2:ブラック×ブラックは俺だよほんと。
「ただいま〜。かぁさんいる〜?」おうちの戸を開けご挨拶。
ホントこの家にはもったいねぇ子供だ。俺の家は結構田舎にある。
まぁどうせあの親父じゃそんくらいの土地しか買えないだろう。
そのくせ自分は殆どその家にいねぇし。今頃はどこほっついてんだか。
「よほぉ〜!しぃた〜!」
お、ここほっついてた。
「椎汰、おかえり〜。そこのはほっといてこっちきな〜!」
「ん〜?何、なんかあんの?」
「おほ〜ぃ、2人とも無視すんなよほぉ〜。」
いちいち”ほ”いれるな、この酔っ払い。
「ちょっと椎汰、そこのコンビニでアイス買って来てくんない?お金渡すから。」
「は〜?自分で行けよ〜。」
「お母さん、この前椎汰が買ってきたヤツがたべたいのよ〜。」
「わがまますぎ。てか、覚えとけよ。」
「ほら、あの黒くって・・・。」
「人の話聞けよ!大体そんなんじゃ分かんねって。」
「っ!つぶつぶ!つぶつぶ入ってたわ!あと・・・磯の香り?」
あぁ。あれだ。
「”ブラック×ブラック*イカ墨と胡麻のハーモニー*”だろ?」
「そうっ!それ、それよぉ〜!」
って結局俺は買いに行っちゃうんだよなぁ・・・。
はぁ・・・。親父がもうちょっとまともに働けばな〜。
だいたいコレふつ〜の中三男子の考えることじゃねぇよなぁ・・・。
親父は自称パチプロだ。てかほんとプロなのか?ただ単にパチンコ好き親父にしかみえねぇ。
母さんは一応奥様雑誌の編集者だ。あの人のおかげでこの家は何とかなっている。
ただ、会社で結構エライとこにいるからか、わがまま。すっげぇわがまま。
今もアイス買わされてるし。なんだかんだいって買っちゃったけど。
買ってもう家帰るトコだけど。
「おほぉ!し〜たぁ!とーさんいまから稼いでくっからよほぅ!まってろほぉ!」
帰路にてほほほ妖怪に遭遇。
無視。
無事帰宅。
「買ってきたよ〜。一本くれよな〜。」
「や〜!ありがとぉ!た〜べよっと!」
太るぜ、って言うのはギリで飲み込んだ。よくそれでダイエット特集記事とか書くよ。
かぁさんはのんきに2本目に手をのばそうとしてる。
さぁ俺も食うかな〜っと袋を破いたとき。
「椎汰〜、」
「ん?」
「これあきた。あといらないし、あげる。」
ほんとこの家にはまともな大人がいねぇ。
俺はやけになって目の前の黒い物体にかぶりついた。