03 黒髪の少年は異界の街へ行く
Sideカイト
俺は3日かけ、近くの街”ナギルの街”へ着ていた。
ナギルの街はそこそこでかい。
まぁ、そこそこだ。
日本で言うところの地方の市街地みたいな感じか。
小さくもなく、大きすぎるわけでもなく。
今は街を覆う大きな城壁にある門の前で待ちぼうけ。
どうやら商人とかの出入りが多いらしいので、その分街へ入るのが遅くなりそうだ。
門も北門と南門しかなく、なんとも言えない・・・交通不便だ。
その間はセシリア達と会話をしながら過ごしていた。
この3日で得た情報は。
1,あの危険性物達は魔物ということ
2,あの森はこの大陸で1,2を争う危険地帯ということ。
3,魔物と戦って、その魔物を売って生活の贄を得る、冒険者と言う職があるということ。
4,ここはノルダム大陸人属領”ヒュマノ王国”の領地ということ。
5,ノルダムの主神の名前は”ノア”ということ。
あのショタ神ノアっていうんだって。
初めて知ったよ・・・。
「あ、あの・・・、街で魔物の素材を売ったらど、どうするのですか?」
と茶髪ちゃん。
名前はアカーシャというらしい。
最初は元気一杯の活発系女子だと思ったのだが、しおらしくてなかなか可愛いというのが印象だ。
「ねぇねぇ、もし暇ならさ、私達とパーティ組まない?カイトさんとだったら私達大歓迎だよ?」
と赤髪ちゃん。
名前はリリー。
自称エロ担当らしい。
自称というのは・・・その、彼女の体は歳相応と言うか・・・はっきり言って男性を魅了させるほど成長はしていない。
それでいて腕とか組んでくるのでどう対応したもんか・・・。
かといって全く魅力がないというわけじゃない。
自己主張の弱い柔らかな胸が、さっきから当たりっぱなしだ。
・・・なぜ胸当てを外して腕を組む?
まぁ、目的は明らかだが。
「そ、そうだな。それもいいけど、しばらくはこの街を拠点に、ソロで色々以来を受けてみるよ。別に君たちが悪いってわけではないんだけど・・・。」
申し出は嬉しいのだが、俺は街を一人でゆっくりと探索したいのだ。
・・・それと彼女達には悪いが、まだ信用しているわけじゃない。
もう少し様子を見て判断させてもらおう。
「そっかー、残念。でもいつでも私たちはオーケーだよ!」
「あぁ、困ったことがあったら頼らせてもらうよ。」
そんな当たり障りない会話をしていると、とうとう俺達の出番が来たようだ。
「身分証を提示してくれ。身分証がないものは銀貨一枚徴収する。」
門番らしい兵士が馬車の横まで来て言う。
やばい、どうしよう?
俺は身分証も貨幣も持っていない。
「セシリア、俺は身分証も銀貨も持っていないんだけど・・・どうしよう?」
困った時のセシリアだ。
「そうですね・・・ここは私達が出しておきますので、ギルドで素材を売った際に返していただければ結構です。」
「すまない、恩に着る。」
ここはセシリアたちが肩代わりしてくれた。
女の子からお金を借りるのは忍びないのだが・・・。
ここは仕方がない。
あとで飯でも奢ろう。
「うむ、確かに確認した。ようこそナギルの街へ。」
兵士の声を聞きながら門をくぐる。
おぉ、中世ヨーロッパみたいな建物が多いな。
基本レンガ造り、店や宿はなかなかに繁盛しているようだ。
俺たちは門を入ってすぐの広場に馬車をおいた。
「セシリア殿、カイト殿、この度は私共の馬車をお守りくださいありがとうございました。何か入用の際は”アラド商店”をご利用ください。それでは。」
深く腰をおって礼をした商人達は馬車を率いて自分の店へ帰って行ったようだ。
ちなみにしゃべっていた商人はアラドさんだ。
他の二人は社員だそうだ。
彼は珍しく多種多様な商品を扱うので、その道のでは知らない人は居ないらしい。
武器であったり防具であったり、奴隷であったり。
そう奴隷である。
もう一度言う、男の夢奴隷である。
異世界転生物にネタとして多くを占める奴隷。
それがこの世界にもあるらしい。
まぁ、法律で衣食住を主人が用意する等が決まっており、待遇は良いらしい。
・・・この街になれたら買ってもいいよね?
「それでは私たちはギルドへ行きますが、カイト様はいかがなされますか?」
セシリアが聞いてくる。
「あ、あぁ、俺も行く。」
俺たち5人は街道を歩きギルドへと向かった。
ギルドは木造3階建て、結構豪華だな。
玄関口の上にはデカデカと看板が取り付けられていた。
”冒険者ギルドナギル支店”
あ、読める。
日本語ではないのだが読める。
これも言語理解の恩恵だな。
・・・なんか生活面では言語理解しか役に立ってないな。
まぁ、戦闘技術しか磨いて来なかったからな。
これからは生活面でも役立つスキルを育てないとな。
「それでは入りましょうか。」
セシリアはギルドを物珍しく見る俺を微笑ましそうに見ていた。
・・・ちょっと恥ずい。
「あぁ、入ろうか。」
ギルドの中は小奇麗だった。
カウンターが5つあり、各カウンターには一人づつ常駐しているみたいだ。
カウンター前スペースはちょっとした喫茶店のようになっている。
テーブルを囲んで騒いでいる人も居たり、とおもえば暗い雰囲気で佇んでいる人たちも居たり・・・。
たぶん狩りが上手く行かなかったのだろう。
いつまでも見ているわけには行かないので、俺は入り口に一番近いお姉さんに話しかけた。
「すいません、素材の買い取りと冒険者登録をお願いしたいのですが?」
目上の方っぽいからな、敬語で喋らないと。
・・・あぁ、ショタ神は別ね。
「はい、かしこまりました。」
ちょっと意外そうな顔をしたのだが、なぜだろう?
やっぱり冒険者には荒くれ者が多いから、敬語で話しかけてくる人は少ないのだろうか?
だがまぁ、すぐに顔を営業スマイルに直し対応してくれた。
「それではこの紙に必要事項を記入してください。」
そう言って俺に羽ペンとインク、紙を渡してきた。
「カイト様、代筆が必要でしょうか?」
セシリアが俺に聞いてくる。
旅人だと話していたから、この国の文字が書けないとでも思っているのだろうか?
・・・そういえば言語はこのノルダムで統一されているのだろうか?
今のセシリアの発言だったら判断しかねるな・・・。
まぁそういうのは後々だな。
「ありがとうセシリア。でも大丈夫だ、文字はかける。先に素材を売っててくれないか?」
「作用でございますか。わかりました、私たちは素材を売ってきましょう。」
そう行ってセシリア達は隣のカウンターに行った。
「・・・これは全部正直に書かないといけませんか?」
紙には名前、年齢、職業、所有スキルを書く欄がある。
さすがに俺のスキルをすべてのせるのは無理だし、自分の手の内をわざわざ晒す必要もないだろう。
「いいえ、全て書く必要はありません。自分が表示してもいいと判断したものをご記入ください。」
そういうので紙には
―――――――――――――――――――――――――――
名前:カイト=クロバ
年齢:18
職業:魔法剣士
スキル:剣術【Lv2】 風魔法【Lv2】 光魔法【Lv2】
―――――――――――――――――――――――――――
こう書いておいた。
ちなみに、魔法剣士という職業があるのは確認済み。
ギルド内にいる人を鑑定したら居たのだ。
「はい、ではこのカードに血を垂らしてください。」
そう言ってお姉さんは、クレジットカード大の金属のカードを、俺の目の前に置いた。
「わかりました。」
俺は腰に差していた剥ぎ取り用のナイフで親指の先を切った。
ちなみにこのナイフも白いドラゴンもどきの爪で作った。
「・・・はい、では登録は以上です。しばしここでお待ちください。」
そう言われたので、俺は入り口近くにあったベンチに腰を下ろす。
いや、下ろそうとしたが正解だ。
「なぁ、俺達と遊ばないかい?おじょうちゃん達」
人相の悪い3人の冒険者に、セシリアたちが絡まれてる。
・・・はぁ、早くも面倒事か。
とりあえず、俺はセシリア達を助けるために男たちに近づいた。
Sideミレイ
今日は不思議な人にあったわ。
いつもの様に私はギルドカウンターで受付嬢の仕事をしていたの。
そうしたら、
「すいません、素材の買い取りと冒険者登録をお願いしたいのですが。」
そこには見たことも無いような漆黒の髪と瞳をした男の人が立っていたのよ。
それに物腰も柔らかそうだし、笑顔で話しかけてくれた。
冒険者の男って基本受付嬢を見下したり、いやらしい目で見てくのだけど・・・。
この人は違った。
真っ直ぐ私の目を見て敬語を使ったのよ?
普通貴族が目上の人に対して使う言葉遣いを私に対して。
もうビックリしちゃったわ。
多分私がびっくりしたこと分かったのね。
彼が不思議そうな顔をしたの。
・・・貴族なのかしら?
そんな事詮索している場合じゃないわね。
私は彼に登録用の書類を渡した。
すると彼は、
「・・・これは全部正直に書かないといけませんか?」
と言ったの。
・・・この人中々キレるわね。
大抵はバカ正直に書く奴がほとんどなのだけれど。
彼はちゃんと物事を考えられる人なのね。
国営のギルドだからって、みすみす自分の手の内を晒すのは愚か者の行為よ。
ちゃんとそれがわかっていって言うことは・・・。
これは期待の新人かな?
カイト=クロバ。
彼が渡してきた書類にはそう書いてあった。
・・・そのまえにシスターが彼に話しかけてたわね。
彼女さんかしら?
・・・残念。
って何を考えているの私!?
ギルドカードに血を垂らしてもらって、直ぐに裏へ引っ込んだわ。
・・・あ〜危なかった。
危うく表情に出るところだったわ。
でも彼・・・いいなぁ。
そんなことを思っていると、カウンターの方から物音が聞こえてきたの。
・・・何事かしら?