13 黒神の少年は過去を振り返る
大変長らくお待たせいたしました。
すみませんこの土日もいろいろ忙しく、投稿することができませんでした。
申し訳ございませんでした。
さて、今回は主人公の過去編です。
といってもこの回だけなんだけですけどねwww
Side海斗
「海斗君私たちの養子にならないか?」
そうおじさんが俺に言ってくる。
「いや、結構です、他人に迷惑かけたくないので。」
そう言って俺はドアを閉める。
ドアの目の前でおじさんが悪態をついているが気にしない。
あんな人間のクズのようなやつの悪態なんぞ毛ほども傷つくわけないのだから。
「はぁ、これで何度目だ?」
だが、こう何度も来られたら精神的に来るものがある。
両親が死んでからというものこうやって金目当てにたかってくる輩が増えてきた。
父親は大企業の社長、母親はデザイナーとして世界中で活躍していた。
基本家にはいなかったが、帰ってきたらしつこいくらいに俺にかまってくれた。
いわゆる親バカだった。
「ふふふ。」
思い出してくると笑えてくる。
俺が階段を踏み外して足を少しねんざした時は、両親ともすぐさま仕事をキャンセルして家に飛んできた。
あぁ、文字どおりね。
うちには自家用機があり、よく両親が使っていた。
それくらい裕福な家に育った。
だから両親が死んでその遺産を目当てにおじさんや両親の親族たちがこぞって俺を養子にしようとして来る。
さっきみたいにね。
一回俺を殺してでも遺産を手に入れようとしたやつがいたな・・・。
まぁその時は幸い襲われる前にわかったので警察に連絡して事なきを得た。
「父さん、母さん。俺はいつまでこういう生活を送ればいいんだ?」
今はもういない両親に俺は尋ねる。
当然答えてはくれないが、そうしていないと精神が壊れそうだ・・・。
血走った目で俺を見てくる親族。
昔は優しそうな顔だったおじさんも、今や金に目がくらんで醜い顔になっている。
唯一の救いは、うちの使用人たちが両親の遺産に目もくれず俺を助けてくれていることか。
もはや使用人じゃないな・・・。
「身内以外は信用できないか・・・。」
俺は今後一切他人は信用しないことにした。
身内は別だ。
「さて、今後はどうしようか?」
「ここは地方にある別荘へ移られたほうがいいかと。」
使用人の一人が俺に告げてくる。
彼は俺が生まれる前からうちにいる使用人、玄さんだ。
容姿はTHE執事。
初老で、髪は白髪混ざり。
身長は俺と同じくらいで、細マッチョだ。
俺の護衛でもある。
「そうだね、玄さんの言う通りかもしれないね。じゃあ別荘に行こうか。」
「かしこまりました。しかし、ここは主様おひとりで行かれた方が良いかと。」
「なぜ?」
俺は問いかける。
「私たちが一緒に行けば、遺産目当てのやつらに勘づかれるかと・・・。」
「だけど、その場合だったらばれた時点で即アウトだね。」
どっちもどっちだろうな。
「いえ、御心配には及びません。影武者も用意しておりますし、何よりこの家の地下から潜水艦での移動ですので、勘づかれる可能性は低いかと。」
潜水艦?
あの親たちは家を魔改造しすぎだろ!!
自家用機持ってて潜水艦もかい!?
「・・・お気持ちはわかりますがお支度をお願いいたします。」
玄さんも両親の規格外さをよく理解しているのだろう。
俺が呆れているのをわかっているらしい。
いつも俺はポーカーフェイスをしている。
親族たちに弱みを握られないようにしているのが一つの理由だ。
「わかった。すぐに用意する。」
俺は身支度をすぐ整えた。
身支度といってもそんなに多くはない。
俺は金持ちの家といってもパーティーに出席することもなかったからな。
なぜかというと、両親の考えが”海斗がやりたいことがあるのなら最大限自分たちの要件は押し付けづ、自由にやらせよう”というものだったからだ。
だから俺はのびのびと自由な事が出来たし、勉強も両親のために頑張ることができた。
「この家ともお別れか。」
俺は人生の大半を過ごした大きすぎる自分の部屋を見回した。
壁や床はシンプルなデザインで、ベット、机、椅子、パソコンぐらいしか置いていない。
「・・・さよなら。」
俺は地下へと急いだ。
「いってらっしゃいませ。」
「あぁ、行ってくる。」
俺は潜水艦へと乗り込んだ。
俺は潜水艦を操縦することができないのだが、どうやらこの潜水艦は自動操縦らしい。
目的地に着くまでは半日。
退屈な旅になりそうだ。
「またね玄さん。」
「はい、御無事で主様。」
俺は別れのあいさつを済まして、潜水艦の中へとはいって行った。
「・・・暇だ。」
潜水艦の中はそんなに広くない。
あってもベットくらいだ。
「寝るか・・・。」
俺は何もかも忘れるように眠りに入った。
俺が別荘に着いたのはまだ肌寒さが残る次の日の朝だった。