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第16話 メイトリックスの意地

大きな扉の向こうから、


鎧を着込んだ兵士が、

機械の馬車を従え、


一人――

また一人と、

姿を現す。


五人。


全員が、

同時に動いた。


馬車に飛び乗る。


足元で、

機械の馬車が

唸りを上げる。


金属の脚。

回転する駆動部。


生き物じゃない。

疲れもしない。


そのまま、

一直線に

走り出した。


包囲だ。


距離も、

速度も、

数も――


すべてが、

こちらを上回っている。


アリッサは、

思わず歯を噛みしめた。


――無理だ。


勝てっこない。


メイトリックスが、

ゆっくりと構えた。


剣――


そう思った瞬間、

違和感に気づく。


刃が、ない。


手にしているのは、

木剣だった。


練習試合用の、

安っぽい武器。


観客席から、

失笑が漏れる。


だが、

メイトリックスの動きは、

変わらない。


それで、

十分だと言わんばかりに。


メイトリックスは、

馬車に囲まれながらも、

動きを止めなかった。


突進。

回転。

挟み撃ち。


次々に仕掛けられる攻撃を、

一歩ずつ、

ずらすように避けていく。


跳ねない。

退かない。

焦らない。


最小限の動きで、

すべてを外す。


そして、

一台の馬車に、

一気に詰め寄った。


地を蹴り、

跳ぶ。


高くはない。

だが、十分だった。


宙で体をひねり、

兵士の胸を、

正確に蹴り抜く。


鈍い音。


兵士が、

馬車から叩き落とされた。


――強い。


派手さはない。


ただ、

動きに、

無駄がなかった。


倒れた兵士が、

慌てて身を起こそうとした。


その動きを、

メイトリックスは見逃さない。


一気に距離を詰め、

背後に回る。


体を預けるように、

兵士にまたがり、


腕を回した。


力任せではない。

要点だけを、

正確に締める。


兵士の抵抗が、

急に弱くなる。


次の瞬間、

体から力が抜けた。


メイトリックスは、

すぐに腕を離す。


兵士は、

ぐったりと倒れたまま、

動かない。


――殺していない。


ただ、

意識を落としただけだ。


残りの四人は、

明らかに動きを変えた。


距離を取る。


不用意に、

踏み込まない。


メイトリックスを、

中心に置いたまま、

円を描くように広がった。


メイトリックスは、

一台の馬車を選ぶ。


迷いはない。


木剣を、

躊躇なく投げた。


剣は、

一直線に飛び――


機械の馬へ。


脚の関節部。

装甲の切れ目。


そこに、

正確に突き刺さった。


次の瞬間、

馬がつんのめる。


前のめりに、

大きく体勢を崩す。


その反動で、

乗っていた兵士の頭が、

地面に叩きつけられた。


鈍い音。


兵士は、

そのまま動かない。


そして、

勢いは止まらなかった。


制御を失った馬車が、

横へ倒れ込む。


それに、

別の馬車がぶつかる。


一台。

また一台。


金属同士がぶつかり合い、

次々と転倒していく。


闘技場の中央で、

包囲が、

崩れ落ちた。



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