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鳴き響む  作者: 水戸けい
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「異形になり空でも飛んだか?」

 向かい合わせに――自然と長親を上座にして座れば、ほどなくして茶と茶菓子が運ばれてきた。ほっこりとした蒸まんじゅうに、汀が喜色を浮かべる。

「孝明は、そう説明をしただけでここを去ったのか――? 何か、してみせはしなかったか」

 三人のみになってから、長親が口を開く。その顔を、目を、意図を窺うように見返しながら宗平は慎重に口を開いた。

「力を、少しだけ示して見せた」

「何をしていった」

 警戒を解かず、言うか言うまいかを悩む宗平に長親が顎を持ち上げる。

「異形になり空でも飛んだか?」

「そんなことが、出来るわけがねぇだろう」

即座に打ち消した宗平が、にやつく長親の顔によもやと疑念を浮かべる。

「――異形に、なれるのか」

「人では無いと、言っただろう」

 面白そうな長親が、孝明が何を見せて去ったのかを再び問うと、宗平は正直に苔に花を咲かせたことと、風を起こし姿を消したことを告げた。

「それを見ても、宗平は孝明を人と言えるのか。奇怪だと嫌悪をしないのか」

「奇怪だとは思うけどよ――そうなったら、汀だってそうだろうが。おれは汀を嫌いじゃねぇし、そんなことで孝明を嫌悪したりしねぇよ」

「何故、受け入れられる」

「何故も何も……二か月ぐれぇの付き合いだけどよ、一緒に旅して来たんだ。アイツがどういう奴かぐれぇは、わかるさ。アイツは、間違いなく人だよ。アイツみてぇに妙な力を持っちゃあいねぇが、本当に人なのかと疑っちまうような奴は、他にいくらでもいるしな」

 さらりと言ってのけた宗平の顔に、何の含みも無いことを確認した長親は、満足そうに頷いた。

「よい、男だな――宗平は」

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