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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第六章 純白魔法使い 砂塵編

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第五十七話 五星級

 虹剣1688年2月28日。


 フラメナ達は二日ぶりに、

 ガレイルへと依頼を受けに赴いていた。


「久しぶりね!依頼を受けに来たわ!」


 フラメナがそう言うと、いつも通り受付を担当する男性が挨拶を返してくる。


「おはようございます。暁狼(ぎょうろう)の皆さん」

「なんか今日は元気ないのね」


 そう言うフラメナに、

 受付の者は小さい声で話し始める。


「それが……五星級パーティーが何日も帰ってきていないのです」


 そう言う受付の男性、ライメがそれに対して詳細を聞き出すように問う。


砂星(すなぼし)ほどのパーティーが帰ってこないなんて……そんなに危険な依頼だったんですか?」


 砂星。

 レナセール王国最強のパーティーであり、

 長い間五星級として君臨し続けている。

 君級戦士は所属していないが高水準な戦士達が集うため、依頼の失敗は結成から今まで一度もない。


「いえ……四星級の依頼ですので、

 砂星の皆さんが壊滅するはずがありません……

 将級魔法使いが四名、将級剣士が三名。

 レナセール王国ガレイル最高戦力の彼らが負けるとすれば……」


 受付の者が息を呑み、静かに話し出す。


砂塵(さじん)に出会ったとしか……」


 砂塵。

 塵雪山脈(じんせつさんみゃく)に生息する砂竜の中で最強の個体。

 砂塵の近くでは常に砂嵐が発生するようで、知性がない邪族の中では最強格と呼ばれている。


 それ故に砂塵は100年以上討伐されず、

 未だ現代にて生を謳歌している。


 そんな砂塵のことは1年半もここで生活してきたフラメナ達ならば知らないはずがない。


「……なら見つけてきてあげるわよ」

「え?」


 フラメナがそう言うと全員が否定する。


「フラメナ、相手は君級の竜だよ?

 さすがに勝てないって……」

「そうですよ……君級の竜なんて僕たちじゃ……」


 エルトレとラテラがそう言えば、ライメとリクスもフラメナに対して助言する。


「どうやったって勝てないよ。

 ……助けたい気持ちはわかるけど」

「俺もそう思うぞ。

 剣王山脈にいた白竜よりも格上だ」


 そう否定されるフラメナ、だがそれだけじゃ彼女の意思を変えるには至らなかったようだ。


「まぁまぁ落ち着きなさい!

 私にはとっておきの策があるのよ」


 その策とは?


 フラメナを除く全員がそう思うと、

 自信満々にフラメナは言う。


「危なくなったらライメの転移魔法で逃げちゃえば良いのよ!」

「完全に僕次第じゃないか!」


 ライメはそう言うが、他の皆はその策に肯定的だった。


「でも転移魔法なら確実に逃げれるし……」

「案外アリですね!」

「悪くはない策だと思うぞ」


「……失敗した時、僕の責任が凄いじゃないか」

「大丈夫よ!失敗したら仲良く戦死よ!」

「大丈夫じゃないじゃん!!」


 ライメ自体は乗り気ではないが、なんだかんだフラメナの言うことに従うようだった。

 助ける気満々の五人に受付の者が問う。


「なぜそこまで助けようとしてくださるのですか?

 誰か知り合いでもいるのでしょうか……?」


 そう聞かれるとフラメナに四人の目線が向かい、

 フラメナはニコッと笑顔を見せて言う。


「知り合いなんていないわ!

 ただ私が助けたいだけよ!」


 そう言うフラメナにライメが続けて言う。


「正しくは″私たちは″だね」


 五星級のパーティーがいなくなれば、

 レナセール王国のガレイルは戦力不足となる。


 フラメナ達はいずれここを去る。

 だからこそ、世話になったガレイルへの恩返しの意味も含まれる行為。


 受付の者は感動した。


 たとえどんな理由であれ、フラメナ達が救出を手助けしてくれるなら、非常にありがたいことだ。

 一切の邪念がない五人の表情。


 それ故に感動したのだ。


「では……報酬は必ず多く支払いましょう。

 必ず帰ってきてください、私は信じています。

 そして……ありがとうございます」

「いつも通り帰ってくるわ。

 安心して待ってなさい!」


 何度聞いただろうか。

 そのフラメナの言葉が受付の者を裏切ったことはない。それ故に自然と彼女達ならやり遂げて帰ってくると思えた。



  =================

       五星級依頼

     レナセール王国西北部

     五星級パーティー救出

     想定邪族 君級

     報酬金 大金貨50枚

    (報酬金提供

     レナセール王国ガレイル

     場所・レナセール王国

        西北部砂漠地帯

   依頼者 レナセール王国ガレイル


        ご武運を……

 ==================


 フラメナ達は馬車を取り、早速目的地へと向かった。抜かりはない、救出して帰ってくるだけだ。


 戦う必要なんてないのだ。


 移動する馬車の中、暇を潰すが如く会話が頻繁に行われていた。基本他愛のない会話だが、ライメがフラメナへと話しかけた内容は少し重かった。


「フラメナ、僕を信頼してくれるのは嬉しいけど、

 転移魔法は本当にわからないことが多いんだ。

 もしかしたら転移が失敗するかもしれない……」


 命綱とされている自分にかかるプレッシャー。

 それがライメの手を震えさせていた。


 するとライメは手に温もりを感じる。


「フラメナ……?」


 フラメナはライメの手を両手で優しく包んでおり、

 落ち着かせるように目を見て話す。


「大丈夫よ!そうなったらそうなったでなんとかするわ。深く考えないでいいの……いつも通りが一番強いんだから!」


 そんな励ましの言葉を聞いてライメは少し落ち着いたのか、震えが止まり話し出す。


「流石に転移出来なかったら洒落になんないよ」


 そう微笑むライメ、どうやら不安は消えたようだ。


 そうして馬車で移動し、風の音が聞こえるところで馬車が止まって五人は外へと出る。


 目的地に到着したのだ。


 目の前には噂通り砂嵐が発生しており、常に結界を張っていないと移動出来ないレベルの嵐である。


「お客さん本当に帰りは迎え要らねえんだな?」

「えぇ!迎えはなしで大丈夫よ!」


 そう言うと馬車を引く男はその場から去っていく。


「ライメ、空間魔法って使えたかしら?」

「使えるよ。砂嵐対策だよね」


 フラメナが頷くとライメが魔法陣を展開し、

 五人を覆うようにドーム状の結界を作り上げる。


 空間魔法の中でも結界と呼ばれるこの魔法。

 大きさによって難易度は異なるが、ライメの行った結界魔法は上級程度のものだ。


「それじゃ……入るわよ!」


 フラメナがそう言えば五人は歩き始め、ライメは結界を操作しながらついていく。


 ーーーーーーーーーーーーー


「クソッたれ……!!」


 洞窟に響き渡る喉を裂くように叫ぶ男の声。


「なんで砂塵なんかが出現してんだよ……!

 これじゃあ帰ることも出来ねえ、邪族も湧き続けてやがるし……どうすりゃ良いんだよ!」


 この男は砂星リーダーであり、

 雷将級(らいしょうきゅう)力刃流(りきばりゅう)剣士。

 エルメダ・ビフルデイア、彼は二十七歳を超え、橙色の髪を持ち瞳は灰色。獣族(虎族)の歴戦の戦士だ。


 それ故にこの絶望的な状況で誰よりも現実を直視し、ただひたすらに無力感に苛まれていた。


「エルメダ……そんな叫んじゃ体力が」

「リルダ……ストレスの発散くらいさせてくれ……

 もう、俺たちは助からねえんだよ」


 リルダ・ガドメアン。

 草将級(そうしょうきゅう)魔法使いであり、歳は二十九で、深緑の髪色と黄色い瞳が特徴的な髪を後ろで結ぶ背の高い獣人族(麒麟族)の女性だ。


「でももしかしたら……砂塵が去った後逃げれるかもしれないよ。だからまだ諦めるには……」

「砂塵が去るまで何日かかる?

 もう食料は尽きかけだ。

 邪族なんてとても食えたもんじゃねえ。

 怪我してたやつはもう死んだし、砂塵が去ったとて捜索しにきた奴らが俺らを見つけるまで何時間かかる?こんな洞窟に誰が来れる?

 それに……もう何人死んだ?」


 砂星は合計五十名の超精鋭パーティー。

 最低級は上級であり帥級戦士の数は二十を超える。


 今この洞窟に残るのはたったの十二名。

 将級戦士はエルメダとリルダしか残っていない。


 もはや生き残れる希望など残っていなかった。

 絶望は生きる活力を奪う最大のもの、現に何人かは自殺している。


「だからって……」

「わかってる。俺だってこんなこと思いたくねえよ。

 だけどよ、そう思うしかねえほど状況が酷いんだ」


 目に手を当てて唇を噛み締めるエルメダ。


「エルメダリーダー……!なんか小さい魔力近づいてきてません?」


 走ってこちらへと寄ってくるのは、

 レグラ・エルトレオ。獣族(鳥族)の剣士だ。


「それは本当か……?」

「俺の魔力探知ナメないでくださいよ。

 何か近づいてきてます!」


 そう言えばレグラが指をさす方へと目を向けるエルメダとリルダ。

 正直、また砂塵から逃げてきた邪族だろうと思った。だが洞窟の入口に姿を現したのは五人の人影。


「ほーら、簡単に見つかったわ!」


「おいおい……どうなってやがる!」


 フラメナ達がこの洞窟にやってきた。

 エルメダ達からすれば、どうやってここまで来たのか全く理解ができない。

 

 困惑が募る中、フラメナ達はエルメダ達へと近づいてくる。


 計画通りに行けばここからは簡単な仕事だ。


 だがこの世界がここまで甘いだろうか?

 この洞窟内にて、不幸は薄ら笑いを浮かべている。

本日18時にもう一話投稿されます!

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