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81(エイティーワン)  作者: 雨後乃筍
4章 逃避
30/33

4−5 判決

「主文…」


「被告人を懲役3年とする。刑法第87条。外患援助の未遂罪として」


 傍聴席に、声にならないざわめきが走った。私は何を言われているのか理解できなかった。


 3年!?


 懲役!?


 なんで!?


 検察側の求刑は81条だったのに!


 死刑だったはずなのに!


「理由、被告人は、2042年8月1日、茨城県において…」


 私の頭の中で憶俊イージュンの声が甦った。


(8と1は、僕のラッキーナンバー…)


「…他国の軍人に騙されて、それと知らずに原子力発電所の事故を起こさせ、本国に対して軍事侵攻、日本に脅威をもたらす可能性を…」


 そんな…


(ちょっと待ってて。最後にやることが…)


「…他国の工作員と逃亡を図り、証拠隠滅を画策したことは事実であり…」


 そんな…


(世界のどこにいても81で日本に繋がる…)


「…なお、本件は執行猶予5年…」


 足がガクガクと震え、その場に崩れ落ちていた。


 そんな…


 憶俊イージュンの言葉が頭をめぐる。


 そんな…


 私の目から、涙が溢れていた。


 私、泣いている……?


 なんで…なんで…


(二人の子供。絶対に可愛い…)


 憶俊イージュン


 床についた自分の手に、涙がボタボタと溢れる。


 憶俊イージュン…あなたって、最後まで私を…


 私を…


 私だけを…


「…あは、あははははは」


 私は笑いたくもないのに、自分の笑い声を止めることができなかった。


 目から溢れる涙を止めることもできず。


 目に入るのは、無機質な床、私の手、そこに降りかかる水滴。


「あ、あはは、ははははは…」


 法廷に、私の笑い声が木霊していた。


 誰かに脇を支えられるまで、立つこともできずに。


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