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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第八章 純白魔法使い 北峰大陸編

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第七十一話 これからのこと

 虹剣1688年3月26日。


 君級魔法使いとなったフラメナ。

 正直言ってフラメナの実力は将級程度。


 だが白く染まり、髪が輝くあの姿のときのみ、

 君級に匹敵する強さとなる。


 君級魔法使いになったことを他の四人に言えば、

 あまり驚かれる様子はなく、フラメナのことを褒める反応ばかりだった。

 彼女が頑張り屋なのはどうやら周知らしい。


 さて、フラメナ達の旅も終盤に差し掛かった。

 ガレイルにて四星級に達した五人。

 実力も相当なものだ。


 砂塵や傲慢、あのレベルの敵を相手にしているせいか、あまり実感が湧かないが五人は十分強い。


 フラメナは通常時将級レベルの魔法使い。

 あの白き姿ならば君級上位レベルだ。


 ライメも将級並みに強く、

 リクスも帥級上位の実力はある。

 エルトレの身体能力や剣術も帥級上位レベルで、

 ラテラも帥級上位程度には治癒魔法が扱える。


 もう強さのために特別時間をかける必要はない。


 これからの旅の計画を立てよう。


 まず次に向かう大陸は北峰大陸。

 邪統大陸は正直言って行ってもやることがない。

 ので、北峰大陸に向かうことにする。


 北峰大陸は魔城島に最も近い大陸ゆえに、あまり長居はしたくはないが、一つやりたいことがある。


 ルルスの育て親である紫の瞳を持つ霊族のことだ。


 義務ではないが、フラメナ的にルルスの力にはなりたいと思っているがゆえに探すことにした。

 今まで旅をしてきて紫の瞳を持つ霊族の話なんて聞いたこともない。

 期限を二週間に決めよう。

 見つからなければ帰る。


 なにせまた魔王側近が襲ってきたら今度は死ぬ。


 傲慢のシルティが最弱という事実。

 あれほど強い敵が最弱なのだ。


 自身が過去に出会った憤怒のドラシルや色欲のエルドレなどは、まったく本気を出してなかったと思える。憤怒は無関心、色欲は安全優先。


 だが今遭遇すれば確実に殺すまで攻撃してくる。

 そうなればほぼ詰みだ。

 ライメの転移魔法が阻害されたことを考えると、

 逃げも確実ではない。


 大体これからのことは決まった。


 北峰大陸に向かい二週間滞在。

 紫の瞳を持つ霊族についての聞き込み。


 そこから西黎大陸に戻り、中央大陸へ向かう。

 中央大陸では指名手配の扱いを受けたが、

 君級となった今、あまり心配する必要はない。


 東勢大陸の北部も行ってはみたいが、とりあえず一度帰ることを目的にし、南大陸へと向かう。


 最短でもだいたい四ヶ月以上はかかるだろう。

 長いように感じた旅だが、意外にも2年経つほどで帰ることとなった。


 オラシオン王国を、エルトレ達の傷が完治する4月始めに発つつもりだ。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 剣塵の住まう屋敷の呼び鈴が鳴った。

 ユルダスはそれを聞いて門の前に行くと、

 覗き穴からよく知る顔が見えた。


「フラメナか、何か用か?」


 ユルダスは門を開けそう言うと、フラメナが用件を伝える。


「イグレットさんっているかしら?

 少しくらい挨拶しておきたいのよね」

「あぁいるぞ。イグレット様も挨拶したがってたからちょうど良い、案内する」


 ユルダスの背中についていくように、

 フラメナは屋敷の敷地内へと入っていく。


 屋敷の中へと入る際にユルダスが言う。


「イグレット様が褒めてたぞ。

 あんなガッツのある魔法使いは初めて見たって」

「えー?私を褒めても別に何にも出ないわよ〜!」


 わかりやすく嬉しそうに言うフラメナ。

 ユルダスはそのまま話を続ける。


「イグレット様ももう四十八歳だ。

 剣技は未だ全盛期であっても身体の全盛期はとっくに過ぎてしまってる……フラメナがいて良かった。

 じゃなきゃこの国ごと滅びてたからな」


 フラメナはそう言われると言い返すように話した。


「私だけの力じゃない。

 私以外のみんながいなきゃ私はここまで強くなれてないし、戦闘の時も助けられることは多いわ。

 今回の件で思ったことがあるの。

 私は仲間に恵まれてるなって」


 振り返らずともわかる。

 フラメナはとても良い笑顔をしてるだろう。


「……俺は旅にはついていけない。

 でも、南大陸には帰ろうと思う。

 半年もすれば帰る……俺のことを皆んなは受け入れてくれると思うか……?」


 ユルダスは不安を吐露した。

 そんなユルダスへとフラメナは言う。


「お父さんに一回怒られなさい!

 まっ、怒られたら受け入れてくれるわよ」

「はははっ、軽いな。

 さっ、良いタイミングで着いたぞ。

 イグレット様は奥にいる」


 一つの部屋の前でユルダスは立ち止まり、

 ノックをして扉を開けた。


「イグレット様、お客様です」

「あぁありがとう。下がってて良いぞユルダス」


 そう言われてユルダスは下がると、

 フラメナが部屋の中へと入っていく。



 不思議な感覚だ。

 戦闘時にはとてつもないオーラを放っていた剣塵は、この部屋ではまったくオーラを放っていない。


 体の使い方を隅々まで知っているのだろう。

 抜く時は抜き、やる時はやる。

 それが完璧なのだ。


「フラメナ・カルレット・エイトールだな?

 よく来てくれた。まずは先の戦闘、助かった」


 イグレットは黒の着物姿で優しそうな顔を浮かべてそう言う。とても世界最強の剣士だとは思えない面構えだった。

 そんなイグレットを見てフラメナは少し緊張が解け、会話を始める。


「助かったなんてこっちのセリフだわ……

 貴方が来てくれなかったら死んでたもの」

「……それは俺も言えることだな。

 とりあえず感謝はさせてくれ。

 まぁ適当に座っておくれ」


 そう言われるとフラメナは近くにあるソファに腰を下ろす。


「フラメナさんは君級魔法使いになったそうだな。

 史上最年少じゃないか?まだ十七歳だろう?」

「えぇ十七歳よ!」

「凄えなぁ……俺が十七の時なんてまだ帥級だった。

 そう考えると本当に凄えなぁ……」


 イグレットは続けて話す。


「正直、俺は期待してなかった。

 あの状況で助けが来るなんて思ってなかった。

 だから身を犠牲にし、最後の一太刀で奴を仕留める。そんなことを思って動いてたんだが……

 まさか来るなんてな」


 イグレットはあの時、自身を犠牲にした上で勝とうとしていたようだった。

 だがおそらく犠牲にしても勝てなかっただろう。


「貴方が勝つことに賭けてたけど、

 ただ待ってるのも嫌だったの、動けるなら動く。

 それが私の考えの一つでもあるから」

「それで結果的に俺は助かった」


 イグレットは言う。


「あんたはここから旅を再開するんだろ?

 なら一応人生を戦いに捧げた俺のありがたーいお言葉を送ってやる……やっぱそんなありがたくないかもな。軽く聞く程度にしてくれ……」

「なんでそこで自信無くすのよ……」


「ん″ん″っ……じゃあ言うぞ。

 ()()()()()()()()()

 何事もな」


 フラメナはその言葉を聞いて目を逸らす。


「それってどう言うこと?」

「誤魔化すなって〜、その歳なら好きな奴一人くらいはいるんだろ?俺もそうだったしな。

 俺は邪統大陸での防衛戦争で愛する女が死んだ。

 気持ちを伝える前にな……

 俺はその時、一騎当千の常勝無敗の剣士になってやるって決意した。

 誰も失わないように、最強になることを目指した」


 イグレットはフラメナの目を見る。


「あんたも強くなる理由は俺と似てるだろ?

 目を見りゃわかる。その目は守りたいもんがあるやつにしか宿らない″熱″だ。

 あんたも愛せるうちに愛せよ。

 生命はいつ絶えるかなんてわからないからな」


 フラメナはそれを聞いて、イグレットの強くなった経緯を知り、感動した。


 自分のような理由でここまで上り詰めた人物が実在している。


 愛せるうちに愛せ。


 そんな言葉はフラメナの頭の中を、

 長い間駆け巡っていた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 オラシオン王国を発つ前日。

 フラメナはライメと夜風を浴びながら散歩していた。

 

「ライメは朝昼晩いつが好き?」

「唐突だね……夜かな?

 小さい頃は夜が怖かったけど、

 今は静かな時間が訪れる夜が好きだよ」


 フラメナは後ろで手を組みながら話す。


「私も夜かな」

「なんで夜なの?」

「……南大陸に着いたら教える!」

「そんな焦らすことかな……?」

 

 フラメナはこれからについて話し始めた。


「ライメはさ……旅を終えたらどうするの?

 私はお姉様の手伝いをしようと思ってるけど……」

「僕は……魔法教師にでもなってみようかな。

 ずっと憧れだったんだ。クランツ先生のように優しく教えてくれる先生になりたいって……

 実際かなり救われたからさ……」


 ライメはクランツのことを憧れとしていた。

 自惚れることもなく、ひたすらに謙虚な姿勢。

 賢く強く優しく、そんな大人になりたいと常日頃思っている。


「僕でもなれるかな……?」

「ライメなら絶対なれるわよ」


「相変わらず、根拠とかはないんだね」

「必要かしら?ライメが自分を信じればいいのよ。

 自分ならできる。そう思いなさい!

 ライメは強いんだから!」


 そんなフラメナの言葉に、ライメは優しい微笑みを見せ、二人並んで夜道を歩き続ける。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 虹剣1688年4月3日。

 フラメナ達はオラシオン王国を発った。


 向かうは塵雪山脈(じんせつさんみゃく)である。

 山脈を避けて大回りするのも悪くないが、正直言って手間がかかりすぎる。

 山脈を十日で横断し、馬車を使って北峰大陸へと繋がるラグメト港へと向かう。


 一ヶ月もかからずに港へと着くと、海に流氷が浮いており、砂漠地帯と比べかなり気温差があった。


 北峰大陸は年中雪積もる白銀世界。

 生息する邪族も強く、旅するにはある程度実力が必要な大陸だ。


 目標地点は北峰大陸唯一の王国。

 霊族の楽園とも呼ばれるニックス王国。


 いざ北峰大陸へ。

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