4−5 判決
「主文…」
「被告人を懲役3年とする。刑法第87条。外患援助の未遂罪として」
傍聴席に、声にならないざわめきが走った。私は何を言われているのか理解できなかった。
3年!?
懲役!?
なんで!?
検察側の求刑は81条だったのに!
死刑だったはずなのに!
「理由、被告人は、2042年8月1日、茨城県において…」
私の頭の中で憶俊の声が甦った。
(8と1は、僕のラッキーナンバー…)
「…他国の軍人に騙されて、それと知らずに原子力発電所の事故を起こさせ、本国に対して軍事侵攻、日本に脅威をもたらす可能性を…」
そんな…
(ちょっと待ってて。最後にやることが…)
「…他国の工作員と逃亡を図り、証拠隠滅を画策したことは事実であり…」
そんな…
(世界のどこにいても81で日本に繋がる…)
「…なお、本件は執行猶予5年…」
足がガクガクと震え、その場に崩れ落ちていた。
そんな…
憶俊の言葉が頭をめぐる。
そんな…
私の目から、涙が溢れていた。
私、泣いている……?
なんで…なんで…
(二人の子供。絶対に可愛い…)
憶俊…
床についた自分の手に、涙がボタボタと溢れる。
憶俊…あなたって、最後まで私を…
私を…
私だけを…
「…あは、あははははは」
私は笑いたくもないのに、自分の笑い声を止めることができなかった。
目から溢れる涙を止めることもできず。
目に入るのは、無機質な床、私の手、そこに降りかかる水滴。
「あ、あはは、ははははは…」
法廷に、私の笑い声が木霊していた。
誰かに脇を支えられるまで、立つこともできずに。




