12 黒神の少年は盗賊に会う
Sideカイト
とりあえず俺たちは準備のため一旦解散し、今日の昼から出発することにした。
領主との晩餐は遅れてもいいとのこと。
まぁ辺境の領主と王国の姫さまを天秤にかけるまでもないか・・・。
ということで俺たちはブラブラと時間を潰しカレルを待った。
「おまたせした。早速向かおう。」
カレルが出会い頭にそういった。
「こっちはいつでも良いが・・・。そっちはお前一人か?」
そう、カレルはひとりで来ていたのだ。
普通は姫さまの病気を治す薬をとりに行くのだから、もっと大人数な気がするのだが。
「あぁ、これは極秘だからな。最も信頼している私に任務を任せてくださったのだ。」
「・・・それは姫さまに直接言われたのか?」
・・・何か引っかかるな。
「いや、直接は言われてはいない。だがギゼル執政官がおっしゃっていた。」
「ギゼル執政官?」
「あぁ、執政官自ら私の元へ来てくださってな、”姫のご病気を治す精霊の涙回収の任を授ける。これは姫さま自ら人選なさった。”とおっしゃったのだ。」
ギゼル執政官・・・どうやらきな臭いな。
「姫さま自ら選んだってことは仲が良いのか?」
「あぁ、元々私は姫さまの護衛隊長をしていたのだ。そこから執政官が”姫を守りたいと強く思うのなら、この国を自らの目で見て感じ、より一層国のことについて理解しなければならない”とおっしゃってな、今私は王国第一旅団隊長をやっている。」
・・・このこ馬鹿なのか?
普通そんなことは言わないだろう。
俺が見た限りこいつは結構の手練だ、そいつを姫さまから引き離すというのは確実に姫さまの周りを弱体化させようとしているとなぜ気づかない?
それに、ギゼル執政官というのはどうやら裏で何かしてきそうだ。
この回収の任務も変だ。
これは途中で盗賊とか襲ってきて、こいつを抹殺しに来るとかありそうだな・・・。
はぁ、面倒ごとしかやってこないなぁ。
「あぁそうかい。じゃあ、ちゃっちゃといきますか。」
「はい!」
「ああ。」
俺はハクとカレルの返事を聞きながら、ナギルの門をくぐった。
魔の森までは片道3日。
そこから精霊の祠までは半日くらいだ。
道中は比較的暇だった。
魔物が出てきたら俺が一閃すれば終わるし、カレルの方も綺麗な槍捌きで敵をなぎ倒していた。
と、言うわけで道中はほんとに暇だった。
そして2日過ぎ、魔の森が目指できるようになったところでそいつらが現れた。
「よぉ黒髪の坊主。またあったな。」
・・・そこには三下がいた。
「知り合いか?」
カレルが訪ねてくる。
ハクもクビを傾げてこちらを見ている。
「あぁ、まぁな。ギルド登録の時にいちゃもんつけてきてな。まぁ、蹴り1つ入れて伸びてたけどな。」
「あん時は油断してただけだ!しかも今回は仲間も大勢いるしな。」
ニタニタしながら三下が話していると、後ろから続々と盗賊らしい服装をした奴らが現れてきた。
「こんだけいりゃあ負けねえってな。まぁ、そこにいる女二人をおいてくってなら考えてやってもいいがなグヘヘ。」
あ、でた三下笑い。
まぁ、そんな要求飲むはずもなく。
「はぁ。どこまで行ってもクズはクズか。」
ほんとに人間というのはどうしてこうもクズが多いのだろうか?
別に禁欲しろとか善人になれとは言わないが・・・。
せめて他人様に迷惑をかけないで勝手にやってほしい。
・・・・・・まぁ、無理か。
「どうした?さっさとしろよ。」
俺が悩んでいるとでも思っているのだろうか?
三下が言ってくる。
「ここは私が。」
「いや、いい。すぐに片付ける。」
カレルが槍を構えようとするところを俺はやめさせる。
「この状況でこいつらを殺しても罪にはならないか?」
俺はハクに尋ねる。
「はい、この場合は大丈夫です。犯罪者を殺しても犯罪にはなりません。ちなみにギルドの除名は犯罪履歴になりますので、あのクズを切っても問題ありません。」
おぉ、ハクさんちょっと怒ってますね。
どうやらあの三下の下衆顔が気に食わないご様子。
まぁあの顔で自分の体を舐め回すように見られるのはいやだよな。
「それじゃあ・・・フッ!」
俺は抜刀し、ものの数秒で三下の後ろに居た盗賊達を斬り殺した。
・・・意外と殺人に関して躊躇がなかったな。
最初の狼の時は結構こたえたのだがな。
こいつらは動物以下ということか・・・。
「な、なんだぁぁあ!?」
三下がパニクってる。
「で?お仲間さんがいなくなったあんたはどうするんだ?」
「くっくそぉおおお!!」
そう言って三下が切りかかってくる。
・・・あの時と同じように切ってくるのは、こいつがただのクズだというのを証明している。
学習しない、他人に迷惑をかけてでも自分の欲求を満たそうとする。
・・・地球に居た時にこいつと同じような奴らを相手にしていたな。
・・・今度は手加減はしない。
と、行きたいところだが、こいつには黒幕について喋ってもらわないといけないからな、残念だが拘束させてもらう。
土魔法拘束系魔法”アースバインド”を使わせてもらう。
ちなみにこれはオリジナル魔法。
土魔法は元々穴を掘る、岩石を相手にぶつける、ぐらいしかなかったのだ。
それで色々試行錯誤して出来たのがこれ。
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土魔法:アースバインド
・オリジナル魔法
土を利用し敵を束縛する。
敵が地面に接していれば確実に束縛できる。
ただし、攻撃性はない。
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まぁ、その話はまた今度。
三下の地面から土で出来た鎖が生えてくる。
その鎖は一瞬の内に三下の体中に巻き付き体の自由を奪う。
三下はいきなり現れた鎖に驚き、それを引き剥がそうと躍起になっている。
・・・なかなか無様だな。
「・・・無詠唱か。」
カレルが目を見開いて驚いている。
すまないが今回は絡んでいる暇はないぞ。
「さて、お前には黒幕について喋ってもらおうか?」
坦々とこちらの要求を述べる。
いや、命令か。
「へっ、誰がてめぇの質問に――」
その先は続かなかった。
三下は両手両足を切断され、いわゆる達磨状態になったからだ。
相当の痛みだろう。
「勘違いするな、これは質問じゃない命令だ。答えるなら殺さないでやろう。」
俺は刀を三下のクビに当てる。
「うっ・・・わ、分かった。」
しばらくして痛みになれたのだろう、三下が返答した。
三下が言うには、依頼主は王都の貴族らしい。
カレルを殺してクビを持ってくれば多額の報酬をやると言われ受けたそうだ。
「なんともまぁ・・・。」
ハクが呆れたようにつぶやく。
もう何も言うまい。
「は、話しただろう。放してくれ!!」
・・・俺は黙ってクビを飛ばした。
その顔は、昔よく目にしていたような、そんな気がした。
ここで登場三下君。
まぁ、予想通りですよねwww