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81(エイティーワン)  作者: 雨後乃筍
1章 甘い毒
3/33

1−2 李憶俊

 彼との出会いは最悪で最高だった。ドラマチックで、まるで映画みたいな素敵な出会い。


 それは、もうすぐクリスマスで、どこの会社でも忘年会だ新年会だの騒いでいる時期。

 私の職場では所属する茨城支社ではなく、営業部のある本社でも忘年会が開かれていた。

 飲み会自体は嫌いではないが、会社の飲み会は仕事の一環だと思っている。

 後輩のグチを聞いたり、上司のセクハラにあっている後輩の間に割って入ったり。


 そんな上野での忘年会があった帰り。


 私は終電ギリギリで、駅に急いでいた。

 終電間際の上野駅は、金曜日ということもあって混雑していた。


「いてーな」


 駅前で固まっている男性グループが避けきれず、その内の一人に、カバンをぶつけてしまった。ケーブルが入っている重いカバンだった。

 かなり酔っているのがわかった。


「ごめんなさい」


 反射的に謝ったが、それだけでは済まなかった。


「おいおい、ぶつかっておいて、それだけで済ますつもり?」


 男は4人のグループで、私を取り囲むように迫ってきた。

 私は何度か謝ったが、それで解放してくれるような相手ではなかった。


 どうしよう…


 そんな時、別の男が割って入って来た。


「やめなさい。謝っているでしょう」


 声の方を見ると、いかにも頼りなさそうな男の人が立っていた。


「なんだてめーは」


 次の瞬間、男の膝が、割って入った男の腹にめり込んだ。

 倒れ込んだ男を4人の男がよってたかって足蹴にする。

 遠くの方から「早く警察を!」という声が聞こえた。


 それを聞いたのか、男たちは「おい、行こうぜ」と去って行った。

 残されたのは私と、顔から血を流している1人の男。


「大丈夫ですか?怪我は?」


 その男が私に言ってきた。

 どう見ても、大丈夫ではないのは、男の方なのに。


「私は大丈夫ですけど、あなたの方が」


「僕は大丈夫。あなたに怪我がないので良かった。じゃ気をつけて」


 男は立ち上がり、軽くズボンを叩いて、歩き出そうとしていた。


「待ってください。あの、お礼をさせてください。」


 それが、私、田中美里たなかみさとリ・イージュンとの出会いだった。


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