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81(エイティーワン)  作者: 雨後乃筍
3章 臨界点
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3−7 ミス

あずまさん、中国艦、下がっていきます。ひとまず侵攻はなさそうですね。自衛隊もデフコン3に下げました」」


 小倉おぐらが話しかけてきた。


「一旦は大丈夫そうか」


 まあ、そうだろうなとあずまは思った。


 中国艦が日本の海岸線に侵攻している時に、原発の無事がわかった米軍が大規模な空軍を戦闘配備した。


 原発に対するサイバー攻撃、米軍を足止めにしての軍事侵攻。


 その重要な切り札が動かなかったら、文字通り無駄足になる。ましてや証拠が残っている段階では国際批判も免れないだろう。


 米国と本格的にやりあうつもりは、元々ないだろうしな。


 いや、そもそもどこまで侵攻するつもりだったのか。


「中国も現金なものですね。米軍が配備されたら途端に掌返しですか」


「それは当然だな。米軍とやり合うような真似はしないだろう。あくまで原発への攻撃で足止めができた前提だろう」


「また彼らのプロパガンダに利用されますね」


「向こうからしたら、原発に攻撃できただけでも大成功だろうよ。実際に侵攻しなくても原発に対する武力行使は間違いないからな」


「じゃ、ブラフだったと言うことですか?」


「完全にブラフでもない。原発がメルトダウンしていたら、当然米軍基地は使えない。そこで日本本土へ侵攻すれば、これ以上ないぐらいの宣伝になるだろう。例え途中で撤退してもだ」


「そんな、そんなことのために国民を犠牲に?」


「民衆の命なんか、なんとも思っていないよ。自国民の命でもな。要するに米軍が介入するのを遅らせて、できる限り侵攻したというポーズ。やばくなったら、はいサヨナラって感じだろう」


「じゃ、今回は大失敗ってことですね」


「いや、奴らは利用するさ、日本に脅威を与えて米軍を介入させたってね」


 小倉がぽつりと呟いた。


「どっちにしろ日本政府は、しばらくアメリカの言いなりですね」


 あずまは、ふと思った。


「もしかしたら、今回の騒動は、為替介入を目論んだアメリカと中国の共謀だったのかもな?」


 もしそうだとしたら、まんまとやられたな。


 あずまが一息吐こうと、コーヒーを取りに立ち上がりかけた時、またしても分室の電話が鳴った。


あずまさん、自ら隊からです。逃げられました。女の家はもぬけの空です」


 しまった。李憶俊リ・イージュンに逃げられたか。


小倉おぐら!緊急だ!牛久から考えられる交通拠点に警戒監視体制を!」


 作戦が失敗に終わって、利用価値のなくなった兵器を、中国はどうするか。


 証拠隠滅。


 あずまの頭に、李憶俊リ・イージュンと、女、田中美里たなかみさとの顔が浮かんできた。


 あの、ショッピングモールで、幸せそうにワインを選んでいた彼女。


 まだ間に合う、いや、間に合わせる!


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