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第15話 奪われた勇者

鎧を、

着ていなかった。


それが、

最初の違和感だった。


男が、

引きずられていく。


両腕を取られ、

抵抗も許されず、

コロシアムの中央へ。


観客の視線が、

一斉に集まる。


歓声。

罵声。

期待。


その中心にいるのが、

メイトリックスだった。


――鎧が、ない。


勇者の象徴だったはずのものが、

何ひとつ、

身に着けられていない。


その姿を見た瞬間、

胸の奥で、

何かが崩れた。


……そうか。


賞金だ。


あの広告。


「すごい賞金」

「誰でも参加できる」


――嘘だ。


最初から、

捕まえるための餌だった。


強い者を、

自分から来させるための。


アリッサは、

歯を噛みしめる。


罠だった。


帝国は、

勇者を必要としていない。


ただ、

管理したいだけだ。


……メイトリックスの、ばか。


私たちは、

そんなことを

望んでたんじゃない。


コロシアム全体に、

無機質な声が響いた。


「――ガルバン王国、

最後の勇者」


一拍置いて、

名前が続く。


「メイトリックス」


次の瞬間、

観客席が爆発した。


大歓声。

拍手。

口笛。


地面が、

揺れるほどの熱狂。


アリッサは、

その言葉だけを、

反芻していた。


――最後の?


どういうこと。


胸の奥が、

ひやりと冷える。


仲間は?

他の勇者は?


貴方と、

一緒に戦っていた人たちは?


誰も、

その答えを

気にしていない。


観客にとっては、

ただの“肩書き”だ。


だが、

アリッサには、

それが

切り捨てられた言葉にしか

聞こえなかった。


――最後の勇者。


その響きが、

あまりにも、

残酷だった。


メイトリックスが、

ゆっくりと顔を上げた。


表情は、

何も映していない。


だが、

その視線の先にあったのは、

闘技場ではなかった。


帝国上層部の観客席。


高く、

隔てられた場所。


――提督と、

その連れの女。


ここからでは、

姿は見えない。


それでも、

見ている先は、

はっきりしていた。

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