3−3 緊急通報
「所長、フォレンジックの緊急依頼です」
オペレーターが無機質に伝えてきた。所長と呼ばれた壮年の男は、面白くなさそうにリクライニングシートに腰掛けながら応えた。
「緊急通報か、依頼元は?」
「国家情報局です」
所長と呼ばれた男の目がギラリと光った。
「そいつは良い金になるな。場所は?」
「茨城原子力発電所です」
「原発か」
原発となると、危険が伴う。家族持ちは避けた方が良さそうだな。トラブルが起こった時に、色々面倒だ。遺族に使用者責任とか騒がれたり、葬式に出向いたりしなければならないのは勘弁してほしい。
後腐れがなく、確かな技術を持っていて、緊急事態でも慌てない奴となると…
「おい、あいつは行けそうか?」
「あいつ?」
「あのクソ生意気な女だ。どうせどこかのネカフェとかにいるだろう。呼び出せ」
所長の頭には、あるちんちくりんの女の顔が浮かんでいた。
「バカ所長!」と、さんざん文句を垂れるのだろうが、あいつなら大丈夫だろう。どうせネカフェにいつも引きこもっているような奴だ。引きこもる場所が変わるだけだ。
所長はクックッと笑っていた。まるで、これから起こることを想像して楽しんでいるようだった。
オペレーターは、所長の笑い声を横目に薄寒いものを感じ、聞こえないように小さく「この古狸…」と呟いていた。
古狸と、ちんちくりん。まるで漫才コンビのようだ。私生活では死んでも関わりたくない。いや、意識すらしたくないか。
起動したチャットアプリのTO:には、ある女性の名前が入力されていた。




