「こんな立派なの、はじめてみた!」
汀が呟き、孝明は被せていた手で適当なものを一つつまみ、目の高さに持ち上げて頷く。
「本当に、良いものを貰ったな。失くさないように、そのヒョウタンの中に入れておこう」
汀の首に下がっているヒョウタンを取り、孝明は丁寧に石を抓んではヒョウタンの口に入れていく。それは何かの儀式のようで、汀も、職人も、後から戻って来た喜助も、ヒョウタンの口に全ての石が消えてしまうまで無言で見つめ続けた。
「ほら、これでいい」
しっかりとヒョウタンの口に栓をはめた孝明の声で、三人はぼうっとしていた意識を戻した。催眠にでもかかっていたような心地から覚めた職人は、ヒョウタンの竜に目を止め、手を伸ばした。
「これ、じじさまが作ったんだろう。すごく強そうで、目がきらきらしてて、すごいな」
作った本人に対して、なぜか得意げな顔をして見せる汀に、職人が複雑な笑みを浮かべる。
「ぼうずは、これが気に入ったのか」
力強く、汀が頷く。
「こんな立派なの、はじめてみた!」
「そうか、そうか――」
竜の根付に触れていた手を汀の頭に乗せ、職人は何度も何度も頷く。その様子に、喜助が面白くなさそうに鼻を鳴らし、腕を組んだ。
「まったく――これを買い取らないで捨てようとするなんざ、信じられねぇぜ。こんなに見事な細工なのによォ」
なぁ、と同意を求めるように汀に顔を向けた喜助の横っ面を、職人が思い切りたたいた。パァンと小気味よい乾いた音がして、汀は首を竦め喜助は目を見開く。
「何すん――」
怒鳴りかけた喜助が、職人の顔を見て言葉を止めた。職人の顔は怒りと悔しさで真っ赤に染まり、それを鎮めようとしているのか、肩は荒く上下している。くるりと背を向けた職人は、どっかと腰を下ろして腕を組んだ。何者の言葉も受け付けぬと、その背中が語っている。自分の失言に気付いた喜助の肩を叩き、汀の頭に手を乗せて、孝明が顎で外へ行こうと二人を誘う。ちらりと職人の背中を見てから、孝明に促されるままに二人は表に出た。




