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黒神は異世界で異種族ハーレムを作る  作者: kaito
第1章 やっぱ異世界といったらケモ耳のおんにゃの娘だよね!!
21/23

18 黒神の少年は試合に勝利する

Sideカイト


 まずは様子見だな。

 公爵の護衛っていうもんだから、多分バリバリの騎士タイプなんだろう。

 見た目からしてそうだし。

 ・・・構えは、盾を顔の辺りまで上げて、切っ先を下に向けて大剣を構えている。

 剣は右手に持っているから、左からの攻撃を守るために盾を顔の辺りまで上げているのかな?

 それだと胴体がガラ空きじゃないのかな?

 いや、魔力強化を使える人だ、なにかあるんだろう。

 さて、魔法ありの対人戦闘の経験が薄い俺が考えつくことはこのくらいかな。

 右足を下げて、腰を低くしているということは突進してくるかな?

 どうなんだろう?


「そちらから来ないのでしたら、こちらから行きますぞ。」


 そう言ってジシムさんが俺に突っ込んできた。

 ただ、速度が半端ない。

 多分魔力を足に集めてブーストしたのだろう。

 互いの開始地点は結構離れていた。

 5〜6mぐらいはあったと思う。

 それを秒を数えない内にこっちに来たのだ。

 ・・・いきなり全開ですか?

 普通の人だったら死んでるよ?

 ジシムさんは剣先が霞むほどの速度で突きを放ってきた。

 よくもまぁ大剣でそこまでの速度を出すもんだ。

 俺は体を半身にしてかわそうとした。

 ・・・だが、剣自体に魔力を感じた。

 属性は風。

 風属性をまとわせているということは突きの速度を上げたのか?

 いや、少し様子が違う。

 どちらかというと初級魔法の”ウィンドカッター”みたいな・・・。

 そう思った俺は反射的に大きくジシムさんの横を抜けるように回避した。

 

「ほぉ・・・。この剣の秘密に気づきましたか。」


 ジシムさんはとっても嬉しそうに目を細めた。

 ・・・いや、筋肉隆々の人のそんな嬉しそうな顔を見てもこちとら全然良い気分ではないですよ?


「ジシムさんは風魔法が得意なのですね?・・・それと、今のは俺じゃなかったら死んでましたよ?」


 ホントだ。

 風魔法で刃のところを伸ばしていたのだ。

 不可視の剣ってところかな?

 ・・・インビジブル○アじゃないけど。


「いえいえ、この程度で死ぬほどの器ではないとわかっていましたので、小手調べということでやらせていただきました。」


 器とかナニソレオイシイノ?

 ・・・そんなこと考えてる場合じゃないな。


「それじゃあこっちからも行きますかな?」


 そう言って俺は刀を上げ、上段に構える。

 この構えは火の構えとも言い、特に斬り下ろしに特化した攻撃的な構えだ。

 まぁ、その分胴体がガラ空きになると言う防御無視だったりもするが、刀のリーチを最も活かせる構えでもある。

 ・・・と玄さんに教えてもらった。

 

 玄さんは礼儀作法の他に戦闘技術まで俺に教えてくれたのだ。

 ・・・現代日本になぜ殺人剣が必要だったのかは分からないが。

 おかげでほぼどんな武器でも扱えるようにはなっている。


 俺はジシムさんのように足を強化して一気に突進する。

 それをただ許すジシムさんじゃないだろう。

 現に盾を若干上向きに上げ、剣もすぐに対応できるように構えている。

 ところがどっこい!


「な、なに!?」


 ジシムさんが驚く。

 そうだろうよ。

 

 さて、ここで陽炎という気象現象について解説しよう。

 陽炎というのは、局所的に密度の異なる大気が混ざり合うことで光が屈折して起きる現象だ。

 要は暖かい空気と冷たい空気が雑ざりあって、光が曲がってしまって、揺れて見れるということだ。

 なぜこんな話をしたかというと、実際俺が今ジシムさんを驚かしたのはこれを使っている。


 俺は刀を熱した。

 そりゃもうこれでもかってぐらいに。

 それで刀の周りの空気を冷たくしてやった。

 それで刀の周りに陽炎が発生した。

 これによって刀が揺れているようにジシムさんには見えるだろう。

 まぁ、攻撃的には全然なんともない小細工なのだが、これは対人戦だ。

 人には感情というものがある。

 これをいかに動揺させて隙を作るかというのも対人戦の重要なものだと俺は思っている。

 ということで、動揺を誘うために俺は陽炎をやったのだが・・・。

 どうやら成功のようだな。

 俺は素早く接近し上段から刀を振り下ろした・・・。

 と思わせて、強化した脚力を活かしてジシムさんの背後に回り込み刀を首筋に当てる。

 もちろん冷却済みだ。


「降参しますか?」


 俺はジシムさんに尋ねる。


「えぇ、私の負けですな。」


 ジシムさんは良い笑顔で俺に敗北の宣言をする。

 ・・・だからいい年こいたおっさんの笑顔なんぞ嬉しくないって。


「こんな面白い戦い方をする御仁と闘うことが出来て、私はとても満足でございます。この度はぶしつけなお願いを聞いていただきありがとうございます。」


 そう言ってジシムさんは俺に握手を求めてきた。

 俺はその手を握り返しながらジシムさんに話しかける。


「今回の手合わせはダグラスさんが言い出したんですか?」


「んっ!?」


 ジシムさんは目を見開いて驚いた。

 ・・・だと思ったよ。

 途中で二階からダグラスさんがこっちを見ているの気づいていたし。

 あんまり手の内晒す訳にはいかないから、今回はちょっとした小細工ですぐに勝たせていただいたけどね。


「いやはや・・・。バレていましたか。」


 ジシムさんが申し訳なさそうに告白してくる。


「まぁ、いきなり客に声をかけてくる時点で薄々勘付いて居ましたけど、まぁ対人戦の良い訓練になると思いましてね。断らなかったんです。」


 俺はそうジシムさんに答える。


「そうだったんですか。・・・実は冒険者というのは色々問題を起こす輩が多いものですから、ダグラス様から試してこいと言われまして。」


 あぁ、そういうことですか。

 確かにギルドにいる奴らはたいていは頭の悪そうなバカが多いからな・・・。

 まぁ、そういう奴らは人情に厚いとか、良いやつもいるけどな。

 領主ともなれば色々あるんだろなそういうの。


「カイト殿はお強いながらも頭のキレる方とお見受けいたしましたので、ダグラス様もそうご報告させていただきます。それに・・・、女性を大切にする人は悪い人は居ませんからな。」


 ・・・う、うん。


「な、なぜ俺が女性を大切にする人だと・・・。」


「彼女を見てればわかりますよ。奴隷でありながら上質な服を来て、主人であるあなたの側にいるときにはとびきり笑顔になりますからな。それに、あれは女の顔ですよ。あなたに相当惚れているのでしょうな。」

 

 ・・・お、おう。

 ジシムさん、そこまで分析しないでくだせぇ。

 とっても恥ずかしいでござんす。


「おっと、これは失礼。それでは私はこれで。」


 そう言ってジシムさんはコロッセウムをあとにした。

 ・・・あの人絶対わざとだよ。

 負けたのが悔しかったんかい!!


「はぁ。まぁ悪い人じゃなかったし、ここで知り合いになれたのも何かの縁かね

?」


 そういうことにしておこう。

 メイドさんが来て夕食の準備が出来たとのことなので、いつの間にか集まっていた公爵の騎士たちの間をくぐり抜けながら俺達は館へと戻っていった。




Sideダグラス


「――以上がカイト殿の報告でございます。」


 私の古くからの知り合いであり、私の護衛でもあるジシムが、今日私の屋敷に来た冒険者であるカイト殿について報告をし終わった。


「・・・随分とカイト殿について楽しそうに語るな、ジシム。」


 ジシムとは長い付き合いだが、これほど楽しそうに報告してくるのは初めてではないだろうか?


「い、いぇ。・・・カイト殿と手合わせしていて思ったのですが、長年鍛え上げてきた私の戦闘技術が全く通用しなかった。しかも、私の”エアブレード”を初見にもかかわらずかわした。それでいて、初めて見る魔法を私に使ってみせた。・・・これほど血湧き肉踊ることはありませんよ。」


 本当に、楽しそうだなジシム。

 しかも彼は私が今回に手合わせをしくんだと感づいていたようだ。

 それにジシムは彼は私を利用しようとして近づいてきた下衆な輩ではないと鼻高々に宣言してくる。

 ・・・ジシムにここまでの信用を得たカイト殿が気になってしょうがない。

 これは夕食の席にて色々この目で確かめてみようか。


「ダグラス様も、カイト殿に興味を持たれたようですね。」


「あぁ、彼は本当に何者なのだろうな?」


 私の声が、この部屋に静かに響いた。

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