しがった。いたずらっぽく片目を閉じた男は、もう一枚葉を千切り、子どもに渡した。頬をぷくりと膨らませ、懸命に子どもが吹いてみるものの、唇の隙間から漏れ出る放屁のような音しか鳴らず、首をかしげる。その横にしゃがみ、身振りで子どもに教える男の周りに、先に行って泥だらけになった子どもたちが戻って来た。男の身振りどおりに何度も葉に息を吹き付ける子どもが、ピッ――とわずかな間だけ音を出せたことに興奮し飛び跳ねれば、他の子どもたちも我も我もと男に群がり、その日は草笛の講習会のようになった。

 そうして草笛の講習会がはじまれば、ほとんどが男児であった男の周りに集まる子どもに女児も混ざり増え、男の周囲は賑やかになった。子どもたちが男と親しげにすればするほど、家に戻り目を輝かせて昼間の出来事を語れば語るほど、その母親は男に親愛を浮かべることになった。何かを作れば鍋を持ち、あるいは桶を持って男のもとへおすそ分けだと言って、食べ物を届けるようになった。代わりに、男はこぼれるほどの笑みを女たちに返し、悦びを与えた。そうすれば年寄りらも男のもとへ通うようになり、男は老人の体をさすり、労わりながら子どもと遊び、女たちの作るものに舌つづみを打って過ごすようになった。

 女たちが男のことを、自分らの子どものように語りだせば、山の中で出会い収穫を分けあったり挨拶をする程度だった男たちも、女房子どもまたは年寄が世話になっていると、付かず離れずの距離を縮めだした。

 いつしか男は村の中心にいるように、なっていった。身軽さと力の強さから、家の修繕や荷を運ぶことを頼まれるようになり、男はいつも笑みを湛えて頷き全てを受けた。けれど男は、一晩泊まって行けばいいという申し出は硬く断り、礼だと酒を勧められれば、それもまた硬く断った。けれど酒宴の席が嫌いなわけでは無く、酒を飲み騒ぐ者たちの中にやわらかな顔をして座り、乞われるままに草笛を響かせて場を盛り上げた。そうして男は宴もたけなわなころ、誰にも気づかれぬまま場から姿を消すことが常だった。男は決して、丑三つ時にかかるころまで、村に留まることはしなかった。

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