間話 帰り道
前話の省略された旅から帰る様子が描かれています。
西黎大陸にて。
フラメナたちは一々砂漠から山脈を避けていくのは面倒だと感じ、塵雪山脈を突っ切ることにしたようだ。
邪族との遭遇も多少はあったが、正直今のフラメナたちからすれば、帥級以下は相手にならない。
山脈を越え、辿り着くはメロディア国。
ここからパリエタ港を目指す。
メロディア国は音楽文化が非常に盛んであり、
日中王都では、ほぼ毎日楽器から発せられる音が聞こえてくるそうだ。
そんなメロディア王国には一人の君級魔法使いが滞在している。幻想のレイワレ・グラステッド。
あまり彼女の戦い方は知られておらず、
わかることと言えば使役魔法を扱うことくらい。
まあ関わることはないだろう。
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フラメナたちは西黎大陸から立ち去り、
中央大陸へとやってきた。
中央大陸では少々一悶着あったので、
少しばかりの不安がフラメナたちにはあった。
だが道を歩いても特に話しかけられることもなく、
どうやらフラメナは追われる身ではないらしい。
そんな中央大陸に少しだけ用がある。
枯星のユマバナ・アルマレットと、
天戒のレスト・バレットメア。
この二人の君級魔法使いは、
追われる身となったフラメナを助けてくれた。
挨拶くらいしていくのが礼儀だろう。
ライメの案内でユマバナの家へとやってきた六人。
呼び鈴を鳴らす紐を引くと、しばらくしてドタドタと足音が聞こえて扉が開かれた。
「真昼間からうるさいのぅ……っ!?
トヘッ……いやライメ!!
それに皆おるじゃないか!久しいのう!」
「あはは、師匠はトヘキって呼んでください。
そっちの方が楽でしょう?」
玄関の扉を開け驚くユマバナ。
とりあえず六人を家の中へと迎え入れる。
相変わらずごちゃごちゃした家の中だ。
この光景にライメは懐かしさを感じる。
椅子に座るユマバナ、とても興奮した様子であれからのことを聞いてきた。
君級邪族と傲慢のシルティとの戦い。
そして迷宮探索。
主な話題としてはこの三つだ。
ユマバナは迷宮の話の中でルルスがいることを理解し、軽く挨拶を終えると、今後のことを聞いてきた。
「それでこれから南大陸に帰るってわけじゃな?
お主らは帰って何するんじゃ?」
フラメナは王国再建の手伝い。
ライメは魔法教師を目指す。
エルトレとラテラは酒場の経営。
リクスは東勢大陸の村でのんびり過ごす。
ルルスはまだ未定。
そうしてこれからのことを話すとユマバナは頷きながら、満足そうな顔を見せてきた。
「感慨深いのう……まあそれぞれ頑張るんじゃぞ。
寂しくなったら妾のところにでもくるんじゃな」
冗談混じりにそう言うユマバナ、
だが意外にもライメなどの反応が本気っぽく、
慌てて「冗談」と言った。
フラメナはユマバナへと一つ質問をする。
「その、レストさんってどこにいるかしら?」
「あ〜……あやつはもう中央大陸にはおらん。
今は確か西黎大陸のレナセール王国にいると手紙が来ていたのう……」
レストはフラメナたちを逃した後、不視を冠する君級剣士、パラトア・シーファとの戦闘の果てに逃走。
彼は中央大陸王都から追放され、今は西黎大陸でひっそりと暮らしているらしい。
それを聞いてフラメナは申し訳なさそうにする。
「悪いことしちゃったわ……私のせいで……」
「あぁよいよい。どうせあやつはどこにいてもお気楽に生きてけるやつじゃ。気にするでない。」
ユマバナはレストの扱いが雑だった。
だがこの雑さはレストを熟知しているからこそであるのだろう。信頼度の高さが垣間見える。
話したいことは終わり、ユマバナの家からフラメナたちは発つ時間となった。
玄関まで見送ってくれたユマバナ。
中央大陸でやりたいことも終わった。
段々と南大陸が近づいてきた。
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東勢大陸に上陸した。
ここでリクスとはお別れだ。
馬車で移動しハルドラ村にて、
リクスは依然意識の戻らない人族の女性を背負い、
馬車から一足先に降りて宿の中へと入っていく。
その宿はリクスの家とも言えるところであり、
ルルスとフラメナにとっては懐かしい場所だ。
カイメ・ヒョルドシア、
エクワナ・ヒョルドシア。
この二人が住まう宿である。
リクスが宿に入って少しするとーー
中から大きく「リクス」と呼ぶ声が聞こえ、
宿の扉が勢いよく開き、エクワナとカイメが飛び出してきた。
「おぉっー!!帰ってきたんだ!
久しいねぇ〜みんな元気だったかい?」
「うおおっ!ルルスじゃないか!
お主も来るとは思っとらんかったぞ!」
皆が一人も欠けずに帰ってきたことに喜びを隠せないエクワナと、ルルスがいることに驚くカイメ。
「久しぶりね!」
「お久しいですね〜カイメお爺さん〜」
そう挨拶すれば、半ば強引に二人によって宿の中へと招き入れられる。
今日はここで泊まる予定だ。
リクスが背負う女性は部屋に寝かせられ、
フラメナたちは荷物を部屋に置いてきて、
エクワナとカイメの下に戻ってくる。
宿の食堂で皆が集まり、早速エクワナとカイメがフラメナたちから旅のことを聞き出す。
「噂は聞いてるよ。超新星の暁狼パーティー!
あたしの目に狂いはなかったんだね。
それでどうだったんだい?旅の方はさ」
エクワナが肘をついてそう言うと、
フラメナは旅のことを語り始める。
しばらく旅のことを話し、他のライメたちなどの補足も加えられ、エクワナとカイメは旅の全貌を知ることができた。
「は〜、お主ら2年の旅にしては濃いのう〜
ワシが旅した時なんて君級邪族とは出会っとらん」
「魔王側近……どう?どんくらい強かった?」
するとフラメナが大きく両手を広げ、
いっぱいに腕を振ると「このくらい!」と言い、
ライメたちも頷く。
エクワナとカイメはそれを見てある程度察する。
なぜ察せるのか?強者故のテレパシーなのか。
ある程度旅の話が終わると、リクスが背負っていた女性のことについて話し始める。
「師匠、この人ここで泊めてもいいですか」
リクスがそう言うと、エクワナはそれを承諾する。
「どうせお客さんも来ないし、いいよいいよ!
ねっ?おじいちゃん?」
「ワシの宿が繁盛してないのは立地のせいじゃあ!」
フラメナがリクスに女性のことを聞く。
「あの人って大丈夫なの?」
「息はしてるし、脈もある。
死んではない……とは思うぞ」
そう言うリクス。
確かに死んではいないだろうが、意識不明の状態が長すぎる。
「まああたしたちに任せな!
あんたたちはそれぞれの人生を歩むんだよ」
エクワナがそう言う。
カイメも納得してるようで頷いていた。
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そうして宿にて夜を越し、
フラメナたちはハルドラ村を発った。
リクスは半年に一度南大陸に来るようで、
別れはあまり寂しくなかった。
村を発って数十日、
フラメナたちはウラトニ港へと到着する。
旅も終わり近づき、
フラメナはあるレストランへと皆を招く。
そのレストランはフラメナやルルスには馴染みのあるところだ。
「ははっいらっしゃい。常連さん」
相変わらずの顔で挨拶してきた店主のダスラト。
「久しぶりね!水はいつも通りよ!」
「あいよ」
昔と変わらない返事、
だが少し店主の声には活力が満ちている。
少しして料理がテーブルに並ぶと、店主は席に座り、フラメナたちの旅の話を聞く。
「それで旅はどうだった?」
「めちゃくちゃ濃かったわよ!」
「随分抽象的だな……まぁ濃かったんだな」
フラメナは慣れたように旅の話をしていくと、
ダスラトは旅の内容に興奮を覚える。
「それで?あんたら旅は楽しかったか?」
そう聞くダスラト。
皆が頷く。
「ははっ、そうか。
まあなんだ旅を無事終えてくれて良かった。
美味い飯食って気持ち良い気分で帰ってくれよ」
ダスラトはあまり干渉してこない。
あくまで他人として見ており、自身の店に来てくれるお客として接してくれている。
ダスラトは良い気分で席を立ち上がり、厨房に戻って行こうとすると、フラメナが呼び止める。
「あなたも何か料理持ってきなさい!
奢るから一緒に食べるわよ!」
ダスラトは驚いた。
まさかこんなおっさんを食事に入れてくれるなんて、それに周りの人たちも嫌そうな顔じゃない。
むしろ歓迎してくれている。
「……飯が冷めねえうちにゆっくり食ってな。
すぐ作って持ってくるからよ」
ダスラトは背を向けそう言う。
その日のレストランは相変わらず人の入りは悪かったが、ここ最近で一番賑やかだったそうだ。
旅は終わった。
フラメナたちは南大陸へと向かう。
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