表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81(エイティーワン)  作者: 雨後乃筍
2章 見えない脅威
16/33

2−6 0081

 軍で李憶俊リ・イージュンに与えられたのは「0081」と言う番号だった。


 憶俊イージュンに両親の記憶はなかった。大人になってから聞いた話では、母親は他の男と逃げて、父親は憶俊イージュンを親戚に預けたまま失踪したらしい。学校には通わせてもらったが、それ以外のものは皆無だった。


 親戚の家族が、どこかに出かけても李憶俊リ・イージュンは一人家に残された。親戚の家族が、お祝い事でパーティーを開く時も、李憶俊リ・イージュンの席はなかった。


 ある時、事件が起こった。


 憶俊イージュンの成績が、従姉妹を抜いてしまったのだ。その親戚からは妬みの対象となった。


 狭い納戸のような場所で、憶俊は過ごしていた。


 変わらず学校の成績が良かった憶俊イージュンは奨学金制度を利用して大学受験に成功した。それと同時に親戚の家から出て、大学の寮に入った。日本との交換留学制度のことを知ったのは大学2年次の時だった。


 成績優秀者には、現地での生活費を学校側が出してくれる。


 日々のバイトでうんざりしていた憶俊イージュンには魅力的な話だった。


 日本での交換留学の1日目に、交換留学生の先輩から声をかけられた。憶俊イージュンのゼミではメンター制度があり、留学の最初の半年は「メンター」と呼ばれる同郷の先輩がついて、アレコレ助けてくれる制度だ。


 そのメンターの先輩が所属する「日中文化交流」サークルに誘われた。日本人もいるサークルだった。日本語もそこまでうまくなく、友人もいなかった憶俊イージュンには打ってつけだった。サークル内では、中国の留学生が半分以上占めており、また日本人も中国の文化に理解が深く、すぐに打ち解けた。大半の日本語はそこで覚えることができた。


 そろそろ半年が過ぎようとした時に、サークルの先輩から「留学期間が終わったらどうするのか?」と聞かれた。


 漠然と、奨学金制度を利用して大学を卒業し、就職して奨学金を返していく、そんなことを話した。するとその先輩が「大学の学費の心配もなく、将来の安定した就職先も確保できる」方法があると言う。


 あの親戚の家に戻らなくて済む。


 一つ、条件があった。


 大学卒業後、4年間は軍施設で訓練を受けること。


 大学を卒業した憶俊イージュンは、そのまま軍へと入った。


 訓練では全ての個性、憶俊イージュンという存在はないものとされた。ただ胸にある番号を呼ぶことだけが許された。


 訓練の合間に、訓練で一緒になった仲間が声をかけてきた。胸に0078というコードを付けた、背の高くて目が窪んだ男だった。彼の指差す方を見ると、3歳前後の子供達がだいたい20人ぐらいか、部屋の中で運動をしていた。


「あれは?軍関係者の保育園か?」


「違うよ。身寄りのない子供や、買ってきた子供だ。洗脳して日本に送り込むんだよ。子供のいない家庭に孤児として」


「なんだって?」


 見ると、子供達の腕には憶俊イージュンと同じように0103などの番号札が貼ってあった。


「こんな子供まで兵器に?」


「軍はなんだってやるさ。子供でも容赦ない訓練で、1年後に残っているのは10人もいるかどうか」


 憶俊イージュンは、窓から見える無邪気そうな子供達をみて、薄寒いものを覚えた。


 もしかしたら自分もこうなっていたのかもしれない。自分の子供が、こんなことになっていると知ったら、親だったら狂ってしまうな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ