1−5 逢瀬
暗い部屋の中に私の嬌声が溢れている。どうしよう。私おかしくなっちゃったのかな…
私の甘い声に彼が答えるように、時に激しく、時に優しく私を愛してくれた。彼に触れられるたびに、快感が私の体を激しく刺激し、彼を求めた。
自分でも信じられない。
今まで埃と油にまみれて、女らしい色気なんて縁のなかった私の奥底に、こんな甘く溶けるような感情が眠っていたなんて。
初めての時からそうだった。
初めての夜、彼が「まだ経験がない」って言っていた。私も初めてみたいなものだったけど、年上だしリードしようと考えて「大丈夫、リラックスして」とか言っちゃった。でも、私も心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしていた。
優しくキスをしてベッドに横になった後、ブラウスのボタンを外す彼の手が微かに震えていた。私は自分の手を重ねて、彼の仕草と息遣いを一つ一つ追っていった。甘い彼の匂いとシーツの冷たさが直接肌にあたる感触。
あっという間に立場が逆転していた。私の体は、彼に触れられるたびに、激しく反応し全てを委ねていた。
あの時とは全然違う。
彼に触れられるたびに、電気が走るような感覚が全身を駆け巡り、いままで出したことがないような甘い声が漏れ、手でされるだけで何度も絶頂を迎えていた。まるで私の体を知り尽くしているみたい。
私はぐったりして、彼の体にもたれ掛かりながら、問いかけた。
「初めてなんて、嘘でしょ?」
「本当に初めて、美里さんが」
「嘘」
「美里さんに喜んで欲しくて、勉強したから」
「え?勉強?」
「ビデオとか…」
視線をシーツに落とし頬を掻く彼を、愛おしくて笑いながら抱きしめていた。
可愛い。
成人した男性がこんなにも愛おしいなんて。嘘でもいい、初めてでなくてもいい。今は私の彼、私だけの彼。
私は彼にキスをして、もう一度体を重ねた。相性って言うのかな?そういうの本当にあるんだ。
今夜も、何度目かの絶頂を迎えた後、私は彼の胸に抱かれながら囁いた。
「彼、愛してる。ずっと一緒にいてくれる?」
「美里さん、僕も愛しています。ずっと一緒にいます」
私は彼の胸を指でなぞっていた。ふと違和感が指にあった。
「彼、これどうしたの?」
何気なく触れた指先には、大きな傷があった。左肩から左胸にかけて。見た目ではわからないが、触ると引き連れのような跡がある。まるで作り物みたいな…
「これは、昔の怪我」
なんてことないという風に彼が答える。
「こんなに大きな傷、痛かったでしょう」
「今はもう平気」
こんな大きな傷…何か大怪我でもしたのだろうか…
そんな思いを抱いたが、私は彼に優しく髪を撫でられている内に、満ち足りた気持ちで深い眠りへと落ちて行った。




