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鳴き響む  作者: 水戸けい
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ずっと意識をし続けていろという事だ

「汀が、その資質を強く持っていると思ったから、おれは汀を連れて行きたいと言ったんだ」

 ぱぁ、と嬉しげに顔を輝かせたかと思うと、くすぐったそうに照れくさそうに肩をすくめた汀は、鼻の下まで湯の中に沈んだ。ぷくぷくと、彼の吐く息が泡となって浮かび上がる。

「訓練を、明日から少しずつ始めてみようか」

 顔の半分を湯に沈めたまま、汀は嬉しそうに肩をすくめた。


 翌朝、汀はヒョウタンを買い与えられた。その中に半分ほどの水が入っている。ちゃぷちゃぷと揺らしてみせた孝明は、この水の音に耳を傾け続けているようにと言った。

「ずっと耳を当てていればいいの?」

「いや――体を動かせば水も動くだろう。それを感じるように、ずっと意識をし続けていろという事だ」

 首をかしげながらもヒョウタンを受け取った汀は、それを首から下げて軽く叩いた。ちゃぷん、と水が動くのが伝わる。宿の者が焔を厩から連れてきて、孝明は礼を言って手綱を受けとり、その背に荷物と汀を乗せた。

「汀は、気の流れより水の流れを捉えるほうが、性に合うだろうからな」

 孝明のつぶやきに首をかしげながら、焔の背に揺られて動く水を感じるため、汀はヒョウタンを抱きしめる。ゆうらりゆらりと進む二人の上を、高く細い声で長い鳴き声を上げながら、大きな鳥が行き過ぎた。

 のんびりゆったりと街の中を進み、次の街に出るまえに必要なものを揃えようと商店の並ぶ通りを進めば、汀の意識がヒョウタンから店先に並ぶ品々へと移る。馬上できょろきょろと首を動かす汀に、声をかけた。

「歩いて、あちらこちらを覗いていくか」

「うん」

 わくわくとした気色で両手を伸ばしてくる汀を抱き止め、下す。降り立った汀は、さっそく手近な店先を覗き込み、目を輝かせた。

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