11 黒神の少年は女騎士に出会う
Sideカイト
というわけで翌日。
俺達は約束の時間より少し早くギルドへ向かっていた。
「しっかし、護衛依頼とは・・・。」
活躍しているとはいえ、無名にも近い俺達を指名してくるなんて・・・、何か裏がありそうで怖いな。
「ハク、護衛中なにかあったら逃げる用意をしておくんだよ。」
「え?なぜですか?」
小首を傾げてハクが訪ねてくる。
あぁ、可愛いなぁ・・・。
「いや、無名にも近い俺達を指名してくるってのは何か裏があるんじゃないかと思ってな。」
「そうですね・・・。ご主人様がそうおっしゃるのならそうかもしれませんね。」
俺の考えすぎなのか?
まぁ、依頼主にあってから考えても遅くはないか。
そして俺達はギルドへ着いた。
いつも通り冒険者でごった返している。
「おはようミレイ。早速だけど依頼主は?」
ミレイを見つけて話しかける。
「おはようカイト。依頼主はもう来ているわよ。ギルドマスターの部屋へ来て欲しいそうよ。」
ギルマスの部屋?
・・・ということは厄介事しか思いつかんのだが。
「あぁ、分かった行ってくる。」
俺達は奥へと進み、ギルマスの部屋へと向かった。
ノックをすると入れと声がしたので、入る。
すると、そこには騎士の甲冑を着た女性とギルマスが居た。
「おうカイト!」
「おはようおっちゃん。で?この人が依頼主?」
そう俺がおっちゃんへ声をかけると、女騎士さんは一瞬呆気にとられたような顔をした。
まぁすぐに真顔に戻ったが・・・。
「お初にお目にかかる。私はカレル・レンハンスと言う。今回は私の護衛依頼を受けていただき感謝する。」
「テンプレなご挨拶をどうも。俺はSランク冒険者カイト・クロバだ。で、隣にいる娘がパーティーメンバーのハク。よろしく。」
「はじめまして。ご主人様の奴隷でパーティーメンバーを努めさせて頂いています。ハクです。よろしくお願いします。」
そう行って俺達は軽く会釈をする。
そのことにカレルは少し驚いていたが、それも一瞬。
この人は何かと自分の表情を隠そうとするな・・・。
まぁ人間のクズのような奴らが集まった貴族たちの中で生き抜いていくのは、こういう事を学んでいかなければいけなかったのだろう。
「丁寧な挨拶痛み入る。早速本題なのだが、今回は極秘理に事を進めたかったので、事前に詳しい内容を書かなかった。この件について謝罪しよう。すまなかった。」
そうだ、そういえば依頼書には詳しい内容がなかったな・・・。
よく見ないで受けてたな。
まぁ指名依頼だし直接あって要件を言うなんてこともあると、ミレイも言ってたし大して気にしてなかったんだけどな。
それに指名依頼を断るということはあまりギルド側はして欲しくないようだったしな。
「いや、そのことについては気にしていない。」
「そうか、それは良かった。」
そう言ってカレルは微笑む。
う~ん、これはミレイとは一味違った美人の微笑みだな。
ミレイは綺麗さの中に可愛さが見え隠れしていて、見ていると心が落ち着く。
しかしカレルの笑顔は逆だ。
見ているとドキドキが止まらない、良い意味で可愛さがなく、綺麗さが全面に出ている。
見惚れるというのはこういうのを言うのだろう。
「それで、護衛依頼のないようなのだが―――」
あぁ、もったいない。
真顔に戻らなくても、少し微笑んでいたほうが断然良いのに・・・。
「―――魔の森の中を通り、その先にある精霊の祠までの道のりを護衛してもらいたい。」
魔の森ときましたか・・・。
「いやな、魔の森で住んでたお前なら道案内も、道中の魔物も無理なく倒していけると思ってな。俺が推薦したんだ。」
どうやら今回もおっちゃんが仕組んだらしい。
今度お灸をすえてやろう。
「なるほどな・・・。そういうことなら別に構わない。俺にとってあそこは庭みたいなもんだからな。」
事実そうだしな。
「ははは。魔の森が庭か。さすがはSランクの冒険者殿、伊達に二つ名は持っていないか。」
ん?二つ名?
「ちょっと待て?二つ名ってなんだ?」
「ん?カイト殿は自分の二つ名を知らんのか?」
「あぁ知らん。」
何か悪い予感がする・・・。
「そうなのか・・・。まぁ、本人が知らないところで二つ名がつくというのは珍しくないからな。今カイト殿は”黒神”という二つ名をつけられているぞ。」
ぶっ!
確かに俺神様だけど!!
確かに全身黒だけど!!
それは何か恥ずかしいんですが!?
「・・・・・・はぁ。」
ハクは俺の隣で興奮気味です。
多分俺の名前が有名になったのを喜んでいらっしゃるのではないかと思うのですが・・・。
二つ名が痛いのが見過ごせない。
いや、最初の方でさ俺中二病だからOKとか言ってたけどさ、自分でやるのと人に言われるのは別もんなのよ?
ホント。
「ち、ちなみにこれって誰が考えるの?」
「たしか・・・そのものが実績を残した街のギルドマスターがつけるはずだぞ?」
俺はギルマスのおっちゃんを睨んだ。
「お、俺は何もしてねぇぞ。こういう二つ名がついたらお前さんは恥ずかしがるだろうなとか思ってないからな!」
おい、てめぇはどこのツンデレだ!!
ぜってぇ護衛依頼帰ってきたら八つ裂きじゃオラァ!
「はぁ〜。とりあえず、なぜ精霊の祠へ行きたいのか教えてくれるか?」
そう言うとカレルは少し表情を曇らせて喋り始めた。
「実は・・・、そこにある”精霊の涙”がほしいのだ。」
「”精霊の涙”?どんな難病でも直せるというあれか?」
おっさんが解説してくれる。
解説おつ。
「あぁ、それだ。」
「なんでそれが必要なんだ?」
カレルは少し躊躇したが、意を決したように俺の目を見た。
「ヒュマノス王国第1王女、ヴィクトリカ様が、病にかかってしまったのだ。」
あぁ〜ここで国王絡みのフラグ回収のお知らせ〜。
・・・・・・マジか。
俺はショタ神を恨まずには居られなかった。