1−4 牛久
私と彼は、あのカラオケボックスでの夜以来、デートを数回重ねて、大人の関係にもなっていた。
私は32歳だし、彼は29歳。別に憚られる年でもない。そして今日は彼が泊まりにくる!
私の地元で「かっぱ祭り」というイベントがあることを彼に話したところ、じゃあウチにくる?という話になった。
時刻は20時前。
日が暮れても昼間の熱が残っており、息苦しくなるような空気が駅周辺を包んでいる。
牛久駅の改札から、電車が止まるたびに、人が流れ出るように出てくる。いつもに比べて人の流れが多いように感じるのは、明日から始まるお祭りのためだろう。
牛久では「かっぱ祭り」というお祭りが毎年7月の最後の土日で開催される。かっぱの格好をしてパレードをしたり、お神輿が出たりする。
20時に改札で待ち合わせ。もうすぐ彼がくる。時間にはきっちりしていて、今までのデートで遅刻したことは1回もない。
時間にルーズな人は信用できない。
これはおばあちゃんが言っていた言葉だ。
初めて彼が泊まりにくる。
たったそれだけのことなのに、朝からウキウキしていた。
「美里さん」
不意に背後から声をかけられた。全然気付かなかった!一体いつの間に!?
「憶俊、いつの間に?」
「美里さんを驚かそうと思って」
そうイタズラっぽく笑う彼に、胸がキュンとする。
「もう、イタズラなし!」
私は彼の手を握って、二人でマンションまで歩いた。
私の家までの道のりが、こんなに楽しいなんて。




