02 黒髪の少年は異界の神に出会う
side海斗
さて、長々と今までの事を整理してきたが・・・。
ここは・・・どこだ?
目を覚まして一番最初に考えたことはそれだった。
上下左右すべてモヤがかかったような白で、ここには天井や床などの概念がないのだろうか?
俺は白い空間にただ浮かんでいるという状況だった。
体は轢かれる前に戻っている。
Tシャツ短パン、車に轢かれたあとは微塵も残っていない。
皆さんにも分かっていただけただろうか?
この非常識な状況を。
よく読んでいたラノベの異世界転生モノのような展開だが・・・。
実際にその状況を体験してみると、なるほどどうして、ラノベの主人公達は冷静だったのだろうという感想が出てくる。
自分に起きているとは思えない状況だ。
リアルなVRを見ていると言われないと、精神衛生上よろしくない。
「お目覚めかな?黒髪クン?」
色々考え込んでいると、不意に後ろから声をかけられる。
驚いて振り返るとそこには少年がいた。
いや、果たして少年なのだろうか?
見た目は少年なのだが、何かこう、神々しいオーラを感じる。
オーラっていう表現もどうかと思うが、それしか表せる言語を持っていない。
髪はセミロングの金髪で碧眼。
身長も150cmあるかないかだ。
一見モンゴロイドのようにも見えるが・・・。
東洋人と西洋人を足したような顔立ちにも見える・・・。
あぁ、もういい。
こいつは金髪ショタってことだ。
「う~ん、そこまで僕のことを事細かく
観察されたら恥ずかしくなってくるね。それにショタって程若くはないよ〜。」
少年が言葉を発する。
ん?今何か違和感が・・・。
「あぁ〜、今僕は、君が考えてることに
対して回答したから、びっくりしたんじゃない?」
そう言われてハッとする。
今目の前にいる少年は俺の頭の中で考えていたことに対して発言したのだ。
これには驚きが隠せない。
更に、
「まぁ、僕神様だしね。ニッシッシ。」
・・・何かこの少年は聞きづてならないことを言った気がする。
神様?そんな馬鹿な。
「ん〜、ホントのことなんだけどな。そんなことよりさ、君さっきから一言も喋ってないよ?」
そういえばそうだ。
「いや、俺の頭の中で考えたことが伝わ
るならしゃべる必要なくね?」
もっともなことを言ってみる。
「まぁ、そうなんだけどさ。けど、おしゃべりして欲しいじゃん。」
どうやらこの少年はおしゃべり相手がほしいようだ。
「そんなことはどうでもいいんだよ。それよりもここはどこなんだ?」
いろいろ聞きたいことはあるが、まず今自分がいる状況を確認しよう。
「フフッ、いい判断だね。それじゃあ説明しよう!」
少年は指を立てて、とある特命係の刑事を思い出させるような歩き方をして話し始めた。
「ここは神様たちが暮らす”神界”!その中でも私個人が所有する特別な空間なのですよ。ちなみに君の体は死ぬ前の健康な体に治しておきましたのでご心配なく。」
少年は、どう?すごいでしょ?といいそうな顔をして、腕を組んでこちらを見てくる。
「あぁ〜、すまんが俺は死んだのか?神界ってことは天国か?」
とりあえずショタ神のネタは置いといて、聞いてみる。
「ありゃ?”な、なんだって〜”みたいなリアクションしてくれると思ったんだけどな〜。」
少年は口を尖らせて言ってくる。
「だれだってこの状況でツッコミをする余裕はないと思うのだが・・・。」
そりゃあいつもの俺だったらそれくらいのリアクションはするが、今この状況でそんな事はできん。
「なんだ〜つまんな〜い。けどいいや。」
何がいいのだろう?
「君の質問に答えると、君は地球の神に見放されて強制的に殺されちゃた。それで僕が引き取ってきたから、今この神界にいるんだよ!ちなみに天国=神界じゃないから〜」
ちょっと待て、今聞いてはいけないことを聞いたような・・・。
「そそ、君は地球の神様に見放されたんだよ〜。すごいよね神様に見放されるって。なんか生まれてすぐにでも殺そうとしたらしいけど、赤ん坊を殺すのはためらったみたい、だから君のご両親が自然に死ぬのを待って殺したってことだね。」
少年は笑顔で答えてくれる。
「は?なんだよ地球の神様に見放されるって。別に人を殺したわけでもないし、国家転覆を考えてるわけでもない。はっきり言って意味がわからんぞ」
今の心境をありのまま少年に叫ぶ。
「そうだよね〜、けどさ、君には地球にとって危ない存在なんだよ。」
危ない存在とはなんだろうか?
やはり心当たりはない。
「答えはね〜、君の持ってる魔力さ。」
「魔力?ファンタジーとかに出てくるあの魔力?」
また新しい単語が出てきた。
頭が痛くなってきそうだ。
いや、すでに痛い。
「そうそう、君は僕達に匹敵するぐらいの魔力を持っているのさ。いつその魔力が暴走して大災害を起こすかわからないから危険ってわけだね。」
何か俺の預かり知らぬところで勝手に話が進んでいるような気がする。
「そこで、君には僕が作った剣と魔法のファンタジー世界へ招待しようってことにしたのさ!」
ん?そうしたらこの少年の利益はないのではないか?
「あぁ、そんなこと?ただ面白そうだから拾ってきただけだよ?」
この少年は何を言ってるのだろう?
いわば俺は危険な爆弾なのだろう、それも地球を破壊できるほどの。
それを面白そうだから拾ってきたなど と、正直言って正気とは思えない。
しかし、俺もいきなり魔力が異常だからおまえを見放すと言われても、正直納得行かない。
が、今はそれで手打ちにしなければならないのだろう。
それに関しては俺を拾ってくれたこの少年には感謝だな。
「納得してくれた?」
しぶしぶだが納得することにした。
じゃないと多分俺はこの先、生きては行けないのだろう。
「理解が早くて助かるよ」
しかし、俺はこの少年の世界へ行って何をすればいいのだろう?
「特に何かしてほしいことはないよ。君
がしたいことをすればいい。それを見て僕は楽しむことにしたから。」
なんとも俺にとっては好条件なことだ。
しかし、異世界へ行くとしても何の知識もない俺がいきなり行っても良いものなのか?
「大丈夫大丈夫!ここで知識とかも覚えていってもらうから。」
それなら安心だ。
俺は家族はもういないし、俺がいなくなっても悲しむ奴なんて・・・あいつらなら大丈夫か。
「でわ、早速お勉強ですよ高橋くん。」
・・・いつまでやるの○京さんの真似?
だが、まぁ今はまず異世界の勉強だ!
やべ、なんか楽しくなってきた。